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【完結】Vtuberの俺たちは他人同士になったけど、兄妹設定はやめられない。元義妹が今もお兄ちゃんと呼んでくれる件。  作者: 羽黒楓


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第20話 こないだ三年生に告られたんすけど

 九文字(くもんじ)小南江(さなえ)は、体育館の裏に呼び出されていた。

 これで何回目だろう?

 まあ、危害を加えてくるような人じゃないのはわかってきたけど……。

 こうなんども呼び出されると、ちょっとうざったい。

 はっきり断ってはいるつもりなんだけど、この上級生はしつこいのだ……。


「で、なんすか先輩?」


 現れた三年生に、小南江(さなえ)はため息交じりに聞いた。


     ★


〈お、今日は兄ちゃん一人で麻雀配信か〉


 放課後。

 武士郎は自宅に帰ってから一人で配信を始めた。

 ほんとは舞亜瑠(まある)と一緒にホラーゲーム配信する予定だったのに、ドタキャンをくらったので一人で麻雀をやり始めたのだ。


〈ちゃぷちゃぷって言え〉

〈最近麻雀やってなかったよな〉

〈でもあいかわらずうまいよなー〉

〈守備型としては完成形じゃないか〉

〈ダマに対するケアがアマチュアの域を越えてる〉


「まあよっぽどの状況じゃなきゃダマにケアなんてしないんだけどな。今回のは終盤だったから」


〈ところでさ、こないだみずほちゃんそっくりの悲鳴の子、バズってたじゃん? さっき町で見かけたww ふわふわのツインテールだからすぐわかった〉


「さっき!?」


 みずほそっくりの悲鳴の子といったら、舞亜瑠(まある)本人のことだ。

 舞亜瑠(まある)のやつ、どこかでリスナーに見られてたか。

 っていうかこの地域にもリスナーがいるんだな、いろいろ気をつけねば。

 武士郎ならまだ別にいいけど、女子高生である舞亜瑠(まある)が特定されたらいろいろめんどくさいことになりそうだ。

 なにしろチャンネル登録者数52万人ったらちょっとした有名人に匹敵するからな。

 ストーカーとか怖いし、住んでいる地域も特定されたくないぞ。


「おいおい、個人情報だからな、別にどこで見かけたかとかいわんでいいぞ」


〈わかってるよww〉

〈ほんとにみずほちゃん本人だったりして〉


「みずほじゃねーよ、全然見た目違うもん」


 そう言っておかないとなにがどうなるかわからんからな。

 ちょうど半荘の最中に、スマホに着信があった。

 見ると、昨日会った舞亜瑠(まある)の友達の小南江(さなえ)からだ。

 このあいだ、番号とRINEの連絡先の交換をしといたのだ。

 まあ急な用事じゃないだろ、と思って放っておく。

 ゲームは終始武士郎のペースで進む。


「お、上家(かみちゃ)の人、国士無双に向かっているな。そういう諦めない心、俺は好きだぞー」


 そこに下家のリーチが入る。


「まあ振り込まなきゃ俺のトップだからな、このイーソーは国士以外にはあたらんから大丈夫だろ」


 捨てると、上家のキャラが叫んだ。


『ローン! 国士無双にゃ! 役満(やくにゃん)! 32000点! 』


「ぎゃーーーーーっ!」


〈草〉

〈ナイス振込〉

〈ナイス〉

〈草〉

〈みずほちゃんみたいな悲鳴だった〉

〈草〉

〈草〉


「あー。今のはさすがにへこたれた。ちょっと飲み物とってくるわ……」


 いったんマイクを切り、武士郎は立ち上がろうとして――。

 見ると、スマホに鬼電が入っている。

 全部小南江(さなえ)から。

 RINEメッセージも来ていて、


『マルちゃん今そっちにいますか?』

『電話に出てください!』


 うん?

 なんだろう、嫌な予感がしてこちらから小南江(さなえ)に電話をかける。


『もしもし? 山本先輩?』

「おう、俺だ。どうした、めっちゃ電話してきてたけど。なんかあったか?」


『あ、どもす。あの、マルちゃん、山本先輩と一緒すか?』

「いや? っていうかなんか用事があるから今日はこっちに来ないって、小南江(さなえ)から俺に伝言したんじゃないか」


『そうですよね……。あの、マルちゃん、今日どこに行ったか、先輩聞いてますか?』

「いや? 小南江(さなえ)は知らないのか?」


『教えてくれなかったんす……。あの……。これ、噂なんで、あくまでちらっと聞いただけなんすけど』

「なんだ?」


『あの、私、こないだ三年生に告られたんすけど。顔が好みだっつって』


 おいおい、いきなり自慢か?

 まあ確かに小南江(さなえ)はかわいいからな、そういう風に声かけるやつもたくさんいるだろう。


「ふーん、付き合うの?」

『まさか! よく知らない人と付き合うなんてしないす。でもその人、けっこうしつこくて……。で、ちょっと今日も声かけられたんすけど』


「モテる女はつらいなー。あんまりしつこかったら俺に言えよ、三年生だと俺からしても先輩だけど、なんかこう、うまいこと言ってやるから」

『あ、どうもっす。もしかしたらお願いするかもっす。でもすね、今日、ちょっと心配されまして』


「心配?」

『サッカー部の奴らがむかつく一年の女子を襲うとか言ってたけど、お前、サッカー部に恨み買ってないよな、って。で、ちょっと心配になって……。マルちゃん、あの、今日、どこに行ったかとか、ほんとに先輩しらないすか? なんか心配になって……』


 サッカー部がむかつく一年の女子って、舞亜瑠(まある)じゃないか?

 聞いた瞬間、武士郎の顔から血の気が引いた。

 まさか……まさか!?


「ちょ、ちょっと待ってろ、すぐかけなおすから」


 いったん電話を切り、配信のマイクをオンにする。


「おい、さっきのみずほに似た人を見たって人、まだいるかー?」


 なるべく平静な声で聞く。


〈ちゃんといるぞ。さっきの国士振込、見事だったぞ、草生えた〉


「ちょっと気になったんだけど、その子、どこで見かけたんだ?」


〈それいうと俺の個人情報もばれるんだけど……。まじでみずほちゃんだったりする?〉


「違うっていってんだろ、街とかですれ違ったのか?」


〈いやいや、まあ地名をぼかしていうけど、ゴマラーメンってのがおいしい店があって、食って出てきたらあのツインテールの女子がさー、友達と歩いていたから。あのツインテールは目立つじゃん?〉


 そのコメントを見た瞬間、


「悪い、親が呼んでるから今日はここまでにするわ」


 武士郎は配信を切って家を飛び出た。




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