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目覚める少年


少年は夢を見ていた。


見ているのは何気ない幸せな日常。夕暮れ時、少年は家族で食卓を囲んでいた。父親、母親、兄、少年、誰もが笑顔で食事をしている。それを見下ろす様な視点で少年はいた。


(お母さん…お父さん…お兄ちゃん…と僕?)


不思議な感覚だった、やっと会えた家族に嬉しくて嬉しくて、今すぐにでも皆んなに抱きつきたい、けれども今この空気を壊したくない、ずっと見ていたいとすら思う、笑顔の皆んなを見ているだけで不思議と満たされて幸せな気持ちになり自分も笑顔になってしまう、そんな感覚だった。


そんな光景を暫く眺めていると不意にピンポーンとインターホンがなる音が聞こえた。

少年はその音を聞いた途端言いようのない恐怖心、寒気を感じ体が震え始めた。


(行っちゃダメ!!)


「こんな時間に誰かしら?」


おっとりとした性格のお母さんが不思議そうに席を立ち玄関の方にゆっくりと歩いて行く。


(ダメ!!行っちゃダメ!!)


少年が母親に飛び付き止めようとするが、スーと通り過ぎて母親に触る事が出来なかった。


「はーい、どちら様ですか〜?」


玄関についた母親は鍵に手を伸ばす。


(開けちゃダメ!!お母さん!!)


「開けちゃダいっ!!!」

「っ!!」


ユズキががば!っと起き上がろうとするとゴツン!!っと鈍い音が部屋に響いた。


「〜!!……」

「いったたた……」


ユズキは頭を抑え再び布団に丸くなり、横ではメルナがおでこをさすっていると直ぐにハッ!とユズキに声をかけた。


「だ、大丈夫!?」

「とっても痛いです……」


ユズキは涙目で頭を抑えながら答えた。


「ごめんね?魘されてたから心配になって……」

「僕こそごめんなさい……」

「良いのよ?覗き込んでた私が悪いんだから、そんな事より大丈夫?おかしな所はない?」


メルナはユズキの頭を撫でながら優しく尋ねた。


「?大丈夫…ですけど…そういえばここは何処…ですか?ギルドの説明をして貰って…メルナさんがギルドの方に歩いて行って………」

「(覚えてないのかしら?)そ、そう!戻ってきたらユズキちゃん寝ちゃってるんだもの、びっくりしちゃったわ?」

「そうなのですか?」

「そうそう!だから私がベットのあるここまで抱っこで連れて来たのよ」

「え?ご、ごめんなさい!!わざわざ運んでもらって…」

「いいの、いいの!きっと迷子になって疲れてたのよ」


メルナに優しく撫でられていると暗かった表情が次第に笑顔になっていった。


「ありがとうございます!、メルナさん!」


ふと窓の外を見ると大分日が暮れ、少し暗くなっておりハッ!っとした。


「あっ!もう夜になっちゃう!急いで帰らないと!」


急に慌て始めたユズキをみて、メルナは言いづらそうに語りかけた。


「それがなんだけどねユズキちゃん、ギルドの人にも聞いてみたんだけど、フジタって所は近くには無さそうなの」

「そう…ですか……どうしよう……」


少し慌ててパタパタと布団を直していたユズキの表情が少し暗くなったのに気がつき、慌ててメルナは続けた。


「で、でも依頼を出したから!直ぐにフジタの場所が分かると思うわ!だから少し待ってみましょう?」

「そう…ですね……分かりました……」


シュンとしてしまったユズキにメルナは明るく声を掛ける。


「そうだ!今日は私の家に来ない?ユズキちゃん泊まる所も無いわよね?」

「はい…何も…無いです……でもいいのですか?僕お金も払えないですし……」

「いいのよ!ユズキちゃんを一人で外に出すなんてしたら私も心配で気が気じゃ無いわ、それにいつも一人で少し寂しいもの、良かったら家に来てくれないかしら?」

「ありがとうございます……よろしくお願いします!」


弱々しくも少し笑顔になったユズキを見てメルナは優しく微笑んだ。


「うん!よろしくね!じゃあ行こっか?帰りに八百屋さんに寄って行っても良いかしら?今日の夜ご飯は豪勢にするわよ〜?」


メルナはユズキに手を伸ばすとユズキは笑顔で手を掴んだ。

「はい!僕もお手伝いします!」


二人は手を繋いで部屋を出て行った。


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