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【完結】Vtuberの俺たちは他人同士になったけど、兄妹設定はやめられない。元義妹が今もお兄ちゃんと呼んでくれる件。  作者: 羽黒楓


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第24話 舞亜瑠の笑顔が一番のデザート

「いやーごちになってわるいすねー」


 小南江(さなえ)がバカでかいカツパンにかぶりついている。


「デザートも好きなのを頼めよ」


 武士郎は多量の大きなサンドウィッチを口に放り込みながら言った。


「山本先輩も小南江(さなえ)ちゃんもよく食べるねー」


 舞亜瑠(まある)は感心したように言ってるが、本人だって巨大なエッグトーストをかじっている。

 高校生の食欲は底を知らないのだ。


小南江(さなえ)が知らせてくれたおかげで舞亜(まあ)……笠原が助かったからな。お礼だ、いくらでも食っていいぞ」

「えへへ、ごちっす」

「いやほんと、小南江ちゃんがおに……先輩に教えてくれたおかげで助かったよー」

「いやいや、心配になっちゃったからねー。まあサッカー部廃部になっちゃったけど……」


 小南江(さなえ)の言葉に、武士郎は吐き捨てるように言う。


「当たり前だ、笠原にあんなひどいことをしたんだからな」


 サッカー部の寮に駆け付けた教師たちは、武士郎にやられて悶絶しているサッカー部員と、そしてそこにあった大麻を見つけた。


「うちの先生たち、悪い意味で優秀っすよねー。あれ全部もみ消したらしいっすよ」


 なにしろ、大麻である。

 実は覚せい剤まであったのだが、そこまでは武士郎たちは知らない。

 そして組織的な強姦。

 明らかな犯罪であって高校生のいたずらでは到底済まされないことだった。

 そんなのが世の中にばれたらサッカー部廃部だけじゃすまない、学校全体の存立にかかわる大事件だった。

 どう考えても全国ニュースもので、毎日ワイドショーを騒がせるほどの話題になったのは間違いない。

 高校側としてはなんとしてもなかったことにしたかった。

 そこで、地元の名士でもある理事長の旗振りのもと、徹底した隠ぺい工作ともみ消しがおこなわれたのであった。

 対外的な発表としては、サッカー部寮内における喫煙と飲酒、そして淫行。

 その結果、サッカー部は廃部。

 主導した部員十名ほどは退学。

 そのほか関与した部員も無期停学処分。

 舞亜瑠(まある)を騙して寮に誘い込んだ小島美幸も停学だった。

 教師から聞いた話だが、武士郎が殴り倒した奴らはそれなりのケガを負ったが、自分たちの犯罪行為が明らかになるのを恐れたのか、誰も武士郎や親に文句をつける者はいなかった。

 宗助は鼻の骨を骨折した上に鼻がひんまがったそうだ。

 もちろん宗助は退学処分、家庭崩壊していたらしく親元にいることもできずに僻地の祖父母の家にあずけられることになった。なんでもそこは老人しかいない限界集落らしいので若者はこきつか……重宝されることだろう。

 もうちょいぶん殴っておいてもよかったなあ。

 一応武士郎にも処分はあったのだが、被害者側ではあったので暴力事件を起こした反省文を提出させられただけだった。インターネットを見て適当に書き写したやつを学校に提出して終わりだ。


 武士郎は舞亜瑠(まある)の顔を見る。

 舞亜瑠(まある)はその視線に気づいて、エッグトーストをくわえたまま「ん?」と小首をかしげた。

 うん、よかった、こいつが傷つくようなことがなくて、本当によかった。


「なに人の顔をじっと見てるの……見てるんですか先輩?」

「いや……。デザートも好きなのを頼めよ」

「やったー! じゃあイチゴのミルフィーユ食べる!!」

「おお、頼め頼め。小南江(さなえ)はデザート何にするんだ?」

「ごちっす! じゃあ私はパフェで……。そういえば、サッカー部でなんかいやな噂、ほかにもあったんすけど」

「なんだ?」

「なんか、あの苅澤って先輩いるじゃないですか」


 苅澤里香。

 武士郎の彼女だったかもしれない女だ。

 今思うと、なんであんな女にいっときは好意をいだいたのか、自分でもわからない。


「あの先輩、今回の件ではなにも処分されてないすけど、私が三年の先輩から聞いた話だとけっこうやばいことしてたらしいすよ」

「なんだ、やばいことって?」

「こう、女の子をとりまとめて、お金をもらって、その、やらせるみたいな?」


 それはそれで完全な売春組織じゃないか。

 ここまで聞いてしまうと、あのとき振られてよかったとまで思えてくる。

 そんなやべー女とあやうく水族館デートなんてしてしまうところだった。


「いひひひ、じゃ、おに……先輩、遠慮なくデザートも頼んじゃいますよー! 小南江ちゃんも決めた? じゃ店員さん呼ぶよー……あれ、先輩はデザート、いらないんですか?」


 武士郎にとっては舞亜瑠(まある)の笑顔が一番のデザートだったので、その顔を眺めながら、


「俺はいいよ、いっぱい食えよ」


 と言った。

 二人でおいしそうにスイーツを食べる女子を見ながらすするコーヒーもうまいもんだ。 


「そうそう、そんで三年の先輩、苅澤って人と話つけるとかいってたすよー」


 





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