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第六十三話


 かららん。


「ありがとうございましたー!」

「おう!」


 いつもの夕方に、いつものお客さん。

 だけどシャルパンティエに日常が戻ったとはまだ言えず、わたし達も冒険者も、ふと東の方角に目をやってしまうことが増えていた。


 魔族が攻めてきて大騒ぎになったけど、どうにか行われた聖神降誕祭から半月、影響はまだ残っていて、うちのお店――『地竜の瞳』商会シャルパンティエ本店を訪ねてくるお客さんは、春先の半分ぐらいになっている。……半分ほどの冒険者が、ユリウスやコンラート様一家と一緒に下の街ヴェルニエに降りた後、東方辺境の魔族を狩りに行ってしまったから仕方ない。


 シャルパンティエの周辺は罠も張ってあるし、リヒャルトの連れてきた竜騎士による山狩りが行われていたから、一応は安心だ。


 それでも『水鳥の尾羽根』と『祝祭日の屋台』だけはシャルパンティエの領軍に所属したまま、数日交代で領境どころか東隣の王領奥深くまで入って警戒を続けていた。


「あーあ……ユリウス、帰ってこないかなあ」


 口に出したからって願いが叶うわけじゃないけれど、どうしてもね……。


 そのユリウスはと言えば、ヴェルニエの代官庁舎に間借りして司令部とやらを置き、東方辺境諸侯軍――実態は冒険者と素人の入り混じった集団――を指揮して、東方の安寧とやらに力を尽くしている。……とは言うものの、司令官自ら前線を駆けずり回って、あれこれと細かく部隊を動かしているらしい。


 ゼールバッハ侯爵の軍隊は帰っちゃったけど、まさか後を託されたユリウスがシャルパンティエでお昼寝ってわけにはいかないし、とにかく、大規模な対魔族戦どころか集団戦の経験者さえ足りなくて、戦の指導と柵や堀や罠の点検をみっちりやっては兵士や村人を激励して次の村に向かうことの繰り返しだと、ディートリンデさんがクーニベルト様から受け取った手紙には書いてあった。……もちろん、わたし宛の一通はない。


 魔物を可能な限り狩り尽くすことがどれだけ大事なことか、わたしにも分かっているだけに、週に一度は帰ってきてとかルーヘンさんの荷馬車に手紙ぐらいは預けて欲しいとか、それが無理でもせめて伝言ぐらいは出来るよね、なんて……わがままが言えずに困っていた。


 実際、東方辺境でも魔族の住む大地と接する東端に位置する領地では、はぐれ魔族が村のすぐ近くで見つかっていたり、偵察に出た冒険者が魔物の集団と戦いになったなんて噂が聞こえている。初動が早かった分、北方ほど被害は出ていないそうだけど、無傷というわけにもいかず、まだしばらくは警戒が必要だった。


「……」


 もう、半月も音沙汰なしだもんね……。

 どうも調子が乗らないのは……ユリウスのせいじゃないのは分かってても、多少はそうかなと思いたくなったりもする。


 わたしが結婚の申し込みに頷いた次の日にはもう、シャルパンティエを降りちゃったからね。お祝いの宴席をアロイジウスさま夫妻が設けて下さって、その夜はとても楽しかったけれど……ほんと、余韻を味わう暇さえなかったよ。


 昨日までは、コンラート様の奥様ユリアーネ様からお受けした『ユリアーネ様人形』を作っていたんだけど、そちらも無事に出来上がり、ギルドに持ち込んで配達の依頼も済ませている。


