1腐活目♡頬が痛かったのでどうやらこの度転生したもようです
新連載です✎
人は時に…
あり得ない様な状況に陥る事があるのです…
それはどんな状況か…
「アンジェリカ!アンジェリカーーー!!」
そう…
まさかに私…アンジェリカがそんなあり得ない状況に陥っているのです…
♡∼ω∼♡
私の名前は【アンジェリカ】。
アーバン帝国
クライシス侯爵家の長女で10歳の少女である。
10歳にしてすでに輝くミルクベージュの髪に白く透き通る様な肌に淡い水色の大きな瞳、スーっと伸びた鼻に触れたくなる様な唇で特別綺麗な容姿を持っていた。
しかし…
あくまでアンジェリカとは今の私の名前。
今ってどいうこと?
と思われることでしょう…
実は…
私にはもう一つの名前があるのです。
正確に言えば元・名前ですが…
そう。
私、アンジェリカは何を隠そう前世の記憶があるのです。
私の元々の名前な【麻美】。
ピチピチのJKだった。
趣味がDIYで日頃から色々なものをDIYしていた。
私にはDIYの他にも趣味があった。
いや、趣味という言葉では言い表せない程の域に達しているものだった。
そう…
私はこよなくBLを愛す自他ともに認めるスーパー腐女子なのです。
とはいえ元々腐女子だった訳ではありません。
私には3つ上の兄がいました。
兄(以下、きよし)は近所では有名なヲタクでした。
オタクではなくヲタクです。
ガチ中のガチでした。
きよしは暇さえあればアイドルのおっかけやアニメフェスに同人誌のイベントにヲタ芸の開発などに明け暮れていた。
私はそんなきよしを見ていつも「毎度毎度何がそんなに良くて労力を使うんだろうか。ご苦労なこって」と思っていた。
そんなある日、きよしが同人誌イベントに一緒に行く予定だった友達(以下、あつし)が体調を崩してしまい行けなくなったとのことでチケットを無駄にしたくないから私に同行して欲しいと頼まれた。
私は面倒臭いと思いながらもきよしの頼みを聞きあつしの代わりに初の同人誌イベントへ行った。
しかし…
行ったが最後。
私はあっさり同人誌イベントでBLの世界に魅了されてBL沼にまんまと落ちてしまったのだった。
それから私はきよしに負けない程のヲタクになり腐女子生活を謳歌していた。
私がBL沼に落ちるきっかけとなった18禁のBL漫画…【熟れた禁断の果実-R18】通称・うれかじ18を知ってからはこれまではDIYの材料や洋服などに使っていたバイト代を全てうれかじ関係に捧げた。
うれかじ18のイベントがあればすぐに駆けつけた。
うれかじ18グッズはレアグッズまで全て揃えた。
何なら買いそこねたものをふりまアプリで高額でも買った。
私はうれかじ18の箱推しだった為にグッズの量は凄まじかった。
きよしですらも驚く程だった。
そんなある日…
あまりにもグッズや漫画が多く部屋の模様替えついでDIYでうれかじ18棚を改良作成しようと励んだ。
我ながら最高に納得のいくうれかじ18棚が完成してグッズや漫画を全て収納した。
収納具合も文句なしの完璧さだった。
私はそんなうれかじ18棚を1人ニヤニヤしながら見つめていた。
そんな棚をきよしに自慢してやろうと思いながら最後に災害防止の為に棚と天井の間に支え棒を入れようとしたその時だった…
乗っていた脚立が古かったせいか奥の方に支え棒を立てようと思い少し背伸びした瞬間バランスを崩してしまった。
バランスを崩したら最後。
あれよあれよと私の体は軽く宙を舞い勢いよく床に落ちた。
「痛い!」
と思った時には時すでに遅しとばかりに勢いよく落ちた私の振動で支えきれていなかった棚がまるで漫画の様にこれでもかという風に私に向かって倒れてきたのだ。
棚が倒れてきたのと同時に棚に飾ったばかりのグッズや漫画達が次々に私に向かって落ちてきた。
まるで私に構って欲しいと言わんばかりに。
そして結構な重量のある大きめの棚が構って欲しいと言わんばかりに倒れてきてもさすがに受け切れる訳がなかった。
バターーン!
と大きな音と共に私は自分が作った最高のうれかじ18棚の下敷きになり家宝ともいえるうれかじ18グッズと漫画に埋もれて息絶えたのだった…
私は、"息絶える寸前に大好きなものに囲まれて死ぬのも悪くない"
なんて格好のいい事を考えていたのはここだけの秘密だ。
「あぁ、、私は"うれかじ18"の映画化を拝む事も出来ず映画館限定グッズも入手出来なかった、、ちくしょう、、無念過ぎる、、」
それだけが心残りのまま麻美の生涯を終えたのだった…
が、しかし!!
死んだはずの麻美…つまり私は何故が次に目を開けると日本じゃないどこか知らない国の人間として生まれ変わって…つまり転生したのだった。
それがまさに今の私であるアンジェリカだった。
と、ここまでの話を踏まえて冒頭に戻ります。
冒頭で誰かが私の名前を必死で叫んでいたのを覚えていますか?
私の名前を私に向かって必死で叫んでいたのは私を溺愛する親バカ①でアンジェリカの父であるクライシス侯爵家の当主であるデビッド・クライシスです。
父の横でこの世の終わりの様な表情を浮かべていたのが親バカ②であり私の母であるクライシス侯爵夫人のメアリー・クライシスです。
何故2人が血相を変えて私に向かって必死で名前を呼んだか?
それは私が階段を踏み外してまるでパラパラ漫画の様に階段から転げ落ちて驚くほどドンピシャで頭を打ってしまったからです。
完全に頭の打ち方が新喜劇だ。
私はその時頭を打った勢いで自分には前世の記憶がありアンジェリカとして転生したという事実を知ったのです。
まさに今の今!
前世の記憶を思い出したというありえない状況に陥ったのです。
それと同時に私はとんでもないもう一つの事実も知ってしまったのです。
そう…
その事実とは…
私は【アンジェリカ】という名前を聞いてすぐにどうやら前世で沼落ちした"うれかじ18"の世界に転生したということを秒で理解したのです。
正直、階段から転げ落ちて頭に激痛が走り泡を吹いて今にも気を失ってしまいそうなところを自分がうれかじの世界に転生したという事実を目の当たりにしてどうにか意識を保っている状況なのです。
私が"うれかじ18"の世界に?!
これが現実だというのなら誰かに私の頬をつねって貰わないと信じられない状況です。
しかし…
まずは激痛にこれ以上耐えられそうにもないので一旦このまま意識を飛ばさせて下さい。
次に目を覚ました時にもここが"うれかじ18"の世界なのであればその時また考えることにします。
私はそっと目を閉じた…
♡∼ω∼♡
ハッ!
とアンジェリカは目を覚ました。
そしてアンジェリカは天井と見える範囲で周りを見渡した。
「アンジェリカ?!目を覚ましたのか?!大丈夫か?!どこか痛むところはないか?!」
デビッドが血相を変えて今にも泣きそうな表情を浮かべて言った。
「本当に心配したわ、、。アンジェリカが目を覚まさなかったらどうしようと不安で仕方なかったわ」
メアリーが目に涙を浮かべて心配そうに言った。
「お父様、お母様、、ご心配おかけしました。私は大丈夫です、、」
アンジェリカは2人を見てにこりと笑みを浮かべて言った。
(本当に心配かけてごめんね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「良かった。本当に良かった、、アンジェリカにもしもの事があれば私もすぐに後を追っていただろう」
「えぇ。本当に。アンジェリカの居ない世界に生きていても仕方ないものね」
デビッドとメアリーはアンジェリカの頭や頬を優しく撫でながら安心した表情を浮かべて言った。
(いや、さらっと恐ろしい事言わないで?あなた達は侯爵家の当主とその夫人だよ?それ理解してる?)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「頭を打ったんだ。もう少し安静にしていなさい」
デビッドは優しく微笑みながらアンジェリカの頭を優しく撫でながら言った。
「はい」
アンジェリカは小さく頷きながら言った。
「ゆっくり休むのよ」
メアリーが優しく微笑みながら言った。
「はい」
アンジェリカは小さく頷きながら言った。
そして、デビッドとメアリーや同室していた医師がアンジェリカの部屋から出ていった。
部屋に一人になったアンジェリカは天井をじっと見つめていた。
「やっぱり夢じゃなかったんだ、、」
アンジェリカが呟いた。
「私、やっぱり"うれかじ18"の世界に転生したんだよ、、」
アンジェリカは更に呟いた。
「、、、、」
アンジェリカは天井をじっと見つめたまま急に黙りこんだ。
そして…
ムギュッ…
アンジェリカは自分の頬を思い切りつねった。
「いった!」
アンジェリカは目に涙を浮かべて言った。
「痛い、、。痛いということはもー絶対間違いなく現実ってことよね?ヤバい。ヤバすぎるよ。私"うれかじ18"の世界に転生しちゃったよ〜」
アンジェリカは目に涙を浮かべているのにも関わらず目尻をトロンとさせて今にもよだれが垂れそうなほど口元を緩めてニマニマしながら言った。
「ただ、、転生したのがアンジェリカってのが正直手放しに喜べないわけで」
アンジェリカは複雑な表情を浮かべて呟いた。
説明しよう…
私が前世で沼落ちして愛してやまなかったBL18禁漫画《熟れた禁断の果実-R18-》通称・"うれかじ18"は…
皇太子・フィルナンデス
侯爵令息・ロビン
このW主人公二人の禁断の恋を描いた物語だ。
主人公2人に加えて主人公の友人達も主な登場人物として登場する。
ストーリーとしては…
フィルナンデスとロビンが幼い頃からの親友だった。
心優しいフィルナンデスと真面目だがいつもフィルナンデスの側でフィルナンデスを支えるロビンが共に時間を過ごすうちにいつしかお互いに友達以上の感情を相手に抱いている事に気づく。
しかし、お互いの立場的にも同性を愛するという事実を打ち明ける事も出来ずフィルナンデスとロビンはお互いの気持ちを隠したままだった。
しかし、ある事がきっかけでフィルナンデスとロビンはお互いに自分の本当の気持ちを打ち明け合った。
そしてその日フィルナンデスとロビンはお互いの気持ちが最高潮の達して初めて禁断の扉を開き体を重ねたのだった。
しかし、いくらお互い愛し合っていても先に待つのは困難ばかりだった。
特に、2人が気持ちを打ち明けるきっかけとなったフィルナンデスの婚約者でありロビンの義理の妹でもあるアンジェリカの存在が大きかった。
アンジェリカは侯爵家の一人娘で幼い頃から甘やかされて育ったせいか成人を迎える頃には性悪我儘極悪女と呼ばれる程になっていた。
アンジェリカは初めて宮殿でフィルナンデスを見た時にフィルナンデスに一目惚れして自分のものにしたいと思い半ば強制的にフィルナンデスの婚約者となった。
一方でロビンは事故で両親を亡くし両親の友人でもあるアンジェリカの父の配慮で侯爵家の養子となった。
しかし、それをよく思わなかったアンジェリカはロビンに陰で酷い仕打ちを繰り返し続けた。
更にロビンがフィルナンデスと仲がいいことに嫉妬し激怒してロビンを暗殺しようとした。
しかし、フィルナンデスにその事がバレてしまいアンジェリカは愛するフィルナンデスの手によって悲惨な最期を迎えたのだった。
2人の愛を邪魔するアンジェリカがいなくなりフィルナンデスとロビンは2人が幸せになる為にと意を決して2人で駆け落ちし国を出て遥か遠くの国で子供も持ち愛をはぐくみながら末永く幸せにくらしたのだった。
と、ざっくりした"うれかじ18"の内容が上記の感じなのだ。
本当にざっくりとした説明になります。
ざっくりした説明じゃなくなったらもはや私の説明だけで小説を一冊は書ける程になるのでここでは控えさせてもらいます。
そして、ここで問題なのが私が転生したのはあの性悪我儘極悪女のアンジェリカだということだ。
せっかく"うれかじ18"の世界に転生したのによりにもよってアンジェリカとは…
転生して数年後にはまた死ぬとか乙すぎるでしょ?!
