秋の味覚
掲載日:2026/10/30
秋。
秋といえば芸術の秋、読書の秋、そして食欲の秋。
今年は松茸が豊作のようだ。
今年こそ、純三は濁点を取って「待つだけ」を卒業したいと思う。
彼は還暦を数年前に過ぎ、このままでは一生終わりで、濁点が付いたまま
で天国(地獄という説も否定しない)に行くのかと思うと、死んでも死にきれない。
思わず彼は、フォークルの「イムジン河」とは違う名曲を口ずさんでしまうのだ。
で、県内の六文銭の駅近くに住む親戚へ、松茸がどんな具合か電話して聞いてみた。
親戚の婆さんによると、松茸小屋は盛況のようで予約をしないとダメだそうで、
しかも一万五千円もするらしい。
純三は、予約してまで食べたいとは思わないし、そんなに高価なキノコ、
アホらしくて食べてやるもんかと、一人、啖呵を切った。
それに俺だって、スペシャルな松茸を持っている、そう思う純三だった。
彼の好きな動画に出ている男性の松茸を、綺麗な御婦人達が何かに憑かれた様に
舐めている。きっと魔力があるに違いない。
きっと俺の松茸だって魔力があって美味しいに決まっている、そう信じて疑わない純三だ。
だが、採るときの痛みを思うと、採取は二の足を踏むのだった。
すでに田んぼは冬を迎える、そんな時期のお話だ。




