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第22話:運命の再会と、泥中の少年

 魔導学院の図書室。アイリスの前に、ボロボロの制服を着た一人の少年が立っていた。

 彼の名はルカ。かつての王国でリリアを追い出したバドルフの、遠い血縁にあたる少年だった。


「……君が、リリア皇妃の娘か」


 ルカの瞳には、深い憎しみ……ではなく、絶望に似た色が宿っていた。

 没落した一族の罪を背負わされ、帝国の片隅で細々と生きてきた彼は、周囲から「売国奴の末裔」と石を投げられる日々を送っていたのだ。


「私に何か用ですか? ルカさん」


 アイリスが静かに問いかけると、ルカは震える手で、壊れかけた古い魔導具を差し出した。


「これを……直してほしいんだ。これがないと、病気の妹の部屋を暖めることができない。……僕には、君たちのような『正しい魔力』は流れていないから、何をしても壊してしまうんだ」


 かつてリリアを「無能」と切り捨てた男の血筋が、今、リリアの娘に「配分」を乞うている。

 アイリスは、その魔導具を一瞥した。回路はズタズタで、持ち主の焦燥ノイズが魔力を汚染している。


「ルカさん。魔力に『正しい』も『間違い』もありません。あるのは、その力をどう流すか、という『意志』だけです」


 アイリスは母親譲りの優しい手つきで、ルカの魔導具に触れた。

 指先から流れる白銀の光。それがルカの歪んだ魔力を優しく包み込み、濁りを取り除いていく。


「……温かい。これが、世界を救ったという『配分』の力か……」


 ルカの目から涙がこぼれ落ちる。

 彼は復讐のためにアイリスに近づいたのではない。ただ、あまりにも冷たい世界の中で、かつて一族が捨て去った「温もり」の正体を知りたかっただけだった。


「お母様は言いました。過去の罪は消せませんが、未来の回路は自分で選べるのだと。……ルカさん、あなたも自分の魔力を、誰かを守るために配分してみませんか?」


 その光景を、遠くから見守るリリア。


「陛下。あの子、私よりもずっと上手に『心の配分』をこなしていますね」

「ああ……。君が世界を変えたからこそ、あの子は憎しみを愛に変えることができるんだ」


 旧王国の怨念は、こうして次世代の優しさによって、静かに浄化されていった。

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