いや、でも推しに殺されるのならそれもありか!
いやいや…せっかくこんな最高最強な世界に転生して死ぬとかなし!
どうせならモブとかに転生して"うれかじ18"の箱推し生活を堪能したかった。
「、、、、ん?」
アンジェリカは一人表情をコロコロ変えながら考えていたがふと真顔になり言った。
「いや、、アンジェリカもありか」
アンジェリカはニヤリ笑み浮かべて言った。
「何ならアンジェリカとしての方がモブキャラより箱推し生活堪能できるんじゃない?」
アンジェリカは更にニヤリと笑み浮かべて言った。
「だってまずアンジェリカはロビンの義理の妹になる訳だからその時点で優勝。更にフィルナンデスの婚約者でもあるか大優勝じゃない?」
アンジェリカは目を輝かせながら言った。
「それに要は私が2人の愛の育みを邪魔しなきゃ無惨に殺されないってことでしょ?」
アンジェリカは一人納得した様に頷きながら言った。
「そもそも私は2人の邪魔をする気なんてないし、むしろ温かい目で2人を見守り2人の絡みを存分にこの目で生拝みしたいだけだしね」
アンジェリカはニヤニヤしながら言った。
「フィルナンデスとロビンの禁断の絡みが生で見れる、、。あ、でも2人が自分の気持ちを打ち明けるのってアンジェリカがフィルナンデスとの婚約を無理矢理させたのが原因だったよね?フィルナンデスがアンジェリカとの婚約が耐え難いものだったからロビンに相談したことがきっかけでお互いの気持ちを打ち明けたんだったね」
アンジェリカが漫画の内容を思い出しながら言った。
「て、ことはやっぱりフィルナンデスとの婚約を成立させなきゃ2人のがお互いに気持ちを打ち明けて禁断の扉を開くことはないってこと?!いやそれはまずい。何なら"うれかじ18"ヲタクとしてもスーパー腐女子としてもそこが拝めないなんておろしうどんにおろしが乗っかってないくらいありえない、、いいえ、、月見バーガー頼んだのに食べようと思ったら主役の月見である半熟目玉焼きが入ってなかった時レベルでありえない」
アンジェリカがゾッとした表情を浮かべて言った。
「"うれかじ18"の中の名場面No.1とも言えるあの2人が初めて体を重ねて禁断の扉を開くあの瞬間を拝めなかったらこの世界に転生した意味すらない。でもフィルナンデスと婚約したら死亡フラグ立つしフィルナンデスとロビンが幸せになれない。WIN WINになるにはどうしたらいいの?」
アンジェリカは頭を抱えながら言った。
「あっ、そっか。私が上手いことフィルナンデスと婚約もせずフィルナンデスとロビンにお互いの気持ちを打ち明けれる環境を作ってあげたらいいんだわ」
アンジェリカはポンっと手を軽く叩きながら言った。
「な〜んだ!頭抱えて損しちゃったよ」
アンジェリカは困り笑みを浮かべて言った。
「よし!そうと決まれば私はこれからアンジェリカとして惜しみなく腐女子生活を謳歌するわよ〜♫」
アンジェリカはバンザイしながらニヤニヤして言った。
「今の私は10歳でロビンが13歳だからロビンがこの家に養子としてやってくるのは今から4年後のロビンが17歳になった年でちょうどその年に同じくフィルナンデスを初めて見た私がフィルナンデスに一目惚れするんだったよね」
アンジェリカは漫画の内容を思い出しながら呟いた。
「そして私ことアンジェリカの性悪我儘具合に拍車がかかるのはアンジェリカが12歳頃からだったから今から2年後か、、。今はまだお嬢様の我儘が過ぎる〜くらいレベルだもんね。この辺で前世の記憶思い出して良かったわ。今ならまだ我儘っぷりの汚名返上できるしね。どうせこの世界を謳歌するから屋敷の使用人達とは仲良くしたいしね。まぁ私がアンジェリカになった以上性悪我儘極悪女のあだ名をつけられる事はないからそこは特に問題なし。てことでこれから数年は私の好きな様に腐女子生活を謳歌できる〜」
アンジェリカは満足気に微笑みながら言った。
こうして麻美改め新生アンジェリカは"うれかじ18"の世界で腐女子生活を開始したのだった。
♡∼ω∼♡
アンジェリカは腐女子生活を謳歌する為にまずは屋敷の使用人達と仲良くする為に行動を開始した。
初め使用人達は急に態度が変わったアンジェリカに戸惑いを見せていたがある日アンジェリカが厨房で頭を悩ませていた料理長の悩みを完璧に解決したことであっという間に使用人達とアンジェリカの距離が縮まるきっかけとなった。
そのアンジェリカが解決した料理長の悩みとは…
厨房内にある食品を管理する為の棚と食器棚に物が溢れ返り作業効率が悪くなってしまっている事だった。
何度整理してもすぐに物が溢れる事で食器は取りにくいし食品管理にも時間を要するようになったという悩みだった。
そんな料理長の悩みを耳にしたアンジェリカはすぐに前世の記憶を活かして持ち前のDIYの腕を最大限に奮って厨房に完璧な棚をアンジェリカ1人で作り上げたのだった。
この世界では家具などを作るのは職人の専門仕事だったので貴族令嬢ましてや10歳の少女が1人で作るなど前代未聞だった。
アンジェリカが完成させた棚は利便性や厨房に合ったデザインどちらも重視してあるものだった。
この世界にはない機能も搭載して棚を作り上げたお陰で料理長の悩みは一瞬にして解決したのだった。
(私が前世で築き上げたDIYの腕前はそんじょそこらの職人にだって負けないわ。なんてたって"うれかじ18"グッズを完璧に収納する為に更に腕を磨いたんだからね。、、あぁ、、私の作ったうれかじ18棚は今頃どうなったのかな、、。私が死んだあともお母さんはちゃんと棚を残してくれてるのかなぁ、、。もしかしたらきよしが自分のヲタグッズ収納に使ってたりして。笑)
アンジェリカは自分が作った厨房の棚を見てそんな事を考えていた。
※実際にアンジェリカが前世で作り上げたうれかじ18棚は現在麻美の兄のきよしが自分のヲタグッズを収納する為に使っていたのだった。
あまりにも神技を見せたアンジェリカに料理長を始めとした使用人達がアンジェリカを絶賛した。
アンジェリカの神技の話は屋敷内にすぐさま広がりアンジェリカは屋敷内のDIYを必要とする場所にあるもの全てを出来る範囲でDIYを施工したのだった。
そのお陰でアンジェリカと使用人達はとてもフレンドリーな関係を築くことが出来たのだった。
もちろんアンジェリカを溺愛するデビッドとメアリーはDIYの腕前を発揮するアンジェリカを見て
「我が屋のアンジェリカは天才だ〜!!」
と大騒ぎして謎のお祝いまでしたのは言うまでもなかった。
アンジェリカ自身もまさか現世でDIYが出来るなんて思ってもなかったので予想外のテンションの上がる出来事にご満悦だった。
そして…
更にアンジェリカと使用人達の距離が縮まった理由としてアンジェリカの大好物が関係していた。
それは…
御者のムスカと庭師の1人のオルンが同性の恋人同士だということだった。
つまり…アンジェリカの大好物のBL案件だった。
アンジェリカがDIYを必要している場所を探している最中にたまたま馬小屋でムスカとオルンがこっそり抱き合いキスをしているところを目撃したのだった。
「あなた達、、そんな今何をしていたの?」
アンジェリカは驚いた表情を浮かべてムスカとオルンへ言った。
「ア、アンジェリカお嬢様!?」
ムスカが顔を真っ青にして驚き言った。
「こ、これは、その、、」
オルンが顔を真っ青にして表情を強張らせながら混乱して言った。
「、、アンジェリカお嬢様、、私が悪いのです。私がオルンへここに来る様に言ったのです」
ムスカが表情を強張らせながらも言った。
「ち、違います。アンジェリカお嬢様、私がムスカへここへ来る様に言ったのです。ですので罰なら私にお与え下さい」
オルンが慌てて言った。
「オルン、、。いえ、罰を与えるなら私に、、」
ムスカも慌てて言った。
「、、あなた達、、先程抱き合いキスをしていたのは間違いないのね?それを認めるということね?」
アンジェリカが真剣な表情を浮かべて2人へ言った。
アンジェリカの言葉にムスカとオルンは戸惑いと困惑の表情を浮かべて言葉が出なかった。
しかし…
「はい。認めます。アンジェリカお嬢様がご覧になった通りです。私はオルンとそういう関係なのです」
沈黙を破りムスカが意を決して真剣な表情を浮かべて言った。
「ムスカの言うとおりです。私達はお互いを想い合っています」
オルンも意を決して真剣な表情を浮かべて言った。
「我々の行動はクライシス侯爵家の使用人としてあるまじき行為です。どのような罰でもお受けします」
ムスカが真剣な表情を浮かべて言った。
「私も同じ意見です」
オルンも真剣な表情を浮かべて言った。
「あなた達の言い分はわかったわ」
アンジェリカが下を向きつつ呟いた。
そんなアンジェリカを見てムスカとオルンは覚悟を決めた表情を浮かべた。
だが次の瞬間…
「それって最高じゃない?!」
するとアンジェリカは目をギンギンに輝かせて勢いよく言った。
「はい?」
「え?」
ムスカとオルンは予想外のアンジェリカの言葉と表情に驚きのあまり豆鉄砲を食らったかの様な表情を浮かべて言った。
「だから〜最高じゃないって言ったの!」
アンジェリカは目を輝かせたまま笑顔で言った。
「えっと、、怒ってらっしゃるのでないのですか?」
ムスカが驚いた表情のまま言った。
「怒る?どうして?怒る要素なんて一つもないのに?」
アンジェリカはきょとんとした表情を浮かべて首を傾げて言った。
(こんな大好物の優良案件を目の前に怒るですって?!そんなのありえないわ。ここにきよしとあつしがいたら「今日の〜あなたは〜いい波乗ってんね〜♫」って歓喜のヲタダンス踊ってるくらいの最高の状況だよ?)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「え?でも、使用人として働かせて頂いてる身分な上に男同士で抱き合いキスをするなど気持ち悪いのでは?」
オルンが戸惑った表情を浮かべて言った。
「いや、人を好きになるのに身分も男も女もないでしょう?私はあなた達の恋を応援するわ」
アンジェリカは目を輝かせて満面の笑みを浮かべて満足そうに言った。
(うひゃぁぁ〜腐女子生活謳歌しようとした矢先からまさかこんな最高なhashasシチュエーションに遭遇するなんて"うれかじ18"はモブキャラ達までBLを徹底してたのね。作者は読者の気持ち汲んでくれてるわ。漫画を読んでるだけじゃこんなモブの細かい設定まで分からなかったから最高過ぎてこの2人にご祝儀包みたい気分だよ。こんな身近でBLの画を拝めるなんて先に見えるのは最高以外何でもないじゃないの)
アンジェリカは内心悶々しながら目の前の現実を噛み締めながらそんな事を考えていた。
「わ、私達を応援ですか?!」
「アンジェリカお嬢様がですか?!」
ムスカとオルンは何が何だかわからず驚きと戸惑いを隠せないまま言った。
「えぇ。男性同士だからって恋を諦めるなんてよくないもの。相手を想う気持ちを大切しないとだもの」
アンジェリカは微笑みながら言った。
(そしてもっと私の腐女子生活に華を咲かせてちょうだいな)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「アンジェリカお嬢様、、」
「まだ10歳だというのに何という寛大なお心をお持ちで、、」