 だから少し、手は空いてるんだけど……。


 かららん。


「ただいまです、ジネットさん!」

「おかえり、アリアネ。どうだった?」

「今日も全部売り切れました!」

「そう、よかったわ、ご苦労様。片付けて売り上げだけきちんと報告したら、今日はもう上がっていいからね」

「はい!」


 木箱を優しく撫でたアリアネをねぎらい、エプロンを外しておいでと店裏に送り出す。

 最近は、夕方も遅くになると、昼に『猫の足跡』亭から仕入れたおやつの残りを売り歩く仕事をアリアネに任せていた。


 買いに来て貰ってもいいんだけど、冒険者のたまり場でもある『魔晶石のかけら』亭に顔を出す方が売り上げも多いし、アリアネには商売の練習にもなる。主人のカールさんにもお願いして、余所のお店の『中』で商売させて貰う時の挨拶や交渉の仕方、お客さんへの口上の注意点や酔っぱらいに絡まれたときの上手な逃げ方やらも教えていた。


 一人立ちにはまだまだ早いけど、わたしが父さんやジョルジェット姉さんから教えてもらったように、商いの約束事や気の持ちようはきちんと伝えなきゃね。


「ジネットさん、今日の売り上げは、孤児院の売り上げが二十ペニヒと、その他の売り上げが十ペニヒで、合計一グロッシェンと五ペニヒでした」

「はい、一グロッシェンと五ペニヒね」


 お店の売り上げとは分けてあるアリアネ専用の帳簿に書き入れるのは、まだわたしのお仕事だった。


 そろそろ読み書きの練習が出来るよう、絵入りの読み本でも用意してあげられればいいんだけど、先日の騒ぎがまだ落ち着いていないからなあ……。


「じゃあ、お先に失礼します! ジネットさん、お疲れ様でした」

「今日もありがとう、アリアネ」

「はあい!」


 さて、わたしもそろそろ閉店の準備をしようかな。

 どのパーティーがダンジョンに入ってるか、帰ってくる予定がいつなのかぐらいはすぐ思い出せるほど、ここしばらくのシャルパンティエは静かだった。


 と言うわけで、今日はもうお客さんが来ないはず。


 わたしはぐぐっと伸びをして、帳簿と筆記具を引き出しに片付けた。





 夕食時は、いつもの席でワインを傾けつつあれこれと頭の中を整理するのが、最近の日課だった。

 振り向けばアレット達もいるし、お隣はアロイジウスさまのご夫妻が後から来られるので寂しくはない。


 それに、ユリウスが座る『いつもの席』を守ってるんだって気分もあった。


「……」


 本当に考えなきゃいけないことも多いから、見かけほどのんびりしてるってわけでもないんだけどね。




 もちろん……結婚式は流石に後回しと、二人して頷いてからため息をついていた。東方辺境が落ち着くまでは、ユリウスが忙しすぎてどうしようもない。


 でも、わたしもその余波で、ユリウスのいないシャルパンティエを守るお仕事が増えていた。


 例えば、レーヴェンガルト男爵となったユリウスの代理として、領内向けと『限らない』上に一定の『強制力』を持った書状すらわたしの名前で出せるよう、当面は単なる領主代理や筆頭家臣を上回る権限をわたしへと認めた認可状がリヒャルトとユリウスの連名で出されている。


 とても……恐いことに、シャルパンティエの領軍兵士として雇われている冒険者にも、契約に基づいてわたしが『命令』することだって出来てしまうのだ。




 それは『依頼』じゃない、本物の『命令』。




 そんなのいらない、って本気で言ったけど、ユリウスの説得に頷かされて渋々引き受けている。

 ……からくりは、もちろんあった。

 アロイジウスさまがユリウスの名前を必要とした時、不在のユリウスに代わりわたしの名前でも効力のある手紙を書いて出せるようになる、ってことが一番の理由なんだけどね。


 幸い、今のところは最初の挨拶状だけで済んでいるけれど、普通じゃない緊張感を強いられそうで早く返上したかった。……結婚の誓紙を教会に出せば結局同じことになるとも言われたけれど、覚悟が違うよね。


