第4話:今さら、どの口が言っているのですか?
私が帝国の管制塔で采配を振るい始めてから、わずか一週間。
帝国の街並みは、私の魔力配分によってかつてない輝きを放っていた。魔導列車の速度は二倍になり、街灯は優しく夜を照らす。
「素晴らしい……リリア。君が来てから、帝国の魔力効率は三〇%も向上した。もはや君なしの生活など考えられんよ」
執務室でエリオット陛下が、私の腰を引き寄せ、耳元で囁く。陛下の独占欲は日に日に増しているようだった。
そんな幸福な空気を切り裂くように、侍従が困惑した顔で入室してきた。
「陛下、旧王国の特使が……門前で泣き叫びながら、リリア様への謁見を求めております」
「……旧王国の?」
エリオット陛下の目が一瞬で氷のように冷え切る。
城門前には、ボロボロの正装に身を包んだバドルフ次長と、数人の役人が地面に這いつくばっていた。かつての傲慢さは微塵もない。
「リリア様! ああ、リリア様! どうか、どうか戻ってきてください!」
私を見つけるなり、バドルフが縋り付こうとして騎士に組み伏せられる。
「王都はもう限界です! 魔導具は全滅、国民は暴動を起こし、国王陛下からは『リリアを連れ戻さねば処刑だ』と言われているのです! あれは誤解だった! 君こそが真の功労者だ!」
私は、陛下の腕に守られながら、冷めた目で彼らを見下ろした。
「バドルフ次長。私は『座っているだけの無能』だったはずですよね? エミリーさんという素晴らしい後任もいたはずです」
「あ、あの女は、何もわかっていなかった! ただ適当にレバーを動かして、回路を全部焼き切りおったんだ! 頼む、リリア! 今すぐ戻って……」
「お黙りなさい」
私の代わりに、エリオット陛下が地を這うような声で断じた。
「私のリリアを、あんなゴミ捨て場のような国に戻すとでも? 失せろ。次、我が国の領土に足を踏み入れれば、宣戦布告と見なす」
「ひっ、ひぃぃぃ!」
バドルフたちは騎士によって引きずられていく。
彼らが去った後、私は陛下を見上げて微笑んだ。
「陛下、私、もうあの国に未練はありません。ここで陛下と一緒に、新しい未来を作りたいんです」
「ああ、リリア。君の望むすべてを叶えよう」
王国では「暗闇」が支配し、帝国では「光」が溢れる。
それは、たった一人の女性をどう扱ったかの、残酷な結果だった。