ムスカとオルンは感動を覚えたような表情を浮かべつつ言った。
「これからは私の前では2人の仲(絡み)を隠す必要はないわ」
アンジェリカがニヤニヤするのを懸命に堪えながら笑みを浮かべて言った。
「ありがとうございます。アンジェリカお嬢様」
「アンジェリカお嬢様、ありがとうございます」
ムスカとオルンは嬉しそうに笑みを浮かべて言った。
(あぁ、、BLカップルの微笑み、、優勝、、)
アンジェリカは内心は仏に拝む様にそんな事を考えていた。
「2人の関係を知っている人は他にいるの?」
アンジェリカが言った。
「実は、、御主人と奥さま、アンジェリカお嬢様以外は皆知っているのです」
ムスカが気まずそうに言った。
「え?!使用人皆が知っているの?!」
アンジェリカは驚き言った。
(まさか使用人皆が知ってたなんてね。でもまぁ、、その方が私には都合がいいよね。私が容認したのなら今までみないに私やお父様達に隠れてこそこそ密会をする必要はなくなったんだし。これからは屋敷内で存分に2人の絡みが見れるわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「はい。他の使用人達は私達の為に黙っていてくれていたのです」
オルンが申し訳なさそうに言った。
「そうだったのね」
アンジェリカが言った。
(他の使用人はともかく執事のミゲルフも私の専属侍女のレベッカも知ってて黙ってたなんてね。水くさいったらないわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「これからは肩身の狭い思いをしながら密会なんてやめなさいね。堂々としていればいいのだから」
アンジェリカは優しく微笑みながら言った。
「「はい」」
ムスカとオルンは感動した表情を浮かべて言った。
(よし!これで屋敷内の腐女子生活向上に向けての仕込みはOKね。この際だからお父様とお母様にも2人の仲を容認してもらおうかしら?その方が更に2人ともオープンになれるだろうしね)
アンジェリカはニヤリと笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
そして、その後アンジェリカ思い立ったら即行動といわんばかりにデビッドとメアリーに会いに行きムスカとオルンの件を話した。
すると…
「アンジェリカがいいと思うなら私もそれでいいぞ」
「えぇ。私もそれで構わないわ。恋愛なんて個々の自由ですもの」
とデビッドとメアリーはあっさりと笑顔で首を縦に振ったのだった。
(この夫婦大丈夫なの?!私としてはかなりありがたいんだけどいくら溺愛してる娘の提案とはいえこんなにも秒でOKだすとか侯爵家の体裁もへったくれもないじゃないの。何かこっちが心配になるわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
こうしてDIYに加えて同性愛に対して寛大な対応をした上に当主と夫人の許可まで得たのもあり使用人達はアンジェリカの印象ががらりと変わりアンジェリカは計画通りに使用人達とフレンドリーの輪を深めたのだった。
「さて、とりあえずムスカとオルンの馴れ初めとかラブラブ話を聞いてノートにでも書き記して後でそれを読み返すとしますか!」
アンジェリカはそう言うと1人ニヤニヤしていたのだった。
♡∼ω∼♡
アンジェリカが前世の記憶を思い出してこの世界で腐女子生活を謳歌し始めてからあっという間に半年が経過した。
半年間アンジェリカ毎日腐女子生活を謳歌していた。
ムスカとオルンは相変わらずラブラブだったのでアンジェリカは垂れ流れそうなよだれを必死に堪えて悶々しつつ興奮しながら2人の絡みを拝んでいた。
更に、ムスカとオルンが行きつけにしている酒屋(BL宝庫)があるとの話を聞きアンジェリカはこっそり店の外から酒屋の中にいるそれぞれのBLカップルを拝んでいた。
アンジェリカは日々"うれかじ18"の世界に転生した事が本当は夢ではないかと思いつつも現状に大満足していたのだった。
そしてこの日、アンジェリカはデビッドとメアリーと共に宮殿で開かれる貴族が集まる皇太后主催のちょっとしたパーティーへ招待されていた。
「アンジェリカお嬢様は今日も可愛らしさが溢れていらっしゃいますね」
アンジェリカの専属侍女のレベッカが笑みを浮かべて言いながらアンジェリカの髪の毛を整えていた。
「レベッカったら毎日同じ事を言って飽きないの?」
アンジェリカは呆れた表情を浮かべて言った。
「はい。飽きないどころか何度言っても言い足りませんね」
レベッカはどや顔を浮かべて言った。
アンジェリカは忘れていた事があった。
それは…
アンジェリカの専属侍女であるレベッカは両親に負けない程のアンジェリカLOVEだということを。
アンジェリカは"うれかじ18"のヒロインでも何でもないからレベッカの事も漫画のストーリーの中での登場シーンは決して多くはなかったがレベッカはアンジェリカが幼い頃から侍女として仕えていた。
レベッカは元・敏腕の殺し屋だった。
任務遂行中に仲間の裏切りに遭い死にかけていたところをデビッドに助けられた。
その後、レベッカはデビッドとメアリーに命を助けられとして命をかけてクライシス侯爵家に仕える事を誓った。
レベッカに与えられた仕事はまだ3歳だったアンジェリカの専属侍女となりアンジェリカを守ることだった。
レベッカが初めてアンジェリカと顔を合わせた時にアンジェリカは天使の様な笑みを浮かべてレベッカの手を握ったのだった。
その瞬間からレベッカは命に変えてもアンジェリカを守ると誓った。
レベッカはアンジェリカがどれだけ我儘を言うと性悪我儘極悪女と呼ばれようとも絶対にアンジェリカの味方だった。
その上ロビンの暗殺にも自ら手を貸すほどアンジェリカへの忠誠は凄かった。
それほどレベッカはアンジェリカを大切に思っていたのだった。
結局そんな彼女もロビンの暗殺に加担した事でアンジェリカと共に処刑されたのだ。
("うれかじ18"の世界に転生したことでうかれてレベッカの存在を軽く流してたけど本当に漫画の内容通りにアンジェリカLOVEなのよね。元・暗殺者のレベッカもきっと色々な辛い過去だったりがあるでしょうにそれでも最後までアンジェリカから離れなかったんだよね。それに何より私がレベッカと過ごす時間の中でレベッカがどれだけ私を大切に思ってくれるか分かるしね。だからLOVEが強くても許せちゃうのよね)
アンジェリカは鏡越しにレベッカを見てふっと笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
「それにしても、、皇太后様主催のパーティーだというのにデビュタントも終えてない私も招待されるなんてね、、」
アンジェリカが言った。
「そうですね。宮殿で開かれるパーティーやお茶会は基本的にはデビュタントを終えていないご子息やご令嬢は招待されないはずなのですけど」
レベッカは首を傾げながら言った。
("うれかじ18"の漫画はアンジェリカがフィルナンデスと出会うより少し前からストーリーが始まったからこの時期の内容なんて回想シーンでもまったく描かれてなかったけどアンジェリカはフィルナンデスに初めて宮殿で会うより前に皇太后主催のパーティーでアンジェリカは宮殿へ行ったことがあったの?でもそこではフィルナンデスには遭遇しなかったってこと?う〜ん、、わかんないなぁ。でも、貴族が集まるならもしかして漫画の描写よりも幼いフィルナンデスとロビンが見れるかもしれないってこと?!それはそれで激熱案件じゃない?!)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「皇太后様もお年をめされて人と話す機会が減ったからパーティーでも開いて楽しい時間でも過ごしたいのかもしれないわね」
アンジェリカが言った。
(ご老人って歳を増すとスーパーとか道端でもお互い初対面だとしても何となくお互い話し相手ができて仲良くなってそれが楽しみになるって聞くしね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「そうかもしれませんね。皇太后様も前皇帝陛下がお亡くなりになられて皇太后になられてからは公共の場へ顔を出される回数も減ったとお聞きしますし」
レベッカは頷きながら言った。
「そうなのね」
アンジェリカが言った。
「まぁ、今日はせっかくだし美味しいパーティー料理やお菓子を堪能してくるわ」
アンジェリカは笑顔で言った。
(もちろんあわよくば幼いフィルナンデスとロビンをこっそり拝んでくるけどね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「私はアンジェリカお嬢様に変な虫がつかないか心配でたまりません」
レベッカが困った表情を浮かべて言った。
「そんな虫なんてつかないから大丈夫よ。それにお父様とお母様が一緒なんだから余計にそんなことないわよ」
アンジェリカが苦笑いを浮かべて言った。
(あの2人が私に男たちを近づけると思う?ありえないでしょ?)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「あっ、それもそうですね。ご主人様と奥さまがご一緒なら虫がきても目で殺してくれますね」
レベッカは満面の笑みで言った。
(言葉選びよ。本当に両親もレベッカもさらっと笑顔で恐ろしい事言うから恐ろしいったらないわ)
アンジェリカは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「そうよ。だから心配ないわ」
アンジェリカが困り笑みを浮かべて言った。
「はい」
レベッカは笑顔で言った。
「私がいない間のムスカとオルンの今日の2人様子をまた帰ってきたら教えてね」
アンジェリカは笑みを浮かべて言った。
「お任せ下さい!」
レベッカは満面の笑みで言った。
そして、支度を終えたアンジェリカはデビッドとメアリーと共に宮殿へと向かったのだった。
そしてクライシス侯爵領から馬車に乗ること2時間程で首都へ到着した。
首都の街から30分程の場所にある宮殿へとアンジェリカ達の乗る馬車が到着した。
「うわぁぁ」
アンジェリカは馬車から降りると宮殿を見上げて言った。
(これが"うれかじ18"の聖地と言っても過言じゃないあの宮殿だわ。初めてフィルナンデスとロビンがお互いの気持ちを打ち明ける場所でもあるんだよね。生で聖地拝めるとかもー今死んでも後悔はないくらい神適状況)
アンジェリカは宮殿を見て幸せを噛み締めながらそんな事を考えていた。
「アンジェリカ、そんなに宮殿が素晴らしい?」
メアリーが微笑みながら言った。
「はい。お母様。とても素敵です」
アンジェリカは満面の笑みを浮かべて言った。
(そりぁ聖地なんだから素敵と最高以外ないよ?)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「そうか。アンジェリカが気に入ったのならば私が陛下にお願いして宮殿を譲ってもらおうか」
デビッドは笑みを浮かべて言った。
(はい?私の聞き間違い?宮殿を譲ってもらう?いやいやさらっとヤバい発言するのやめよ?しかも宮殿で堂々とそんな発言するとか命惜しくないの?)