 他にも、領主様が不在でも領地が回るように、ユリウスのお財布の中身が半分ほどわたしに預けられていた。


 こっちはこっちで驚かされている。ユリウスの財産は領主代理という仕事のお陰もあって、だいたい把握しているつもりだったけど、とんでもない。


『ギルドに預けてある分だ。必要があれば引き出して構わん』

『……へ!?』


 数枚の預かり証書という形で渡されたそれは、シャルパンティエ領がもう一つ買えるほどの金額だった。ユリウス曰く、本当の予備の予備で、戦争でもなければ手を着けないつもりだったとは言うけれど……。


『恩賞が下賜されるまでの繋ぎになればいい。先日ほどの規模ではなくとも、それなりにまとまった魔族の集団でも確認されるようであれば……また冒険者を総動員することになるからな』

『う、うん……』


 とりあえず、金庫の奥の隠しに営業許可証と一緒に入れてみたものの、これは……うん、使い時だけはアロイジウスさまを頼らせて貰いたい。




 後回しにした結婚式の方も、実はちょっとどころでなく大変そうだった。


 そりゃあまだまだ、実感はない。出来そうな準備と言えばアレットのお引っ越しぐらいで、わたしのことかといえば微妙だ。


 そのアレットがラルスホルトくんと二人、普段見たこともないほど真剣な表情でわたしに話があると告げたのは、ユリウスがシャルパンティエを降りた次の日で……。


『はい、いらっしゃ……アレットお帰り。それからラルスホルトくん、いらっしゃい』

『た、ただいま……』

『ジネットさん、お邪魔します』

『はい、どーぞー』


 若いお二人さんの仲がいいのは……まあ、微笑ましいけどね。昨日も一昨日もさんざん見かけたし、今朝だって冒険者にからかわれてた。


 ……もちろん、わたしにも。


『お姉ちゃん……あのね』

『どうしたの?』

『……僕が、言うよ』

『ラルスホルトくん? アレットも……あの、どうかした?』


 一歩前に出たラルスホルトくんが、大きく息を吸い込んだ。

 よく見れば、顔も真っ赤っかだ。


 ん……?

 もしかして!




『アレットを、僕に下さい!!』


『あ、うん。……どうぞ』




 ラルスホルトくんの熱い言葉に、わたしはそのまま頷いた。


 昨日の今日じゃ、ちょっと気が早いなあと思わなくもないけれど、アレットも今年で十八、嫁ぐには早すぎるってこともない。


 お店が寂しくなるのはしょうがないにしても、ラルスホルトくんの工房は広場を挟んだお向かいさんだし、フリーデンだっていてくれるからね。


 それに何より、一番大事なのはアレットの気持ちだ。でも彼女がラルスホルトくんに片思いをしていたのは、とてもよく知っていた。


 ついでに……降誕祭で見かけた二人の様子を思い出せば、ねえ。


『お姉ちゃん、そ、それだけ!?』

『えっと、あの、ジネットさん?』

『だって、ラルスホルトくんなら反対する理由がまったくないじゃない。それとも、妹はやらんぞー! ……って大騒ぎして試練でも用意しないと、盛り上がりに欠けるとか?』

『しなくていいよ!』


 アレットがラルスホルトくん以外の誰かを連れてきたのなら、びっくりして言葉が出なかっただろうけどね。


 それに、わたしの大事な妹が結婚するお相手として、よく考えてみれば……。

 ラルスホルトくんは実家アルールでお世話になっていた鍛冶職人、ベルトホルトお爺ちゃんのお孫さんで、身元だってしっかりしている。


 真面目な人柄はわたしから見ても好ましいし、本人はアレットの一つ年下と若いながらも工房の親方で、腕前もユリウスが褒めるぐらいだから、アレットが貧乏な思いをすることもないだろう。


 ……あれ?


