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第6話:汚い噂と、黄金の風

 軍事侵攻に失敗した王国は、今度は卑劣な「情報戦」を仕掛けてきた。

 各国の貴族が集まる社交界に、「リリア・アーベントは王国の魔導秘匿技術を盗んで亡命した大罪人だ」という嘘の噂を流したのだ。


「リリア様は、我が国を裏切った魔女です! 帝国は騙されている!」


 王国の生き残りであるバドルフたちが、近隣諸国の夜会で必死に吹聴して回っているという。

 だが、そんな小細工は、私がもたらした「帝国の圧倒的繁栄」の前では無力だった。


「陛下、見てください。これが新型の『魔力増幅炉』です」


 私が帝国で設計した最新鋭の炉は、王国の旧式とは比べものにならない効率を誇っていた。

 帝国の街には、かつての王国では想像もできなかった光景が広がっている。

 二十四時間稼働する魔導工場、冬でも暖かい農場、そして全ての国民に安価に供給される魔力。

 帝国は、まさに「黄金時代」に突入していた。

 そんな折、各国の王族が参加する『大陸魔導平和会議』が開催された。

 噂を広めていた王国の使節団も、最後のアがきとして乗り込んできた。


「エリオット陛下! その女を直ちにこちらへ! 彼女は——」


 バドルフが叫びかけたその時、会場中の魔導灯が、リリアの指先の動き一つで虹色に輝き始めた。


「皆様、ご紹介します。我が最愛の婚約者、リリアです」


 陛下の堂々たる宣言とともに、私が壇上に立つ。


「バドルフ次長。私が技術を盗んだとおっしゃるなら、今ここで『王国の技術』を再現してみせましょうか? ただし、あまりに低品質なので、この会場の豪華な照明はすべてショートしてしまいますけれど」


 私がクスリと笑うと、会場の他国の王族たちから失笑が漏れた。

 彼らの前にあるのは、王国の「嘘」ではなく、目の前の「帝国の奇跡」だ。


「……ひっ、あ、あう……」


 バドルフは顔を真っ青にし、その場に崩れ落ちた。

 もはや誰の目にも明らかだった。王国がリリアを捨てたのは、技術を守るためではなく、ただの「無能な嫉妬」だったことが。


「リリア。汚らわしい連中の相手はもういい。夜会を抜け出して、二人だけで乾杯しよう」


 陛下は他国の視線も気にせず、私の肩を抱き寄せ、優雅に会場を後にした。

 その夜、王国の特使たちは「虚偽の流布」で会場から強制退場させられ、さらに国際的な信用を失うこととなった。

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