アンジェリカは呆れた表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「いえ、、こうして見ているだけが一番素敵と感じるのでこうして見ることが出きたたけで十分です」
アンジェリカは苦笑いを浮かべて言った。
「そうか?それなら譲ってもらう必要はないな」
デビッドは笑顔で言った。
(そうですともそうですとも)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「はい」
アンジェリカは困り笑みを浮かべて言った。
そして、その後アンジェリカ達はパーティーが行われる皇太后宮の庭へ向かった。
まもなくして皇太后と皇帝、皇后、第二皇子が現れた。
(あれ?フィルナンデスはいないのかな?せっかく漫画に描写されてはいフィルナンデスが拝めると思ったのに。あのちっこい皇子はフィルナンデスの弟の、、オルシアンだったよね)
アンジェリカは皇太子であるフィルナンデスの姿が見えず残念に思いつつそんな事を考えていた。
第二皇子オルシアン。
歳はアンジェリカと同じ10歳だ。
"うれかじ18"ではほとんど登場シーンはなかったがオルシアンはフィルナンデスとロビンが駆け落ち同然で国を出たことで彼が新たに皇太子となったのだ。
(オルシアンはフィルナンデスとロビンの関係を密かに知っていたんだったよね。だけど兄を慕っていたオルシアンはその秘密を誰にもバラす事なく最後までフィルナンデスとロビンの関係を陰ながら見守っていたんだよね。だから2人が駆け落ちした後にフィルナンデスの幸せを願いながら皇太子としての責務を全うすることに決めたんだよね)
アンジェリカはオルシアンを見てそんな事を考えていた。
(なんて、、素敵な兄弟愛なのよ。最高か!オルシアン。私はあなたの愛に投げ銭するわ)
アンジェリカは1人勝手にジーンとなりながらそんな事を考えていた。
そんなアンジェリカをオルシアンがじっと見ていたが1人勝手に感銘を受けていたアンジェリカはその視線に気づくことはなかった。
その後、アンジェリカはデビッドと達と共に皇族たちへの挨拶をした。
「皇帝陛下、皇后陛下、第二皇子殿下ならびに皇太后陛下にご挨拶申し上げます」
デビッドが言った。
「ご挨拶申し上げます」
続けてメアリーが言った。
「よく来てくれたな」
皇帝であるユリウスが笑顔で言った。
「あぁ、、はい」
デビッドが面倒臭そうに言った。
(ちょっと!父よ!皇帝に向かって何ちゅう態度取るのよ!死にたいの?!)
アンジェリカはギョッとした表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「ハハ、、デビッドは相変わらずだね」
ユリウスが笑顔で言った。
「本当ね」
ユリウスの横にいた皇后のカシアが微笑みながら言った。
(いやいやあなた達も笑い事じゃないでしょ?あなた達はこの国のトップオブトップだよ?前世だったらトップにこんな無礼な態度とったらクビだよ?)
アンジェリカは更にギョッとしてそんな事を考えていた。
そんなユリウスとカシアにデビッドはツーンとした態度を取っていた。
(父よ!いい加減にしてくれ!)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「驚かせてしまったかな?クライシス令嬢は初めましてだよね?」
ユリウスが優しく微笑みながらアンジェリカへ言った。
(うっ。何て眩しい微笑みなの?!さすがは主人公の父親ね。脇役レベルなのにこのオーラと美!それに加えてフィルナンデスと同じく優しい人柄が滲み出てる)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「皇帝陛下、皇后陛下、第二皇子殿下ならびに皇太后陛下にご挨拶申し上げます。お初にお目にかかりますクライシス侯爵家のアンジェリカ・クライシスです。本日はデビュタントも済んでいない中招待頂きありがとうございます」
アンジェリカは綺麗なカーテシーをしながら挨拶をした。
「クライシス令嬢は容姿が美しいだけではなく礼儀作法もしっかりしているんだね」
ユリウスは感心しながら笑顔で言った。
(デビッド達に甘やかされ育って我儘ばかり言う娘だという噂を耳にしたことがあったけれどどうやら噂は噂でしかないみたいだね。何ならデビッドが私達に会わせない為にそんな噂を流したのかもしれないね)
ユリウスはアンジェリカを見てそんな事を考えていた。
※ピポーン!正解!
アンジェリカが我儘令嬢だという噂を流したのは実は父親であるデビッドだった。
アンジェリカに変な虫がつかない様にあえてそんな噂を流して周りを牽制していたのだった。
アンジェリカはその事実を知らぬままだった。
「本当ね。クライシス令嬢はオルシアンと同い年だけれどとてもしっかりされているのね」
カシアも感心しながら笑みを浮かべて言った。
(噂とはまったく違う令嬢ね。この夫婦の元で育ってよくこんなにまともに育ったわね。きっとデビッド達は令嬢を気持ち悪い程に溺愛してるでしょうからね)
カシアはアンジェリカを見てそんな事を考えていた。
「娘をどれだけ褒めても娘はやらんからな。本当は今日だってアンジェリカを連れてきたくなかったが、、」
デビュタントが不満気にブツブツと呟いていた。
(ちょっと本当に静かにしてよ!どれだけ命知らずなの?!)
アンジェリカはデビッドをギョッとした顔で見ながらそんな事を考えていた。
(お母様どうにかして)
アンジェリカはそんな事を考えながらメアリーに助けを求める目で訴えようとメアリーを見た。
しかし、メアリーはデビッドの呟く言葉にうんうんと頷いていた。
(って、お母様もなの?!娘を溺愛するのはいいけど娘を危険に晒す様な事はやめてくれませんかね?)
アンジェリカはギョッとしたままそんな事を考えていた。
「ハハ。デビッド、クライシス令嬢が驚いてるよ?」
ユリウスはクスクス笑いながら言った。
「クライシス令嬢驚かせて申し訳ないね。どうやらデビッドやメアリーからは何も聞いていないみたいだね」
ユリウスが笑いながら言った。
(どゆこと?)
アンジェリカはきょとんとした表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「私とデビッド、皇后とメアリーは幼なじみなんだよ。だからデビッドもメアリーも私達に対してクライシス令嬢が驚くほどの態度を普通にとっているんだよ。今は周りの者に会話が聞こえていないだろうから特にデビッドの発言を罰したりしないから安心するといいよ」
ユリウスは優しい笑みを浮かべて言った。
「そう、、だったのですね」
アンジェリカは納得した表情を浮かべて言った。
(はぁ、、マジで寿命縮んだよ?陛下達と幼なじみなんだったらその話しといてくれないと私は心臓口から出るくらい焦ったよ?ていうか、"うれかじ18"ではお父様とロビン父が友達だっていうことは描写されてたけど陛下と幼なじみなんて書いてなかったよね?そういう大切なことは描写しとかないとだめだよ?作者さん!ていうかこの流れだとロビン父とも友達っていうか間違いなく幼なじみな感じだよね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
※ピポーン!御名答!その通りデビッド、ユリウスそしてロビンの父であるジョーディーは幼なじみです。
ちなみにロビン母のマリサもメアリーとカシアと幼なじみです。
「クライシス令嬢が生まれた時に私は息子しかいないものだから将来私の息子達のどちらかのお嫁さんになって義理の娘になって欲しいと言ったらデビッドがその日以来クライシス令嬢に会わせてくれなくなってね、、。その発言がデビッドの機嫌を損ねてしまったんだよ」
ユリウスはクスクス笑いながら言った。
(そこ笑うとこじゃありませんよ。国のトップがこんな柔らかくて大丈夫かと心配になるわ。というか残念ながらお父様の肩を持つわけじゃないけど私があなたの息子達と結婚なんてありえないですから。フィルナンデスとオルシアンどちらと結婚しても先に見るのは誰かが不幸になるしかないからね。それにそんな事をして私の腐女子生活をパーになんてしたくないしね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「今日だって皇太后陛下からの招待じゃなければアンジェリカをここへ連れてなど来なかった」
デビッドは不満気に言った。
「それならば母上に感謝せねばならないね。10年ぶりに幼なじみの愛娘に会えたのだから」
ユリウスは微笑みながら言った。
「そうね」
カシアも微笑みながら言った。
「まったくよくあなた達みたいな親の元で令嬢はしっかり立派に育ったものね」
皇太后であるアナスタシアが呆れた表情を浮かべて言った。
「はい。皇太后陛下の仰る通り我が娘のアンジェリカは大変立派で帝国一美しく育っております」
デビッドは自信満々に誇らしげな表情を浮かべて言った。
メアリーはデビッドの言葉に誇らしげにうんうんと頷いていた。
(え?何?この親バカ公開処刑は)
アンジェリカは恥ずかしくなりそんな事を考えていた。
「アンジェリカは10歳にして、、ペラペラペペラペラ、、」
デビッドが何かのスイッチが入ったかの様にアンジェリカの自慢話をし始めた。
(親バカすぎるこの人を誰か止めて、、あぁ〜自分の自慢話を目の前でされて恥ずかしすぎる。穴があったら入りたいよ)
アンジェリカはギョッとした表情でそんな事を考えていた。
「お父様、、他にも挨拶をされていない方が沢山いらっしゃるのでお話はその辺にして下さいませんか?」
アンジェリカは恥ずかしさをグッと堪えてデビッドへ引きつり笑みを浮かべて言った。
「あぁアンジェリカ。どうして私の娘はこんなにも気遣いができる素晴らしい子なんだ」
デビッドは目を輝かせて言った。
(もう本当に恥ずかしすぎてやばいんだけど。"うれかじ18"ってBL漫画だよね?実は何かやばい裏設定のある漫画じゃないよね?脇役達がこんなぶっ飛んでるなんておかしすぎるでしょ?)