 ラルスホルトくんって、もしかしなくても特上の嫁ぎ先だったのか。

 アレット、いい目をしてるよあんた。


『そうだアレット、念のために聞いておくけどさ……』

『なあに、お姉ちゃん?』


 ただ、心配事は別にあった。

 二人の結婚生活に大きく関わる、とても重大な問題だ。


『あんたさ、料理はどうするの?』

『うっ、それは、その……』

『水仕事は? 繕い物は?』

『えっと、そ、そのうち……なんとかなるよっ!』


 アレットは、わたしからもラルスホルトくんからも、視線を逸らした。やっぱり棚に上げたまま結婚する気だったのか、この子……。


『でも、ずっと『魔晶石のかけら』亭ってわけにもいかないでしょ。……ラルスホルトくんも、アレットの手料理、食べたいよね?』

『それは、はい……』

『……』


 アレットはあれだけ器用にお薬を調合出来るのに、料理は全くの苦手だった。他の家事も得意とは言い難い。

 ……実家にいた頃は、彼女の薬草師としての腕こそが一家を支えてくれていたけれど、裏を返せば家事仕事を割り振られていなかったからこその現状でもあり、わたしには心苦しい部分もある。


 よし、お姉ちゃんもここは本気になろう。


『……アレット』

『お、お姉ちゃん?』

『……ここは、本気で頑張ろうか』

『は、はい、ジネット姉さん!』


 二人の結婚は、もちろん心から祝いたい。

 意地悪をするつもりもない。


 しかしながら、父さん母さんの代わりに妹を送り出す姉としては……決して譲れないものもあるのよ、これが。


『引っ越しもそうだし、お式の準備もあるよねえ……。えっと、ラルスホルトくんが頷いてくれるなら、花嫁修業は結婚してからでもいいけどさ。どちらにしても、アレットには薬草師のお仕事を続けて貰わないと、シャルパンティエが立ち往かなくなっちゃうし……』

『そっちは続けるつもりだったよ。もちろん、冒険者も』


 引っ越しも大騒ぎになるだろうし、シャルパンティエもまだ落ち着いたとは言えなかった。

 他のことも、相談してからの方がいいかなあ。


 しばらく三人で話し合った結果、アレットも嫁ぐのは少し先にして、わたしとユーリエさん、パウリーネさまを師匠として、料理を含めた花嫁修業をすることになった。


「……ふう」


 アレットのことはラルスホルトくんに任せるにしても、とにかく、ユリウスが帰ってこないとね……。


 ワインで唇を湿らせたわたしは、もう一つため息をついた。


「ああああ、もう! お姉ちゃん!」

「ふぇ!?」


 振り向けば、珍しく目のつり上がったアレットが、わたしをびしっと指さしていた。


「……アレット?」

「お姉ちゃん、らしくないよ」


 それから大きなため息があって、腰に手を当てて呆れ顔。

 もう、人が悩んでる時に何なのよ……。


「ほんとは領主様にすごく会いたいのに、領主様がお留守だからわたしが領地を守らなくちゃって、理由付けの屁理屈を無理矢理自分に向けてるでしょ、お姉ちゃん」

「屁理屈も何も、この大変な時にわたしが頑張らないと、誰がユリウスの代わりをするのよ……」


 もちろん、ユリウスには会いたい。会いたくないはずがない。


 だからって……魔族狩りも落ち着いていない今、仕事を投げ出すようなことをすればみんなにも迷惑を掛けるし、ユリウスに合わせる顔がなくなる。


 ついこの間も、焼き餅焼きそうだから頭冷やす、なんて事情に、仕入れと挨拶って言い訳をつけて街まで降りているわたしだったから、流石にちょっとね……。


「それが屁理屈なの! もう、ずーっとずーっと、領主様に会いたいって顔で、お仕事どころか普段の会話にも身が入ってないし……。いつか壊れちゃうよ」

「でも……」

「……それでもさ、きっちりお仕事も家事も失敗なくやりきっちゃうのがお姉ちゃんのすごいところだってことは分かってるけど、なんか……あたしまで落ち着かないの」

「そうねえ……。私もアレットに賛成かしら」

「ディートリンデさんまで……」


 いつの間にか、背中には苦笑気味のディートリンデさんがいて、わたしは……何故か肩を揉まれた。


 ユリウス達に言わせれば、それこそ『わたしとユリウス』どころではないほど周囲をやきもきさせていたというディートリンデさんとクーニベルト様だったけど、十年越しの思いが叶って順風満帆……ってわけでもなくて、クーニベルト様はユリウスの参謀か副官みたいな立ち位置でギルドと辺境諸侯軍の両方を切り盛りしつつペガサスで飛び回っているそうだ。


