表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/44

SIDEエンド:眠れない夜

 会話を終え、食事と風呂と歯磨きを済ませたエンドは、フオウの部屋で溜息を吐く。


「どうした? やっぱ嫌か?」


 フオウが申し訳なさそうにエンドに言った。


「いえ……そうではなく……まぁ嫌と言えば嫌なのですが、別にお兄様と寝るというのが嫌なわけではありません……その……」


 と、視線を下げて自分の服装を再確認する。

 キリスのパジャマはエンドには入らなかった。

 仕方がないのでメイリィのパジャマを借りることにしたのだが、衝撃的なパジャマである。


 手足の生えたニンジン……マンドラゴラが笑みながら所狭しと歩いている柄の異様なパジャマ……見ているだけで気が滅入ってきた。

 なぜこんなものを買ったのか、いや、むしろこれを設計した人物の感性を疑う。


「ま、まぁこの際気にしたらダメだろ? ほら、さっさと寝るぞ」


 フオウの部屋は狭い。ベットに机、そして本棚が入ると、後は足場が申し訳程度にあるだけで、床に寝るといったことはできなかった。

 だから……フオウの一人用ベットに二人で寝ることになる。


「体が触れるとダメなんですよね?」


「あ、ああ。そうなるかな。厚手のゴム手袋とかを使えば触っても大丈夫なんだけど……悪いな、変な体質で……」


「いえ。私は別に。それで、どうします? 普通に寝ると確実に触れるかと」


「横向き……だろうなやっぱ」


 会話の結果、エンドが窓際に、フオウは落ちるかもしれないとぼやきながらも反対側で寝ることに決まった。

 布団に潜り込んで互いに別の方向を向く。


「なぁ、父さん、ヨーティとはどんな会話したんだ?」


 ふと、フオウが聞いてきた。

 エンドは少し考える。

 即座に殺したので会話らしい会話はしていなかった。

 だから、言葉を濁すしかできなかった。


「別に大したことは……」


「そうか……」


 落胆したように声を吐き出し、それきり黙りこむ。


「ねぇ、お兄様」


 沈黙に耐えられずエンドは口を開いていた。


「神って…………なんなのでしょう?」


「神? また唐突だな」


「すみません」


「神ね……神。ま、全知全能が一般論だけど、俺としちゃ神様も不完全だね」


「どうしてですか?」


「人を造ったからさ。唯一無二の神様は寂しさのあまり自分に似たものを造り、完全じゃなくなった。不完全なものから完全は生まれない。だから完全なものはこの世界に何一つない。ま、出来損ないの戯言ってとこかな?」


「同じですね。私の考えと。だから、私たちも不完全。完全なものに為ろうとしてもそれは無駄な努力。結局は何もできないで終わる」


「一人で足掻いてるうちはな。でも、仲間がいればそうじゃない。一人じゃできないことも二人ならやれる。二人でできないことも三人なら上手く行く。俺たちだってそうやって生まれてきたんだ。力を合わせればいろんなことができるのさ。だから、出来損ないの神様って考えは半年前に捨てた。俺は神様ってのは俺たち全部ひっくるめたものじゃないかって思うんだ」


「全部……ですか?」


「そう、一人一人は本当にちっぽけな出来損ないだけど、全員が全員存在して初めて神様として成り立つ。女性拒絶症が今より酷かった時さ、キリスやメイリィたちに支えられて、クラスのやつらも優しくしてくれて……そう思うようになったんだ」


「全部で神……仲間……共存……残るは残滓……?」


「ん? 何か言ったか?」


「いえ。何も。ところで……」


 エンドは振り返ってフオウの背中に問いかけようとした。

 が、振り返った瞬間、目の前にあったのはフオウの顔。

 注視してしまうのはエンドが重ねてしまった唇……

 不意なことで心臓がビクリと跳ね上がった。


「あ……ぅ……」


 なぜだか思い出して体が熱くなる。


「どうした?」


「あ、い、いえッ!? なんでもッ」


 慌てるように身体を元に戻す。目の前の窓を横から見ながら、高鳴る心臓の音に戸惑った。

 驚いたのは一瞬だった。なのに、視線を逸らしてからあの時の唇の感触が脳裏に鮮明に沸き起こる。心臓が次第に高鳴っていくのが分かった。


(私の体に何が起こったの?)


 きっと、あの時イルル姉さまに追われた恐怖感と、フオウに出会えた安心感が甦えったんだ。


(……安心……感? 私はあの時安心したの?)


 自分の気持ちに理由をつけようとして更なる理解できない理由にぶち当たる。

 今夜は、緊張しているのだろうか? 寝れそうになかった。

 きっと、能力を封印され不安でたまらないのだ。そう言い聞かせ自分を落ち着かせるも、すぐ隣にフオウがいる事をいつの間にか意識するエンドがいた。


 外は月明かりが照りつけ闇のベールに色彩を付けていた。

 気持ちを落ち着けようと、無心にその月明かりを見続ける。

 そこへ、不意に黒い影が差した。


 とっさに寝ているフリをして薄目で覗う。

 羽の生えた女性。シンキング・セル?

 何か口ずさむようにして、窓を開けようとする。

 が、内側から鍵がかかっているので開く気配はない。


 窓をガタガタ揺らしてみるが、意味ないことにようやく気付いたようだ。

 考えてる……あ、泣きだした。

 余りに無様で思わず見入ってしまったが、さすがに夜中に侵入して来る相手は敵としか思えない。

 エンドは能力を禁止されているため、フオウに対処して貰うしかないと結論付けた。


「お兄様……外にお客様がきておりますが?」


 小さく呟くがフオウの反応はない。

 寝たようだ。エンドの横で無謀にも無警戒に眠るなんて……身体を反転させる。 外のシンキングセルは気づかなかった。


「お兄さ……」


 無理矢理起こそうとフオウの顔を見た瞬間、収まった鼓動が激しく動いた。

 無邪気に寝息を立てるフオウの唇から目が離せなくなる。


(私は……何を……?)


 エンドは戸惑いながらも、フオウの口元に吸い寄せられていった。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体。

   能力名:??? 死亡


 №274、 ケリアル・ツェマド 梟の因子を持つ女性体。

   能力名:???


 №275 ミディ・ネリィ 燕の因子を持つ女性体。

  背丈は百四十前後で肩までの切り揃えた蒼い髪にカチューシャを填めた女の子

   能力名:???


 №441 イルル・キリク ???の因子を持つ女性体。

  麦藁帽子を目深に被った白いワンピースの少女。炎の様に赤いストレートヘア。

   能力名:再生の焔

     優雅なる火炎のエクセレンス・フレア

       :掌から発生する炎の玉。

     消える事無き命のザ・ニューライフ

       :再生の炎に包まれることで自身を完全に復活させる能力。自動発動。


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:電撃

     雷撃を纏いしライトニング・ナッコ


 №482、ヤオ・ソーティア

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

    コピー済み能力

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