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第23話:最後の配分、そして魔法の終焉

 神の消滅から十数年。世界はかつてない繁栄を極めていたが、リリアだけはある「予兆」に気づいていた。

 世界の魔導盤コンソールから、急速にマナの残量が失われているのだ。


「……神という『供給源』がいなくなった以上、この世界にある魔力は、使い切れば終わる有限の資源だったのですね」


 中央制御室。リリアの傍らには、成長したアイリスと、今や立派な魔導技師となったルカ、そして白髪が混じりつつも変わらぬ愛を捧げるエリオット陛下がいた。


「このままでは、十年以内に空飛ぶ王都は墜落し、すべての魔導具はただの鉄屑になるでしょう」


 リリアの言葉に、一同は息を呑んだ。

 だが、リリアの瞳に絶望はない。彼女はすでに、最後にして最大の『配分計画』を練り上げていた。


「陛下。私は、この世界に残ったすべての魔力を『種』に変え、人々の心と大地へ等しく還元しようと思います。……魔法という奇跡を消し、人間が自分の足で歩く世界にするために」


 それは、リリア自身のアイデンティティである『魔導配分官』という職を、自ら消滅させることを意味していた。


「リリア。……君がそう決めたのなら、私はどこまでも共に行こう」

「お母様、私とルカさんも手伝います。魔法がなくても、私たちは生きていける。そう証明するのが、私たちの仕事ですよね」


 家族の、そしてかつての敵の末裔の手が、一つの魔導盤に重なる。


「——全魔力、強制開放。ターゲット、全世界の生命。……ラスト・ディストリビュート、開始!」


 リリアの指先が閃光を放った。

 浮遊王都がゆっくりと地上へと降下を始める。同時に、世界中の魔導具から光が抜け出し、それは美しい光の雨となって地上に降り注いだ。

 魔法の火は消える。けれど、その代わりに大地の穀物は豊かに実り、人々の知恵は「魔法に頼らない技術」へとシフトし始めた。


「……ああ、なんて綺麗なの」


 光の雨の中で、リリアは微笑んだ。

 魔法という特権を、人類の「生きる力」へと完全に配分し切ったのだ。

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