アンジェリカは困惑気味にそんな事を考えていた。
アンジェリカはこの場から早く離れたいと思いユリウスやカシアに助けを求めようと見るも2人と微笑ましい表情を浮かべているしオルシアンは笑いを堪えてるしで勘弁してほしかった。
その時…
(あれ?あれは、、)
アンジェリカの目にふとある物が目に入った。
「皇太后陛下。あちらにあるのはロッキングチェアですか?」
アンジェリカがアナスタシアにすぐ後ろに置いてあった椅子へ手をかざしながら言った。
「ん?えぇ。私のお気に入りの椅子なのよ。ロッキングチェアは他国から取り寄せた椅子なのによく名前を知っているわね」
アナスタシアは感心した表情を浮かべて言った。
「あ、はい。本で見かけた事がありまして」
アンジェリカは慌てて笑みを浮かべて言った。
(本は本でも"うれかじ18"という最高の18禁BL漫画ですけどね。ロッキングチェアを知らない訳がない。前世では当たり前に売ってたから。だけどあのロッキングチェアは特別。だってあのロッキングチェアはフィルナンデスが皇太后様から贈り物として受け取った物だし何よりあの上でフィルナンデスとロビンが月夜の光の差し込む暗い部屋で激しく絡むシーンがあるんだから。どうしよう。あのシーンのあのロッキングチェアを生で見れた事が感激すぎて興奮がおさまらない。あの絡みのシーンは描写がエロいのに美しさもあるシーンだったから何回あのシーンを読んだことやら)
アンジェリカは内心興奮していたがその興奮を抑えながらそんな事を考えていた。
「そう。クライシス令嬢はとても物知りなのね。ロッキングチェアの事を知っている子がいるなんて嬉しいわね」
アナスタシアはふっと笑みを浮かべて言った。
(こちらこそです。あの名シーンに出てくるロッキングチェアを拝むことができてそれだけでW主人公の幼少期が拝めなくても今日ここへ来た甲斐がありました。無事に回収できました。ありがとうございます)
アンジェリカは満足気にそんな事を考えていた。
「嬉しいお言葉ありがとうございます」
アンジェリカは微笑みながら言った。
「今日は楽しんで帰ってちょうだいね」
アナスタシアは優しく微笑みながら言った。
「はい。ありがとうございます」
アンジェリカは微笑みながら言った。
(皇太后様とフィルナンデスって何となく雰囲気似てる気がするな。そういえばフィルナンデスはどうしていないんだろう?)
アンジェリカはふとそんな事を考えていた。
その後、ペラペラ娘自慢を喋ろうとするデビッドを阻止してユリウス達の元から離れた。
「ねぇお父様。今日はどうして皇太子殿下はいないの?」
アンジェリカがデビッドへ言った。
「さぁね。どうしてだろうな、、アンジェリカは皇太子殿下に興味があるの?」
デビッドが笑みを浮かべて言った。
(お父様、目が笑ってないから)
アンジェリカはデビッドの表情を見てそんな事を考えていた。
「いえ別に興味があるわけではなく体調など崩されているのかと心配になっただけです」
アンジェリカは困り笑みを浮かべて言った。
(本当は大ありなんですごめんなさい。むしろそっち目当てなんです)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「そうか。それならいいんだ。皇太子殿下はアンジェリカが興味を持つ程の方ではないからね」
デビッドはパァッと笑みを浮かべて言った。
(だからさらっと怖いこと言わないで)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
その後、沢山の貴族がアンジェリカ達の元へやってきては挨拶を交わしたり話をしたりした。
超がつくほどの娘溺愛親バカなデビッドとメアリーだったがクライシス侯爵家は皇族に負けない程の権力や財力があった。
それにより機嫌を取ってくる貴族達は少なくなかった。
デビッドもメアリーもアンジェリカには甘いが外の顔は甘いものではなかった。
(入れ替わり立ち替わり挨拶に中身がない雑談で疲れたな、、。それにこんだけ貴族がわんさかいるのにロビンの家であるアイシタン伯爵家の人たちの姿がないのね。フィルナンデスには会えなかったけどロビンには会えると思ってたのに残念だな)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「お父様、お母様。私少し疲れたのであちらでお菓子を食べながら少し休んできていいですか?」
アンジェリカがデビッドとメアリーへ言った。
「疲れたのか?それは大変だ。今すぐ休んできなさい」
デビッドが慌てて言った。
「あそこなら誰もいないからあそこへ座って休むといいわ」
メアリーは心配そうに言った。
「分かりました。ありがとうございます。では少し休んでいますね」
アンジェリカはホッとした表情で言った。
そしてアンジェリカがメアリーが手かざしした椅子の方へと歩いて向かった。
その道中他の貴族の令息達がアンジェリカに声をかけようとしていたが皆急に怯えた表情を浮かべてアンジェリカの周りから足早にいなくなった。
(ハハハ、、見なくてもわかるわ。間違いなくお父様とお母様があの令息達を睨み殺しにしてるんだろうね。ね?レベッカ。虫なんて寄ってこないから大丈夫だって言ったでしょう?)
アンジェリカは歩きながら苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
そしてアンジェリカはお菓子を少しだけお皿に取り椅子へ座って食べて一息ついた。
(はぁ、、。早く帰りいな。ロッキングチェアは拝めたしフィルナンデスにもロビンにも会えそうにないからね)
アンジェリカはお菓子を食べながらそんな事を考えていた。
その時…
周りをキョロキョロと気にしながらこっそり庭から少し離れた場所にあった茂みの様なところへこそこそと令息らしき人物が2人入っていった。
ピコーン!!
その2人を見たアンジェリカは大好物センサーが発動した。
(あの2人もしかしてもしかするんじゃない?)
アンジェリカはニヤリとしてそんな事を考えていた。
そしてデビッドとメアリーを見た。
(よし!お父様もお母様も話を夢中。チャンスだわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
そして残っていたお菓子をハンカチに包むとそれを持って令息達の後を追った。
2人の後を追ったアンジェリカは茂みの深い場所へと入り込んだ。
そこに先程の令息2人がいた。
(いた!)
アンジェリカは2人を見つけると音を立てずそっと会話が聞こえる距離のところまで近づいた。
「もう限界だ」
1人の令息が頭を抱えながら言った。
「俺も限界だった。辛かったよ」
もう1人の令息も辛そうな表情を浮かべて言った。
「家同士の事とはいえあんな化粧臭い女とこれからも会わなければならないと思うと息が詰まる」
令息が辛い表情を浮かべて言った。
「俺もあんな下品な女と結婚シなければならないと思うとおかしくなりそうだ」
令息が苦渋の表情で言った。
「俺は君をこんなにも愛しているのに君とは一緒になることができない。君と一緒になることも許されずあんな女と一生を共にするくらいなら死んだほうがましだ」
令息が胸の服を掴みながら苦渋の表情で言った。
「俺だって同じだ。お前以外の者と生涯を共にするくらいならならこんな命あっても意味がない」
令息が苦渋の表情で言った。
(うひょょぉぉ〜。やっぱりね。私の腐女子センサーは間違いないのよ。まさに目の前の禁断愛。くぅぅぅ〜たまんないね)
アンジェリカはニヤニヤしながら2人のやり取りを見ていた。
(本当に色んなとこに最高のモブカップルがいるわね)
アンジェリカは更にニヤニヤしながらそんな事を考えていた。
「いっそのことこのまま君とどこか遠くへ行きたい」
令息が切ない表情で言った。
「俺もだ」
令息が切ない表情を浮かべて言った。
そして2人は切ない表情で見つめ合った。
そして…そっと2人はキスをした。
(ぎゃぁぁぁぁ〜!禁断チューキタキタキタキタ!)
アンジェリカの興奮気味にそんな事を考えていた。
(眼福眼福。BL最高〜♡)
アンジェリカは更に目を輝かせてア2人に釘付けになりながらそんな事を考えていた。
そして2人の絡みは更にヒートアップしていった。
(ま、まさかこんな場所で深く絡むつもりなの?!主人公達以外のモブ達にこんな美味しいシチュエーションをおすそ分けしてもらっていいの?!いいの?!あざーす)
アンジェリカはもー目をキラキラと輝かせて興奮気味にそんな事を考えていた。
その時だった…
ガサガサ…
ガサ…
アンジェリカは音のする方をバッと見た。
(えっ?)
