第20話:虹の架け橋と、命の芽吹き
神との決戦から一年。
世界は劇的な変貌を遂げていた。神という唯一の管理者が消えたことで、魔力は「天から与えられるもの」ではなく、「地上の人々が分かち合う資源」へと変わった。
その中心にいるのは、もちろん帝国皇妃リリアだ。
「リリア、あまり無理をするなと言っただろう。今は体が大事な時期なのだから」
バルコニーで魔導盤を操作していた私を、エリオット陛下が後ろから抱きしめる。彼の視線は、少しだけふっくらとした私の公認の「お腹」へと向けられていた。
「ふふ、大丈夫ですよ。今のシステムは自動配分が中心ですから。私は時々、流れを整えてあげるだけです」
帝国は今、歴史上最も平和で豊かな時代を享受していた。
一方、かつての王国の「その後」は、悲惨なものだった。
魔力の一切届かない極北の鉱山。
そこには、かつて私を嘲笑ったバドルフやエミリーの代わりに、彼らの意志を継ごうとした汚職貴族たちが送られていた。
彼らは、私が構築した「誰にでも平等な魔法網」の恩恵を一切受けられない。なぜなら、彼らが他者から奪い取ろうとした罪が、システムによって『拒絶』されているからだ。
「……リリア……リリア様……! どうか、一度だけ……この冷えたスープを温める火を……!」
かつて私を「座っているだけ」と切り捨てた彼らは、今やマッチ一本の火さえ起こせず、震える手で泥を掘り続けている。
私が彼らに復讐をしたのではない。彼ら自身の「傲慢」が、新時代の魔法に受け入れられなかっただけなのだ。
「陛下。あの人たちのことは、もういいのです。……それよりも」
私は陛下の温かな手に、自分の手を重ねた。
「この子には、魔法が便利であること以上に、誰かと温かさを分け合うことの素晴らしさを教えてあげたいんです」
「ああ。君がこの世界に教えてくれたように、な。……リリア、愛している。君と、この子が生きる未来を、私は生涯をかけて守り抜こう」
浮遊王都に、祝福の鐘が鳴り響く。
かつて居場所を失った少女は、今、新しい命の母となり、世界の希望そのものとなっていた。




