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挿話その二「騎士と教会」

シャルパンティエへと戻ってきた領主さまの旅語りです



 久方ぶりにシャルパンティエへと戻ったその日、俺は予想もしなかった窮地に立たされていた。


 オルガドから連れてきた子供達はたっぷりとシチューを食わせ20ほど借り切った部屋に放り込んだし、院長らも疲れた顔をしていたので既に引き上げさせている。……明日はちょっとした騒動が起きることも確定していたが、それは後回しだ。


 それよりも、この目の前の状況をどうおさめたものか……。


「あらまあ、何がはじまるのかしら?」

「大方痴話喧嘩だろうが、酒肴としては上の上。

 冷や汗を掻いた『洞窟狼』なんぞ、そうそう見られんからな」


 隣のテーブルにて、『孤月』と彼の奥方だけは聞き耳どころか興味津々と言った雰囲気でこちらを指差して楽しそうだが、他の者は遠巻きに見ている。……後で奴の孫の近況でも披露して、立場を入れ替えてやるとしよう。


「……で、ちゃんと説明して貰えるんでしょうね、『旦那様』?」


 場所はいつもの『魔晶石のかけら』亭、相席しているのはいつぞやのように目をつり上げたジネットだ。


 あれこれと土産話もあれば、頼まれていた茶葉も手に入れた。

 彼女の横顔を肴に、不在中こちらで起きたあれこれも聞きたかった。


 彼女に告げたい一言も、ある。 


 だが、この状況は……いかん。


 知り合って1年と余月、ジネットが俺に対して『ユリウス』以外の呼びかけを用いたときは、注意すべきと心得ている。


 余人が居る場合はまだいい。

 旅の出掛け際などは緊張を保てと促されているような気もするし、誰かとの会話の最中であれば、注意すべき事柄があると言われているも同然だった。


 だがもう一つ。

 彼女の機嫌が極めて悪いときにも、同じく『旦那様』が使われる。

 

「……うむ」


 隠さねばならぬことなど、何一つない。

 だというのに、この焦燥感と圧迫感は俺の内心のどこから発せられているのか。


「ヴェルニエでの所用は予定通り終わらせたのだが───」


 気が付けば、酒場中が静まり返っていた。




 ▽▽▽




 春待ちの月の末日近く、久々に降りたヴェルニエは、相変わらずだった。

 代官屋敷への訪問や『騎士泣かせ』クーニベルトとの会談は、新たな問題を幾らかつきつけてきたが、これもまた、いつもの如くであろうか。

 それら諸々の予定された面倒事を終わらせるのに足かけ3日、それでもましな方だと思うことにする。


 シャルパンティエではベアルが出たらしいが、折り込み済みとあって慌てるまでには至っていない。仕留めたのは新人どもにアレットを加えたパーティーだそうで、これは将来が楽しみだ。


 余計に一泊して気分を切り替え、ようやく今回の訪問に於ける最大の目的地、教区の本部を兼ねるヴェルニエ教会へと向かう。

 中央のきらびやかな教会建築───覇を争う貴族達がいわゆる『信仰心外交』の一環として寄進の額を競う───には比べるべくもないが、街人が気軽に出入りする風景は俺好みである。


『ふむ、最低限、祈りの力が使える神官でございますか……』


 幾度か訪ねたことのあるヴェルニエの神官長───ここらあたりの教会を管轄する教区長も兼ねる───は、困った顔をこちらに向けた。


 無論、呼んですぐに来てくれるようなものではない、とは知っている。

 だからこそ前交渉に訪れたのだが、それさえも難易度の高い要求であったらしい。


『東辺境はまだまだ開拓の途上。

 人々は祈る余裕があれば日々の糧を得る努力をせざるを得ぬほどで、決して恵まれた地域ではございませぬ。

 当教区でも中央に再三再四増員を要求しており、現役の冒険者から神官を募ってさえおりますが、それも芳しくなく……』


 冒険者として高名な貴殿に紹介を懇願したいところですとまで言われる始末で、これではどちらが願い出たのやらわからない。


 それでも、教区内に新しい教会が増える分には問題なし───当然、費用はこちら持ち───と約束を取り付け、俺は大して効果がないと念押しされた紹介状を手に、オルガドを目指すことにした。




 久しぶりのオルガドだが、半ば予想通りに芳しくない返事を頂戴して教会を辞すると、やることがなくなってしまった。


 これはいっそ王都へ出向き、元冒険者仲間の一人───伯爵家の次男坊で方々に顔が広い───に声を掛けるべきかと酒場の片隅で思案する。

 駅馬車なら往復で優にひと月はかかろうが、そこは健脚のメテオール、春先の嵐はもう少し先で、天候の安定している今ならその半分の時間でもお釣りが来るだろう。


『いよう!』

『うむ。

 呼び立ててすまんな』

『領地に呼ばれたわけじゃねえ、気にすんな。

 この酒場なら目と鼻の先ってもんだ』


 訪ねてくれた『水煙草』に1杯勧め、近況を交換する。


 贅沢を言えばこいつも領地に呼びたいところだが、こいつが満足するほどの仕事を確保しようと思えば、魔窟があと数階層奥深くなって上級の冒険者が常駐するようになるか、オルガド並の都市にシャルパンティエが育つかせねば釣り合わなかった。


