なんで私が
勢いよく開かれたドアの先にいたのはアメディオ王子の妹、アメリッサ姫だ。兄とそっくりの美しい顔立ちをしている。同い年のこの姫がクロエは苦手な為、あまり関わらないようにしていた。
「クロエ、お兄様のお仕事は終わったの?終わったならさっさと言いなさいよ。私の仕事もしてもらうわよ。」全くクロエの事情を考えず、自分の命令だけを当たり前のようにしてくる。
「あの、アメリッサ様。今アメディオ様のお仕事が終わったばかりで…それに以前もお伝えしましたが、この能力を使った仕事はアメディオ様の為にするようにと王様からも言われております。」報告書のため、帰宅できていなかった自宅にゆっくり帰れるところを邪魔されそうで、クロエは真剣な眼差しになる。
「なんだ、そんなの理由にならないわよ。お兄様だってお父様だって私のために働けって言うに決まってるじゃない。王族のために働くのが王族以外の役目なんだから」当たり前のように人を見下す発言をする。
「来週パーティーがあるじゃない?そのパーティーに来る王子の顔とか服装を調べてきて。お父様ったら全然教えてくれないんだから」汚いものでも見るような目でリンの淹れてくれたお茶とクッキーを見ながら心底うんざりした様子で言う。
「…その…他国の王子の調査まではできかねます。ご存知の通り、この能力は国を出ると何故か失われますし。」なんで私がそんなことせなあかんねん、さっさと出て行けや、こっちは儚い気持ちで茶ぁ飲んどんや、という気持ちを抑えつつ冷静に伝える。
「何言ってんのよ。当たり前じゃない。パーティーの為に入国してくる順に調べてってこと。差し当たって明日入国してくる隣国の王子ね。」私の夫になる可能性のある王子達が来るんだから、と自慢げな様子だ。
「…はい、では仕事は明日からさせていただきます。」命令に従い俯くクロエに満足した様子でアメリッサは頷く。
「私はそのうち他国の王妃になるのよ。今のうちに機嫌を取っておいた方が良くてよ。」
アメリッサは性格の悪さを微塵も感じさせない微笑みで傲慢なことを言い、部屋から優雅に出て行く。
彼女が部屋から出た後でどっと疲れが押し寄せる。
「なんで私が…もう今日はさっさと帰ろう。」
身の回り品だけの荷造りはすぐ終わる。カバン一つと侍女一人だけを共にして王宮を出る。