アンジェリカは目に入ったものに驚きそんな事を考えていた。
「あっ、、」
アンジェリカの目に入ったぽっちゃりで目が前髪で隠れている男の子が戸惑いながら言った。
「今、何か音がしなかったか?」
「あぁ」
令息達2人も音に気づき慌てて言った。
(まずいわ)
アンジェリカは慌ててそんな事を考えていた。
「にぁぁぁ〜」
アンジェリカは咄嗟に猫の鳴き真似をした。
「何だ、、猫だったのか」
「しかし、そろそろ会場へ戻ったほうが良さそうだな」
「あぁ、そうだな」
令息達がホッとした表情で言った。
令息達はそう言うと足早にその場を去った。
(あぁ、、せっかくこれから野外の絡みが始まるとこだったのに、、)
アンジェリカは足早にその場から離れる2人を見て残念そうな表情を浮かべてそんな事を考えていた。
そして…
「ちょっと!そこで何をしているの?!」
アンジェリカはぽっちゃり男子の方へ振り向き不満気な表情を浮かべて言った。
「ご、ごめんなさい、、。ぼ、僕は、、その、、。」
ぽっちゃり男子は慌てて戸惑いモゴモゴと言った。
「ぼ、僕がこんな容姿だから気を悪くさせてしまってごめんなさい、、」
ぽっちゃり男子がびくつきながら言った。
「あなたの容姿がどうとかそんな事どうでもいいのよ!」
アンジェリカは怒り言った。
「えっ?でも、あなたも僕が太ってから不快だから怒ってるのじゃないの?」
ぽっちゃり男子がおどおどしながら言った。
(何なのこの子供は)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「何度も同じ事を言わせないでくれる?あなが太ってようが痩せてようがそんな事はどうでもいいし私には関係ないの」
アンジェリカは呆れた表情を浮かべて言った。
「では何故怒っているの?」
ぽっちゃり男子がおどおどしながら言った。
「何故って?!あなたが物音を立てたから私のhashasタイムが台無しになったからよ!せっかくこれからいいところで2人絡みが始まるってとこだったのに、、あなたがたてた物音を聞いてあの2人は逃げてしまったのよ、、まったくせっかくのチャンスを逃してしまったのよ、、」
アンジェリカは不満気な表情を浮かべて言った。
「え?っと、has、、?絡み?えっと、、」
ぽっちゃり男子はアンジェリカの言葉に困惑気味に言った。
「はぁ、、もういいから気にしないで」
アンジェリカは遠い目をしながら言った。
(帰ったらムスカ達のラブラブ話を聞かせてもらってさっきの2人の分まで悶々話を聞かせて貰うしかないわね)
アンジェリカは遠い目のままそんな事を考えていた。
「それよりあなたはこんな所で何をしていたの?今日の皇太后陛下のパーティーの参加者?」
アンジェリカは気を取り直して言った。
「えっと、、僕は、、そのパーティーにその、、これを、、」
ぽっちゃり男子が困惑気味に言った。
(この子かなりの人見知りなのかしら。おどおど感がすごいわね。ここにいるってことパーティーの参加者でどこかしらの貴族の令息だと思うけどこんな子会場にいたかなぁ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「まぁいいわ。それよりその手に持ってるものとここへいるのは関係しているの?その手に持っているものは何なの?」
アンジェリカがぽっちゃり男子が手に持っていた箱の様なものを指さして言った。
「あっ、、えっとこれは鳥の巣箱で、、その僕が作ったんだ」
ぽっちゃり男子が戸惑いつつ言った。
「え?!それが巣箱ですって?!」
アンジェリカはぽっちゃり男子の言葉に驚き言った。
(あれが巣箱ですって?!頑張って作ったんだろうけどあれじゃ巣だって箱から落ちるし何よりまずあんなガタガタじゃ木に上手く置けないでしょうに)
アンジェリカはぽっちゃり男子が持っていた木箱を見てギョッとしてそんな事を考えていた。
「一つ聞きたいのだけれどそれはあなたが1人で作ったの?」
アンジェリカはギョッとしたまま言った。
「う、うん。そうだよ。この近くで鳥が木の上に巣を作っていたんだけど何度かその巣が雨風で壊れていたんだ。だから巣箱を作れば雨風にも負けずに木の上に巣を維持できると思って作ったんだ。ちょうど巣箱を木に取り付けに行こうとしていたところなんだ」
ぽっちゃり男子は優しい表情を浮かべて言った。
(その心意気は素晴らしいわね。でもその巣箱ないわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「そんな巣箱じゃ雨風どころかまず木にしっかり取り付ける事も無理だと思うわ」
アンジェリカはズバッと言った。
「え?ど、どうして?」
ぽっちゃり男子が慌てて言った。
「だってそれ巣箱と呼ぶにはあまりにも無理があるでしょう?雨風を凌ぐ為の物なのに上手く木材カット出来ていないから屋根の間に隙間があるし左右の隙間の大きさも違うし入り口がそんなに小さいと母鳥が巣を作れないでしょう?それに安定感がなくてグラグラじゃないの。そんなものを木に取り付けても鳥は使ってくれないと思うけど?」
アンジェリカは更にズバッとはっきり言った。
「そんな、、せっかく作ったのに、、」
ぽっちゃり男子は肩を落としながらしょぼんとして言った。
(はぁ、、。これじゃあはっきり物申した私が悪者みたいじゃないのよ。でも仕方ないじゃないのよ、、あんな未完成な物見せられて黙ってれる訳がないじゃないのよ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「その巣箱を作った材料はまだ余っているの?工具はどこ?」
アンジェリカが言った。
「え?材料?は、、余ってるし材料と一緒に工具も置いてるよ」
ぽっちゃり男子が戸惑いつつ言った。
「それならその材料と工具がある場所に案内してちょうだい」
アンジェリカが言った。
「えっと、、うん。こっちだよ」
ぽっちゃり男子は一瞬躊躇するも少し間を空けて頷きながら言った。
そして、アンジェリカはぽっちゃり男子に案内されてすぐ近くの場所へ到着した。
(これくらいの材料ならもう一つ巣箱を作るには十分だね。私のDIYスキルをお見せしようじゃないの)
アンジェリカは材料の量を見てニヤリと笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
「この材料は使ってもいいのよね?」
アンジェリカが言った。
「え?う、うん。それは構わないけど」
ぽっちゃり男子が戸惑いつつ言った。
「そう。ありがとう。工具を借りるわね」
アンジェリカはそう言うと手慣れた手つきで効率よく素早く巣箱を作り始めた。
そして15分後…
「よし!こんなもんでいいでしょう」
アンジェリカは満足気に完成した巣箱を見て言った。
「す、凄い!僕の作った巣箱と全然違うね」
ぽっちゃり男子がアンジェリカの作った巣箱を見て驚き言った。
「まぁ私の手にかかればこんなの朝飯前よ」
アンジェリカは誇らしげに言った。
(前世では巨大うれかじ18棚を1人で設計して1人でたった2日で作り上げたのよ?こんな小物なんてあたしの手にかかればなんてことないわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「本当に凄いね。こんな短時間で作れるなんて。君の作ったものに比べて僕の作ったものは本当に使い物にならないね、、」
ぽっちゃり男子が急に表情を曇らせて言った。
「僕は本当にこんな見た目だから周りから馬鹿にされて陰口だって言われるし良かれと思って作った巣箱も何の役にも立たなかったし、、」
ぽっちゃり男子が更に表情を曇らせて言った。
「見た目が太ってたら悪いの?巣箱が上手く作れなかったからだめなわけ?」
アンジェリカは意味がわからないという表情を浮かべて言った。
「え?でも皆陰で僕を弟と比べて太ってて地味だから気持ち悪いだの喋り方が遅いから話すのが嫌だとか、、それに巣箱だって作っても役にたたなかったら意味がないでしょう?」
ぽっちゃり男子が少し驚き言うすぐひもしょんぼりした表情で言った。
「別にあなたが太ってるからってその陰口叩いてる人達に何か迷惑かけたの?別にかけてないでしょう?そういう陰口を言う人たちには勝手に言わせておけばいいのよ。そう人たちこそ面と向かっては言えないものだろうしね。それに太ってるのも喋り方が遅いのも改善できる範囲でしょ?太ってて陰口叩かれるのが嫌ならその陰口を言ってる人たちを見返して黙らせてやったらいいのよ。あなたはどうして太っているの?食べるのが好きだからじゃないの?それなら食べた分だけ運動したらいいだけののとじゃない。喋り方だって体型が変わって自分に自信が持てたら気づいたら案外普通に喋れるようになってたりするものよ。それにあなたが太ってたり喋るのが遅かったりしている事を家族やその他にも理解してくれてる人達がいるんでしょう?それならその人達の為にもあまり自分を卑下しないことね」
アンジェリカはあっけらかんとした表情で言った。
(私も前世で普通のJKだったのがいつの間にかBLに沼落ちして腐女子ヲタクになった時に最初は友達に引かれたりしたもんね。でも、自分が信念もってそれでいいって自信持って思ってたら周りも気づいたら引くのをやめて今まで通り友達でいてくれてたもんね。人って信念曲げなかったりとか自信をつけるとかって大切なのよね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「ありのままの僕を受けと入れてくれる人達、、」
ぽっちゃり男子がアンジェリカの言葉を聞き呟いた。
「その人達の為にももう少し物事を前向きに考えてみなさいよね」
アンジェリカはニカっと笑いながら言った。
ぽっちゃり男子はアンジェリカの笑った顔を見て少し驚いた表情を浮かべた。
「う、うん、、。わかったよ」
ぽっちゃり男子が小さく頷きながら言った。
「よし!そのいきよ」
アンジェリカは笑顔でぽっちゃり男子の頭をくしゃくしゃと撫でながら言った。
(モブくんよ!頑張りたまえ!)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
アンジェリカに頭を撫でられていたぽっちゃり男子の頬が少し赤くなっている事にアンジェリカは気づくことはなかった。
「アンジェリカーー!私のアンジェリカはどこだー!」
「アンジェリカー!アンジェリカー!」
その時、アンジェリカの名前を必死に呼ぶ声が聞こえた。
「げっ!大変だわ!お父様とお母様の声だわ」
アンジェリカは声を聞きすぐにデビッドとメアリーだと気付きギョッとした表情を浮かべて言った。
(私が居ないことに気づいたんだわ。早く戻らないとあの2人は下手したら皇室の騎士団とかの派遣要請を陛下にしかねないわね)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「両親が探してるみたいだから私はもう行くわね!巣箱は危ないから誰か大人の人に取り付けてもらいなさいよ。あなたが作った巣箱は記念としてちゃんと残しておきなさいよ。それじゃあさよなら」
アンジェリカは立ち去り際に慌てて言うと急いでデビッド達の元へ向かった。
「あっ」
ぽっちゃり男子が何かを何か言いかけようとした時にはアンジェリカは足早にその場から去っていったのだった。
「アンジェリカ、、」
ぽっちゃり男子はそう呟くと2つの巣箱をギュッと抱きしめたのだった。
「兄上!」
そこへオルシアンがやってきてぽっちゃり男子へ声をかけた。
「あ、オルシアン」
ぽっちゃり男子が言った。
「兄上こんな所で何を?乳母が兄上が部屋から居なくなったと心配してパーティー会場までやってきたのです」
オルシアンは慌てて言った。
「そうか。心配かけてすまなかった。すぐに部屋へ戻るから」
ぽっちゃり男子が申し訳なさそうに言った。
「分かりました。それより本当に今日のパーティーもこのまま顔を出されなくてもいいのですか?」
オルシアンが複雑な表情で言った。
「あぁ、、」
ぽっちゃり男子が困り笑みを浮かべて言った。
そしてぽっちゃり男子はその場を後にしたのだった。
このぽっちゃり男子こそ"うれかじ18"のW主人公の1人…
フィルナンデス・ドゥナ・アーバン
だったのだ。
その後アンジェリカはデビッドとメアリーの元へと戻り急に居なくなった事を謝った。
アンジェリカの思った通りデビッドはアンジェリカの捜索の為に皇室の騎士団達を出動させるよう陛下にお願いする寸前だったと帰りの馬車で聞かせれアンジェリカはげっそりとしたのは言うまでもなかった。
(そういえばあの子何度も巣が落ちるのを見たことあるって言ってたけど何度も皇太后様に招待を受けている貴族の令息なのかな?まぁあのぽっちゃり具合がマスコットみたいで可愛いから皇太后様も可愛がっている令息なのかもね。いつかぽっちゃりを卒業して自信をつけてくれるといいけどね。それにしても本当にモブの設定まで細かいのは凄いわね)
アンジェリカは帰りの馬車の中でふとそんな事を考えていたのだった。
♡∼ω∼♡
宮殿を訪れた日から5日後…
アンジェリカは馬車に揺られて首都へ向かっていた。
アンジェリカはデビッドとメアリーが出かける日に合わせてムスカとオルンに休み届けを出すように仕向けていた。
それは何故かって?