『へえ、教会ねえ……』

『うむ。

 俺の不在中、大騒動になってな』

『はん、遊んでるのかと思やあ、領主さましてんじゃねえか』

『……筆頭家臣がしっかりしているからな。

 俺など大した役には立っておらん』


 だからこそ、数日外遊が伸びようとも不安はないのだが。


『で、その教会ってのはもう建てたのか?』

『神官捜しが先だろう。

 希望があれば造りも変えられる』

『ふうん……。

 じゃあよ、修道院付きやら孤児院付きにしてくれと言われりゃ、希望通りに作んのか?』


 孤児院はともかく、山の中の修道院は珍しくない。

 修行を旨とするなら、シャルパンティエは悪い環境ではなかろう。

 だが……。


『その規模となると、資金の方で不都合が出るな。

 第一、俺は未だに宿屋暮らしだぞ』

『領主の館は?

 まだ建ててないのか?』

『うむ。

 流石に馬小屋と倉は必要に迫られて建てたが……』

『なのに教会建てようってか!?

 なんとも清貧にして敬虔な領主さまだな、おい!』


 野ざらしにはしてやりたくないメテオールや、すぐに使わないが売るには惜しい装備など、それらに不都合がなければよかった。領主の館そのものに、思い入れはない。


 ……無論、おかえりなさいと彼女に出迎えて貰えるのであれば、また話は別だが。


『領主の館なんぞなくても誰も困らんのだ。

 後回しでよかろう』

『いや待てよ。待て待て。

 お前、一代で領主家を潰すつもりか?』

『いや、そんなつもりはないが……』

『だったら悪いことは言わねえ、先に館建てろ。

 領主さまって肩書きに加え領地にゃダンジョンまであるんだ、おまけに新築の館とくりゃ、お前が少々強面だろうが女の扱いに慣れてなかろうが、嫁ぐらいは向こうから歩いてくるさ。

 ああ、前に来た時、どっかの嬢ちゃん連れ回してたな。

 あの娘なんか……』


 そこまでを一気に喋ると、『水煙草』はしばらくむむむと考え込み……背伸びして俺の頭を一発叩いた。


『……何をする』

『お前と一体何年のつき合いだと思ってやがる!

 全部繋がったぞ、全部!

 ったくよう、お前が心底阿呆なことと、俺がとことん間抜けなことまで同時に分かっちまったい!』


 何故か怒りだした『水煙草』に、まあ落ち着けと蒸留酒を差し出す。


『お前、あの嬢ちゃんと結婚するつもりで、先に教会用意しようとしてるだろ?』

『!!!』

『しかも……結婚の約束はまだ取り付けちゃねえと見た!』

『な……!?』


 何故それを!?


 こいつの得意とする魔導具の構造のように、俺の行動や心の内まで読めてしまうのだろうか?

 いや、そんなわけはあるまいが……。


 日々顔を突き合わせる『銀の炎』にはしっかりと感づかれていたが、彼女は特に何かを口にするようなこともなく、『孤月』は大して興味もない様子だった。


 それともかく、時が熟すか機会を作るか……。

 日々交わす彼女との雑談の合間、少しでも機会を得やすいよう色々と画策していた内の最強の一手こそが、教会の新築だ。……あわよくば、教会の新築を手土産にジネットと結婚の約束を取り付けようなどと考えていたのは、まあ間違いない。

 だがその機会の見極めこそが問題だった。……人当たりがよさそう見えてあれでなかなかに気難しく、身持ちの堅い彼女なのである。

 

 げんなりとした様子で、『水煙草』は蒸留酒を呷った。


『まあ、俺は嬢ちゃんの顔を見てるからな、悪い結果にゃならねえと保証してやる。

 ……で、どこに惚れた?』

『言えるか!』


 初対面の日、怒鳴りつけられたのが嬉しかったから……と口にすればもう一発拳骨が飛んできそうなので、ここは黙っておく。


 ……これまでも、いや、今も大して変わらないが、女性はどうにも苦手だった。


 とにかく、とことん向こうから避けられる。

 初めて訪れる街にて、店の戸をくぐっただけで若い娘に悲鳴をあげられたことなど、数え切れなかった。そのまま気絶されたことさえあったかもしれない。依頼を受けた農村で出迎えてくれるのは、いつも冷や汗を掻いた村長と相場が決まっている。

 冒険者ならまだましだが、『洞窟狼』の二つ名が知れると、畏怖の目で見られるか、逆に媚びられるか……。


 それが酔った勢いとは言え、俺に物怖じせずしっかりと正論を並べ立てるような女性など……今後も現れるかどうか。その後もこちらが頼み込めば態度を変えず、何くれとなく───それこそ店を出すどころか領地のことまで───俺を支えてくれた彼女だった。


『ハン、照れるようなガラかよ!