 もちろん、シャルパンティエに現れてディートリンデさんに会う暇もないらしく、馬車に乗せられて届く手紙が前より長くなったと、美貌のマスターさんは苦笑していた。


「確かに、らしくないわ、ジネット」

「え!?」


 ぎゅっと抱きつかれ、頬を寄せられる。


「ジネットは……そうね、割と大胆な決断をして周囲を驚かせる方だと思っていたけれど、案外、私と似たところもあるのかしらって」

「そう、ですか……?」

「自分の気持ちを、内側にため込んでしまう方でしょ?」


 少し前までは、クーニベルト様の話題が出るだけで、かなりだめだめな状態になっていたディートリンデさんなんだけどなあ。


「ほらね、お姉ちゃん。ディートリンデさんもそう思いますよね?」

「ええ、もちろん。自分のことは見えていなくても、すぐ隣にいる筆頭家臣殿のことならとてもよく見えるわ」

「……」


 自分の心を落ち着いて思い返せば、ディートリンデさんとはお互いが鏡みたいなものなんだろうなあと思えてしまい、わたしは俯くしかなかった。わたしも……あー、その、確かに人のことを言えたもんじゃないと、思い至ってしまったせいでもある。


 恋愛方面じゃ、もしかすると……わたし達より、若いアレットとラルスホルトくんの方が大人なのかもね。


「そうそう、領主様のご了承が必要な書類があるんだけど……ジネット、街を降りて御確認を頂戴してきてくれないかしら?」

「ディートリンデさん!?」

「わー、大変だね、お姉ちゃん。領主様に会わないと、サインが貰えないよ」


 小さく笑みを浮かべたディートリンデさんと、明らかに用意されたっぽい台詞を棒読みしたアレットが、ずいっと迫ってくる。


「……お姉ちゃん」

「……ジネット」

「な、なに、アレット!? ディートリンデさんまで、あの……」


 気を使われているんだろうなとは思うけれど、今シャルパンティエを降りたら……。


「ジネットは、少し気を張りすぎてるように見えるわ。……お祭りの後、一番大事な時期に領主様を戦いに取られてしまったせい、かしら?」

「ですよねえ。……お姉ちゃん、お店のことなら心配しなくても大丈夫だよ。最近はアリアネもしっかりしてきたって、お姉ちゃんも言ってたよね」

「徴税の時期でもないし、しばらくなら領地のことだって私や『孤月』様がいれば何とかなるわ。万が一戦いになった時は、それこそ本職の私達ギルドと冒険者の出番だもの。こちらは領主様と既に契約も済んでいるでしょ」


 だから、会いに行ってらっしゃいと声を揃えた二人に、わたしは押し切られてしまった。




 ▽▽▽




 ユリウスには、もちろん会いたいけれど、仕事を押しつけてしまう申し訳なさもあって、わたしの心中は複雑だ。

 でも、もしも逆の立場だったら、二つ返事で仕事の代わりを引き受けて送り出す側に回るだろうとも思う。


 大事な誰かが困ってるなら、やっぱり力になりたいよね。


 うん、とても自然な考え方だ。……自分の事じゃなければ素直に頷いてしまいそうだよ。




 ……あれこれと悩んだものの、結局は一晩かけて手配を終え、素直に感謝しつつ馬車へと乗り込んだわたしだった。

 


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