それは…
アンジェリカがここ最近首都の街のはずれに隠れBLカフェ(BL聖地)があるということをムスカとオルンから聞いていたのだ。
それを聞いたアンジェリカが行かない訳がなくデビッドとメアリーの留守を狙ってムスカとオルンを連れてその噂のカフェにまさに今向かっていたのだった。
ムスカとオルンは首都の街で待ち合わせしていた。
アンジェリカが乗る馬車が首都へ着くとアンジェリカはレベッカを連れてムスカ達との待ち合わせ場所へと向かった。
(あぁ〜楽しみすぎて昨夜はなかなか眠れなかったなぁ。ムスカとオルンの行きつけの酒場は子供の私が入れないからいつも外から覗いてたけどカフェなら子供の私でも入れるもんね。生で色んなBLカップルのお熱い絡みが見れるなんて最高すぎてやばいかも。カメラ持ってくれば良かったかな)
アンジェリカは歩きながらニヤリと笑みを浮かべて想像しつつそんな事を考えていた。
そしてその後アンジェリカとレベッカはムスカとオルンと合流してカフェへと向かった。
「今から行くカフェは何がオススメなのかしら?」
アンジェリカがムスカ達へ言った。
「聞いたところによると店のイチオシはケーキのようです。何やら見た目がとても華々しいケーキのようでそのケーキをパートナーと一緒に食べるのがカフェの主流になってるそうです」
ムスカが微笑みながら言った。
「いい主流ね」
アンジェリカは満足気に言った。
(ケーキのラブラブ食べさせ合いキタキタキタキター!!もう最高か!相手の口元についたクリームを指、、もしくは舐めて拭き取ってあげるとかあるかもしれないわね。クリームをつけてた方はクリームをつけてたとこに恥ずかしさではにかんだり?そんな相手を優しいまなざしで見つめるパートナーとのやりとりが生で見れるとか?!もう大優勝案件じゃないの)
アンジェリカはニヤニヤが止まらないままそんな事を想像しつつ考えていた。
「ムスカとオルンもそのケーキを食べるといいわ。私の奢りよ」
アンジェリカは満面の笑みを浮かべて言った。
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
ムスカとオルンは嬉しそうにアンジェリカへ言った。
「いいのよ。案内してくれたお礼だから」
アンジェリカは微笑みながら言った。
(聖地に連れて行ってくれるんたからケーキの一つや二つご馳走するなんて当たり前だわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
そうして歩いているとカフェがすぐ側まで見えていた。
「あのお店かしら?」
アンジェリカが店を指さしてムスカ達へ言った。
「そのようですね」
ムスカが店を見て頷きながら言った。
(よし!いざ出陣よ)
アンジェリカはニヤリと笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
そして、アンジェリカ達が店の前まで到着した。
すると店からフードを深く被った人物が出てきた。
その人物が俯き気味に歩き出そうとした時だった。
ドンッ!
その人物が歩いていたカップルの男性にぶつかった。
「すいません、、」
フードの人物は俯き気味にぼそりと言うとまた歩きはじめようとした。
すると…
「おい!ぶつかってきておいてすいませんで済むか?」
ぶつかった男性がイラついた表情を浮かべてフードの人物の腕を掴み引き止め言った。
「だから謝ってるでしょう?」
フードの男は呆れた声でぼそりと言った。
「何だその態度は?!」
ぶつかった男性は更に怒りをあらわにして言った。
(何事よ)
アンジェリカは2人のやり取りを見てそんな事を考えていた。
「ぶつかった事に対して謝罪しているのに何がそんなにご不満で?それに今こうして僕の腕を掴んでいる事の方がよほど野蛮な態度だと思いすが?」
フードの人物は淡々と言った。
「何だと?!この野郎、、」
ぶつかった男性は更に怒りをあらわにして言うとフードの人物が持ってきた紙袋を無理矢理奪い取りその場に投げつけ踏みつけた。
「あ、、」
フードの人物はその行動を見て声を漏らした。
「やだ〜。可哀想〜」
ぶつかった男性の横にいた男性の恋人らしき女性が高笑いを浮かべながら言った。
「ハッ!お前ごときが偉そうに反抗的な態度を取るからだ。ほら、まだ食えるところがあるから拾って食えばいいんだよ!」
ぶつかった男がこれみよがしに横暴な態度で言った。
「あなたったら何て優しいの?食べられるところを残してあげるなんて〜」
女性は馬鹿にしたような笑みを浮かべて言った。
フードの人物は地面に広がる潰れた無惨なケーキを見て黙っていた。
「ククク、、いいきみだな。生意気な態度を取るからだ」
男性は横暴な態度で更に言った。
「その通りだわ。この人を誰だか知っててそんな態度を取ったのだならこうされても仕方ないわよね」
女性は見下すような表情で笑みを浮かべて言った。
「そうだ。この俺を誰だと思って、、」
男が傲慢げに言おうとしたその時だった…
「誰だか知らないからそんな態度を取られたんでしょう?」
その現場を一部始終見ていたアンジェリカが2人の間を割って入ってきて言った。
「は?ガキは引っ込んで、、え?」
男性はイラつきながら言うもアンジェリカの顔を見て驚き言葉が途切れた。
(何だこのガキは、、。ガキとは思えない程の容姿だな。こんな歳でこのレベルなら成長したらとんでもないレベルになるだろうな、、)
男性はアンジェリカを見てそんな事を考えていた。
(クク、、いいこと思いついたぞ。この俺にこんな無礼な態度を取ったという理由でこのガキを俺のものにしてやろう)
男性はニヤリと悪巧みの笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
「ちょっと何なのこの子供は。あんたに関係ないんだからさっさとどこかに行きなさい」
女性が不満気な表情を浮かべて言った。
「まぁまぁ、、落ち着けって。まだ子供なんだからよ」
男性は女性をなだめる様に言った。
「でも、、」
女性は不満気に言った。
「お嬢ちゃん。いくら子供でも取っていい態度と悪い態度があるんだぞ?いくら何も知らない子供からといってさっきのような態度はよくないと思うんだ。しかし、、俺は寛大な男だ。今回はお嬢ちゃんの態度を見逃してやろうじゃないか。、、だが見逃してやる条件としてこの後俺の家へ来い」
男性はニヤリとしながら言った。
「何故私があなたみたいな人の家に行かなければならないの?」
アンジェリカは呆れた表情を浮かべて言った。
「何だと、、?ハハ、、どうやら状況をよく理解していないようだな。お嬢ちゃん知らないようだから教えてやるよ。俺はハンズ男爵家の息子なんだ。そんな貴族の家の息子に対してこんな態度をとればどうなるかわかるか?とても酷い目に遭うことになるんだぞ?お嬢ちゃんような子供がそんな目に遭うのは可哀想だと思い俺が家にこいと提案してやったんだぞ?俺の家にくれば今回の態度は見逃して俺がお嬢ちゃんに良い待遇をしてやると言ってるんだぞ?」
男性は一瞬イラっとするもすぐにニヤリと笑みを浮かべて言った。
「殺してやる、、」
その時、アンジェリカのすぐ側にいたレベッカがアンジェリカだけに聞こえる程の声で呟いた。
「レベッカ、、落ち着いて?」
アンジェリカはにこりと笑みを浮かべてレベッカへ言った。
(簡単に殺すとかいう単語やめてね?私LOVEなのはわかるけど殺すっていう発想はやめてね?元・殺し屋の発想怖すぎだよ?というか禁断のBL18禁の世界が違う意味で18禁になっちゃうよ?)
アンジェリカは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「そんなくだらない戯言はいいから早くこのフードの人に謝りなさいよ」
アンジェリカは呆れた表情を浮かべて言った。
(私が楽しみにしてた聖地の目の前でややこしいことした上に聖地から出てきた人が持ってた噂のケーキを踏み潰したんだよ?あんたは。フードで顔がよく見えないけどこの噂のケーキを買ったということはそのケーキをパートナーの為に買ったということでしょ?せっかくこのフードの人がパートナーと一緒に食べ合うおとしてたケーキを目の前で踏み潰されたんだよ?拝むことはできないとしても私の愛するBLカップルの一組の楽しみと絡みを台無しにしたんだよ?あんたみたいなBLの片隅にもおけない汚モブがよ?地面に頭叩きつけて謝るくらいしないと私の気もおさまらないわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「お前、、」
男性はカッとなり言った。
「お前、、痛い目に遭わないとわからないか?貴族の俺がこんな汚らしい地味な奴に謝るだと?ふざけるな!」
男性は怒り狂った表情を浮かべて言った。
(このくそガキ!家へ連れ帰り躾けてやらないと気が済まねえ)
男性はそんな事を考えていた。
「殺してやる、、」
レベッカが殺気をあらわにするほど再びぼそりと呟いた。
(だからやめて〜。殺気もだだ漏れだよ〜。てか、レベッカの殺気にあんたも気づいてよね)
アンジェリカは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
アンジェリカはレベッカを見て小さく首を振った。
レベッカはアンジェリカを見てグッと堪えた表情を浮かべた。
「人のケーキをあんな風にしたなら貴族関係なく謝るのが筋でしょう?それに先程から貴族貴族ってあなた本当に貴族なの?ハンズ男爵家なんて聞いたことないけど?」
アンジェリカは疲れた表情を浮かべて言った。
「平民風情が貴族の事なんて知らなくて当然だろ?馬鹿にしてんのか?」
男性がイラつきながら言った。
「そうよ。何も知らない子供は黙ってなさいよ」
女性がアンジェリカを馬鹿にする様に言った。
アンジェリカはそっとレベッカを見た。
レベッカは女性へ殺気をあらわにしていた。
(だーかーらー殺気出すのやめてー)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
(これ早く事を片付けないとレベッカがリアルにこの2人を手にかけそうで怖すぎるよ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「あ、、ハンズ男爵家、、やはり聞いたことがあります」
アンジェリカが笑みを浮かべて言った。
(ハッ。ようやく自分の立場が理解できただろう)
男性はそんな事を考えていた。
「元々は平民でたまたま持っていた土地に高値がつき見事に成金になり爵位をお金で買ったという男爵家ですよね?当主様は確か、、夫人に内緒で愛人3人に家を与えて日替わりの愛人のお宅に通っておられるとか、、。爵位をお金で買ったからか貴族とは名ばかりで周りからは相手にもされていないとか、、」
アンジェリカは笑顔で言った。
「なん、、だと、、?」
男性は急に顔色を変えて戸惑いつつ言った。
「それに、、確か息子さんは博打好きで女遊びが激しくメイドにまで手を出しているとか、、息子さんとはあなたのことですよね?あ!もしかしてそちらの女性はメイドの方ですか?」
アンジェリカは笑顔で続けた。
「は、、何を!」
男性はギョッとした表情を浮かべて言った。
「ちょっとどういう事?メイドに手を出しているですって?!あなた私の他にも女がいるの?!私と結婚すると言っておいて?!」
女性が怒りに満ちた表情で言った。
「いや、それは、、いや違うんだ」
男性は慌てて言った。
「何が違うと言うの?」
女性は更に怒り言った。
「そちらの方はメイドではなかったのですね。私はてっきりメイドの方かと思いました。だって、、そちらの方が着ている洋服は一昨年に流行ったデザインの物でしたので。結婚を約束されている相手の方に流行遅れのものを贈るわけがありませんのに」
アンジェリカはとぼけ顔で言った。
「一昨年に流行ったものですって?!街で人気のブティックのものだと言ってたのは嘘だったの?」
女性が怒り狂い言った。
「それは、、違うんだ。聞いてくれ!」
男性は慌てて言った。
バチーン!