 でもまあ、脈はあるんじゃねえか?

 お前と二人旅に出る娘ってだけで、どんな聖具や魔導具よりも貴重だぜ。

 花街でびびられる上客なんぞ、お前以外に聞いたことがねえってほどには強面だったからな。

 引退してからはちっとばかりその凶相も薄まった……ような気もするが、どう違うと聞かれりゃ答えに窮するのも間違いねえ』


 言いたい放題に言われているような気もするが、『水煙草』が結婚を決めた時、同じように腐して祝った覚えがあった。

 ……遠慮のない物言いは信義と友情の証、ここは大人しく聞き入れておくべきか。


『しっかしなあ、俺の周りにゃどうしてこうと決めたら明後日の方角に暴走する阿呆が多いんだか……。

 だがまあ、今日俺に飲もうと声掛けたのは正解だ。

 ……さっき言った、神官の希望に添う教会を建てるってのに、嘘偽りはねえんだな?』

『資金に限りはあるがな』

『まあ、結婚祝いの前渡しってことで、足りねえようなら俺の方からも寄進してやらあ。

 ……ちょいと耳を貸しやがれ』

『うむ?』


 しばらく『水煙草』の話に耳を傾け、こいつはこいつで苦労しているらしいと、腐れ縁の小柄な工房師を見下ろす。


『───とまあ、そんなところだ。

 間違っても美味い話じゃねえってのは、わかるな?』

『ああ』

『……それでも、いいんだな?』

『うむ』


 最低限の条件は満たされているかと、俺は頷いた。

 その程度の信頼は、預けて長いのだ。


『……これ正に正道なり、だったか?』

『ほう!?

 ああなるほど、あの嬢ちゃん、西方諸国でもアルールの出か?』


 ……余計な一言だった。




 次の日、俺は『水煙草』を伴って再びオルガドの教会を訪れていた。


 詳しい話は商人言葉全開の相方に任せ、俺は茶菓子を口に放り込んで黙っている。


『いやしかし、私めと旧知の騎士様が先にこちらを訪れておいでだったとは、なんたる僥倖!』

『貴殿にはいつも助けられておりますな。

 このよき巡り合わせ、聖神に感謝をせねば』


 『水煙草』が神官長に語ったのは、どこにでもあるような話……と言い切るには例が少ないかもしれないが、要約すれば商人とそれに買われようとしている教会のことと、その裏事情である。

 無論、オルガドの教区内でいま正に起きている出来事、神官長には間違っても他人事とは言えまい。

 教区としては古くよりある教会で手放したくはなかったが、同時に中央からも口添えという名の圧力が掛かっていた。下手に揉めて地方教区が中央に逆らうような受け取り方でもされれば、土地をだまし取られるよりも酷い結果が待っていようと、神官長は頭を抱えていたらしい。


『ですがこの中央の圧力、正しいとすればどうでありましょうや?

 買い叩こうとした別の商人が手を付ける前に、この商人が真っ当な金額を示して買い付けの名乗りを上げたと、私めは聞いておりますぞ』

『なんですと!?』

『中央の親しいどなたかにお尋ね下されば、すぐにわかりましょう』


 件の教会はどこにでもあるような孤児院付きの教会だったが、その立地が問題だった。それなりに広い通りに面した一等地は、作られた当初こそ適当なものであったのだろうが、それこそが商人───名乗りを上げた商人とは別の、王都に本店を構える王国有数の豪商───に目を付けられる原因となったらしい。


 教会所有地を売れば、当面は一息つけるし余裕のある活動も出来る。孤児たちの引取先も、他の孤児院に押しつけておしまいとは行かないだろうが、飢えることだけはあるまい。

 だが売らなければ、今年を乗り切ることも厳しかった。布教活動にも支障が出ようし、しわ寄せは弱者へと押しつけられる。中央からの援助───『信仰心外交』では寄進者の指定した教会の建物が新しくなったりはしても、地方教区がその恩恵を受けることはほぼない───は、大した増額を期待できなかった。


 そこで両者の事情に何故か詳しかった『水煙草』───こいつの情報網はどうなっているのやら、昔から謎に満ちている───が落としどころとして提案したのが、教会所有地を売却した上でのシャルパンティエへの教会新築と孤児院移転、そしてそれに伴うヴェルニエ教区への神官の派遣である。




