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水泳部に入ってるだなんて知らない



 「いやぁ、景色が良いねぇ」

学園の校舎からやや離れたところにあるこの中庭。昼休みになればお弁当を持った生徒がちらほらと見受けられる場所である。

「…」

「そろそろ紅葉も見られる時期かなぁ。時期になったら綺麗だろうなぁ…。だってこんなにも綺麗な風景なんだから」

「…」

「何で返事してくれないの?直ちゃん」

「んぐっ」

お前が僕の口の中に永遠と食べ物を入れてくるからだろうが!!という叫びは食べ物に飲み込まれて消えていく。

「あ、この卵焼きおいしい。食べてみて」

そう言って優磨がまた口に突っ込んでくる。こちとらまだ唐揚げが口の中に残ってるんだ。勘弁してくれ。

「それよりも今日の授業面白かったね

ー」

優磨がニコニコとしながら言った。どこがだ、というのが僕のホンネである。あんなただ事実を陳列しただけの授業をやっても意味が無い。

「ぜんぜ…っ…」

話させねぇぞと言わんばかりに思い切りスパゲティを口に突っ込まれる。咀嚼しながら睨むと優磨は朗らかに笑った。

「そういえばそろそろ合宿だねぇ」

「……合宿?」

「十一月にあるんだよ」

「…へぇ」

「一緒の班になろうね!」

「まず行かない」

「へ?」

「家庭の事情、とまで行ったら伝わるか」

暫く経っても何も優磨が言わないので珍しいと思い、視線を送るとこちらを見て笑った。

「なら俺も行かない」

「はぁ!?」

「いやぁ、だってさ?直ちゃんが行かないんだったら行かなくて良いよね」

「キモ…」

「照れるなよぉ、直ちゃんー」

優磨は僕の頬を人差し指で優しく突く。

「ちゃん付けは止めろって言ってるだろ」

「あは、そうだっけ?」

優磨は目を細めて笑った。

 あれから約三時間後、僕は何故か水着を着ている。ことの発端は授業が終わり、皆がぞろぞろと寮もしくは自宅、もしくは部活に行こうとしていた時のことだ。僕は当然部活なんぞしていないので寮に帰ろうとしていた。

「直ちゃん?何帰ろうとしてるの?」

「何故」

「直ちゃんは水泳部に所属してるでしょ?」

「はぁ?」

「学園長が言ってた」

「マジで入ってねぇぞ」

「まぁまぁ、もともと俺も水泳部に入ろうと思ってたからさ。もう入部届け出しちゃったし」

そうして優磨は僕のことを引き摺り、今の状況に至る。

 「うわぁ、さすが私立。屋内だぁ」

「帰るぞ、僕は」

「だぁめ」

優磨は僕の襟を掴んで離さない。

「君達が新入部員…かな」

僕と優磨は声の主を見る。

「はじめまして、僕は院瀬都 冴翔です。水泳部部長を務めてます。よろしくね」

「はじめまして、僕は鐵垣 優磨です。こちらは御加賀 直人です。よろしくお願いします」

「…」

「そうか、よろしくね。優磨君、直人君。さて、さっそく水泳部を案内しよう」


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