その時、女性が男性の頬を思い切り叩いた。
「最低、、」
女性は男性を怒りの満ちた表情で睨みつけて言った。
(修羅場ね。私だってこんな売れないじゃかいもみたいなあんたの事なんて一ミリも知らなかったわよ?でもね、あんたがフードの人に文句を言い始めた時にレベッカが私にあんたの情報を教えてくれたのよ。だからこうして修羅場になってるわけよ?というか何でレベッカはこんな男の情報を事細かく知ってるのかしら。その事実が一番怖いかも?)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
(もうそろそろ見苦しいし時間の無駄だし終わらせてもいいよね?)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「あの、、お取り込み中申し訳ないのですがお2人の喧嘩は犬も食わないレベルの醜悪なものですので別の場所で続きをしてもらってもよろしいですか?このカフェがお2人の醜悪のせいで汚されるのがたまらなく不快ですので」
アンジェリカはにこりと微笑みながら2人へ言った。
(この聖地にBLの世界を汚すような汚モブ2人のせいで変な噂がたったら嫌じゃない?あわよくば私はこの聖地を箱推しして推し活する予定なのよ?そんな場所をこんな形で汚して欲しくないわ)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「てめぇ言わせておけばガキのくせに、、何様のつもりだ?!」
男性は逆ギレ気味にアンジェリカへ怒鳴り言った。
「何様って言われても、、ただの侯爵令嬢ですけど?」
アンジェリカはあっけらかんとした表情を浮かべて言った。
アンジェリカの言葉を聞きフードの人物が反応した。
アンジェリカはそのことには気づかなかった。
「は?侯爵、、令嬢だと?」
男性はアンジェリカの言葉を聞いた瞬間表情を歪めて言った。
「えぇ。そうだけど?」
アンジェリカは更にけろっとした表情で言った。
「ハッ。ふざけてるのか?!お前みたいなガキが侯爵令嬢なら俺が知らないわけないだろう。馬鹿にするよもたいがいにしろよ?」
男性は吐き捨てるように言った。
「知らなくて当然でしょ?だって私まだデビュタントも終わってないんだから。デビュタントが終わってない貴族令嬢は公共の場にほとんど顔を出さないこと知らないの?あなた貴族なのよね?」
アンジェリカは淡々と言った。
「なっ、、。」
男性は急に恥ずかしげな表情で言った。
「でも、あなたが私を知らないのは当然か、、。だってあなたみたいな爵位をお金で買って偉そうに貴族面してるようなレベルの人達に私の両親には会ったことすらないでしょうからね」
アンジェリカは淡々と言った。
「お前!」
男性はカッとなり言った。
「クライシス侯爵家、、といえば分かるかしら?」
アンジェリカはニヤリと笑みを浮かべて言った。
「?!クライシス、、侯爵家だと、、?」
男性は目を見開き驚いた表情で言った。
「そうよ。あなたレベルでも耳にしたことがある名前でしょ?」
アンジェリカはにこりと微笑み言った。
(クライシス侯爵家だと?知らない訳がないだろう。侯爵家だが皇室にも負けない程の権力と財力を兼ね備えた貴族じゃないか。実際に見たことや会ったことはないが噂では整った容姿から想像できないほど冷酷な面を持ち、、一人娘をとても大切にしていると聞くあの侯爵家だろう?、、?!まさか、、)
男性はそんな事を考えていて何かに気づいたのかバッとアンジェリカを見た。
「まさか、、クライシス侯爵家の一人娘か、、?」
男性はギョッとした表情でアンジェリカへ言った。
男性の言葉にアンジェリカはにこりと微笑んだ。
アンジェリカのその笑みを見た瞬間男性は一気に顔が真っ青になり額から大量の汗を流しだした。
「ちょっと!クライシス侯爵家が何だっていうのよ!今はそんなことどうだっていいのよ!」
女性が苛ついた様子で男性に言った。
「黙れ!お前はクライシス侯爵家がどういう家なのか知らないのか?!お前死にたいのか?!」
男性は顔を真っ青にしたまま慌てて女性へ言った。
「何なのよ!」
女性は更に苛立ち言った。
「死にたくなければもう黙れ!」
男性は必死に女性へ言った。
そんな2人の間にアンジェリカが近づき2人の目の前にそっと座り込んだ。
「2人とも少しかがんでくれる?」
アンジェリカはにこりと微笑み言った。
男性は急ぎ言われるがままに女性の手を引きかがんだ。
するとアンジェリカが2人の耳元に近づいた。
「知っての通り私のお父様とお母様は私をとても大切にしてくれているの。そんな大切にしている娘に対してよからぬ事を考えて私を家に連れこもうとしたり常識も知らずレディとしての品格もなく私を罵倒する言葉を言ったことなど全て記憶したわ。今日の事をお父様達に言ったらあたな達はどうなると思う?」
アンジェリカはそっと2人に耳打ちした。
アンジェリカの言葉を聞いた2人は顔を真っ青にさせた。
「あっ、それとここだけの話なんだけど私の後ろにいた女性は私の専属侍女なんだけれど彼女ね、、元・敏腕の殺し屋なの。それに彼女私の事がすごく好きで私を不快にさせる人たちを見るとすぐ殺気立ってしまうのよ。今も凄い表情しているでしょう?」
アンジェリカは更に耳打ちした。
アンジェリカの言葉を聞いた2人は顔を真っ青にさせたままレベッカを見た。
レベッカは今にも2人にナイフでも投げつけるのではないかと思うほどの目で2人を睨んでいた。
そんなレベッカを見た2人は体をガタガタと震わせた。
(これくらいやればもうこんな態度や行いはしないでしょう)
アンジェリカは怯える2人を見てそんな事を考えていた。
「今後は自分達の行いを改めた方がいいと思うわ。あなた達の為にもね」
アンジェリカはにこりと微笑みながら2人へ言った。
「は、は、はい。よく分かりました。この度は大変失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした」
男性がびくつきながら深く頭を下げてアンジェリカへ言った。
「本当に申し訳ありませんでした、、」
女性も体を震わせながら必死にアンジェリカへ言った。
「あなた達が頭を下げて謝罪するべきは私よりあの方じゃないの?」
アンジェリカは淡々と言った。
アンジェリカの言葉にびくっとした2人はすぐにフードの人物の元へと駆け寄った。
「先程の程度で不快な思いをさせてしまなかった」
「本当にごめんなさい」
2人はその場で土下座をして地面に頭をぴったりとつけてフードの人物に謝った。
「あ、あぁ」
フードの男性はフードでよく顔は見えなかったが少し驚いた様子で言った。
「ムスカとオルン。店で新しいケーキを買ってきてちょうだい」
アンジェリカが近くにいたムスカとオルンへ言った。
「承知しました」
ムスカが笑顔で言った。
ムスカとオルンがカフェへと入っていった。
「そこに落ちているケーキは少しも残さず2人で食べるといいわ。食べ物を粗末にするという人としてあるまじき行為をしたのだから当然よね?」
アンジェリカはにこりと微笑みながら2人へ言った。
「は、はい。もちろんです」
男性は表情を強張らせながら慌てて言うと女性と一緒に地面に落ちて踏みつけられぐじゃじゃになっていた
ケーキを手でかき集めた。
そして2人はアンジェリカの目を気にしつつ土まみれになったケーキを勢いよく頬張り食べきった。
「食べ終わったならさっさと消えてくれる?目障りだから」
アンジェリカはケーキのクリームと土で顔を汚していた2人へ笑顔で言った。
「は、はい。失礼します」
「し、失礼します」
アンジェリカに言われると2人は身震いしながらいい足早にその場から逃げるように立ち去ったのだった。
(今の私って性悪の悪女っぽくない?)
アンジェリカは立ち去る2人を見てそんな事を考えていた。
「アンジェリカお嬢様。新しいケーキを買ってきました」
そこへタイミングよくムスカとオルンがケーキを持って戻ってきて言った。
「ありがとう」
アンジェリカは微笑みながら言った。
そして…
「これ新しいケーキです」
アンジェリカはフードの人物に微笑みながら言うとケーキを差し出した。
「、、ありがとうございます」
フードの人物は少し驚いた様子を見せるも顔が見えないほど俯き気味に言った。
(顔がよく見えないわね。ハッ!もしかしてこの店にケーキを買いにきたのがバレたらまずいほどの人と大恋愛してる人なのかな?きっと周りにBLだということを知られたくないのね。それでも健気にケーキを買いにくるなんて、、愛だわ、、良き、、)
アンジェリカはそんな事を考えていた。
「気にしないで下さい。あの人たちのせいで嫌な思いをした上に時間も奪われてしまったでしょう?さぁ早くケーキを持っていって下さい」
アンジェリカは微笑みながら言った。
「感謝します」
フードの人物はそう言いながら軽く礼をした。
「本当に気にしないで下さいね。では、私はこれで失礼しますね」
アンジェリカは微笑みながらそう言うとカフェの方を向いて歩き出した。
「皆、行くわよ」
アンジェリカがレベッカ達に言った。
「「はい」」
レベッカ達は笑顔でそう言うとアンジェリカの後に続き歩き出した。
そして、アンジェリカ達はカフェの中へと入っていったのだった。
「クライシス侯爵家の、、アンジェリカ、、」
フードの人物がカフェに入っていったアンジェリカを見つめて呟いた。
そしてフードの人物はカフェとは反対方向に歩き出した。
少し歩いた先に停めてあった馬車のところへ到着した。
「ロビン坊ちゃま用事はお済みになりましたか?」
御者がロビンの姿を見て馬車の扉を開けながら言った。
「あぁ」
フードの人物はフードをパサっと取ると頷きながら言い馬車へ乗り込んだのだった。
そう…
このフードの人物こそが"うれかじ18"のもう一人の主人公であるロビン・パーソルだった。
そんな事など知るよしもないアンジェリカは想像以上のBL具合高めのカフェに大興奮のあまり店内にいた全てのBLカップル達にアンジェリカの奢りでお菓子やドリンクを注文してそのお菓子やドリンクをラブラブしながら飲んだり食べたりする様子をよだれが垂れるのを必死に堪えながら終始ニヤニヤしながら堪能していたのだった。
このカフェ(BL聖地)【ハッスルスイーツパラダイス】はこの日を境にアンジェリカの推しカフェになったのは言うまでもなかった。
それから月日は流れ…
4年後…
10歳だったアンジェリカは14歳になっていた…
アンジェリカは幼さの残る美少女から大人びた顔つきの美少女と成長していた…
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