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過去
8年前、僕は10歳だった。その時、戦争が起きており僕の周りでもたくさんの人が命を落としていた。でも、なぜか、僕はこのまま両親と弟との普通の日常が続くのだろうとどこか他人事のように思っていた。あの日は快晴だった。お父さんは仕事に出ていて、お母さんは午後から街へ出て買い物でも行こうかと言っていた。
「緊急事態です。敵の飛行機がすぐ近くを飛んでいます。すぐに室内へ避難してください」
僕はそれはラジオの中だけで聞くものだろうと思っていた。でもその時ラジオはついていなかった。お母さんが血相を変えて2階から降りてきて僕と弟を見て言った。
「あなたたち、もしこの家がダメになったらお父さんの職場に行きなさい。きっと同僚の人たちが助けてくれる」
その言葉に僕と弟は怯えながら頷いた。
「大丈夫、絶対私が守るから」
そう言ったお母さんの声は震えていた。もう一度大きな警報が鳴り飛行機がすぐそばを飛んでいる音も聞こえた。
「お母さん、お兄ちゃんどうなっちゃうの?僕たち死んじゃうの?」
「いや、死なない、死なせない」
僕は怯えている弟を慰めることしかできなかった。