 神官長の了承を取り付け、問題となっている東街区の教会へと向かう道すがら、『水煙草』は付け加えた。


『神官長にゃ言えなかったがよう……』

『む?』

『教会を買おうとしてる商人は行商から身を立てた成り上がり者で、今じゃ大店の主人だが、自分の育った孤児院を守りきれなかったことを未だに後悔してるような奴でな』

『……ふむ』

『身代傾けてでも勝負に出るっつって、聞きやがらねえんだ。

 40人からいる孤児も全部引き取るってタンカ切りやがったが、奴にそんな余裕がねえのは顔見てわかった。

 ……援助してしまいってわけにゃ、行くめえ?』

『そこに俺が現れたわけか……』


 まあ、そういう巡り合わせもあるのだろうと、俺は頷いた。


『ふむ、それでは……お前はどうなのだ。

 何の故あってその商人と教会と俺を結び、孤児を助けようとする?』

『……俺もな、そのなくなった孤児院の出なのさ』

『……そうか』

『まあ、旅費はこっちが何とかする。

 ……子供らが一人立ちするまで、そっちで面倒見てやってくれや』

『冒険者に育っても文句を言うなよ?』

『フン、お前が育てんなら、そこらの洞窟で野垂れ死ぬこともねえだろう。

 後は……そうだな、魔導具の細工師なんて仕事を選ぶような阿呆が出ねえことを祈るだけさ』


 子供は大人を見て物を学ぶと言うが、何せ俺の領地にいる大人の大半は冒険者、大地に根ざした暮らしを教えてやることは難しい。

 ……いや、農家は無理でも商人やパン屋なら道はあるか。


 古い造りの教会が見えてきたことで、俺達は話を打ち切った。




 ▽▽▽




「そのような具合でな、院長、シスターも含め、教会の中身を孤児院ごと引き取ってきたわけだ」


 俺もこの一件で悪事を働いたつもりはないし、小さな善行であると同時に、将来のシャルパンティエを見据えて孤児院を引き取ったわけで、後ろめたいことは何もない。

 ヴェルニエの神官長もオルガドに礼状をしたため、諸手を挙げて歓迎さえしてくれた。子供達も離ればなれにならなかったと喜んでいたし、旅程は賑やかに、そして楽しく過ごしていたように思う。


「ふうん……。

 まあ、それは仕方ないわよね。

 その場いて、自分がちょっと頷けばなんとかできそうなのに、子供を放り出すなんて……無理でしょ」

「……まあ、な」

「でも、あの子……ゲルトルーデは、どうしてわたしが悪徳商人だと思っているのかしら?」


 概ね納得したようなジネットは、小さくため息をついて続きを促した。


 ……ここからが勝負所か。


「あー、うむ。

 ……ゲルトルーデだが、親が悪い商人に騙されたあげく蒸発したそうで、その上今回の教会売却の一件ですっかり商人嫌いの商人憎しとなってしまってな、院長殿も困っておられたのだ。

 俺も何とか懐柔しようと、メテオールに乗せてなるべく話をするように努力を重ねたのだが……」


 子供を諭そうなど不向きにも程があると自分でも良く知っているが、ジネット相手に暴言でも投げられてはたまらないと、自ら名乗りを上げたのだ。

 ……しかし所詮、子供と縁のない生活を送ってきた俺のすることである。道を経る内にどうにか懐かれはしたが、残念なことに当初の目的は遂に果たせずじまいであった。


「……よけいに拗れたのね?」

「……すまん」


 こればかりは言い訳のしようもない。

 子供とは言え侮りがたし、ゲルトルーデは鋼鉄の意志の持ち主であった。


「まあ、そんなことだろうと思ってたけどね。

 あーあ、明日の勝負は憂鬱だなあ……」

「そう言えば、どんな勝負をするのだ?」

「かけっこよ。

 ……手加減なしの本気で勝ちに行くけどね」

「そ、そうか……」


 大人げないと茶化すには、ジネットの目は真剣味を帯びていた。

 じっと見つめられ、呆れたようにため息を向けられる。


 ……彼女とゲルトルーデとの勝負、なにやら賭事にも発展しているようだが、中身については二人とも口を噤んでいた。

 是非とも知りたいところだが、明日になれば分かるだろうか……。


「……審判ぐらいはやってくれるんでしょうね?」

「うむ、引き受けよう」

「お願いね。

 ……はあ、今日はもう寝るわ。

 なんだかいつもの倍ぐらい疲れちゃったわよ……。

 おやすみなさい、『ユリウス』」

「ああ、しっかり休んでくれ」


 顔には不本意ながらと出ているものの、多少は機嫌を直してくれたらしい。

 彼女を見送って、ようやく肩の力を抜く。


 ……土産に買った茶を渡していなかったことを思い出したのは、追加のワインを頼んだ後のことだった。

 



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