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街中の少年


「さて、もうこっちの方に来ては行かないよ?」


男は少年を下ろしポンポンと頭を叩きながら語りかけた。


「あの、えっとぉ...ごめんなさい...」

「うん!ちゃんと謝れて偉いねぇ...それじゃ!おじさんは戻るからね」

「あっ!...ありがとうございました!」


少年は頭から離れていく手を名残惜しそうにした後、笑顔でお礼を言った。


「はっはっはっ!どういたしまして、さぁて今日は娘にお土産でも持って買えるかぁ...」


少年の笑顔を見送りながら男はご機嫌に門の方に歩いて行

った。


「撫でて貰えちゃった...」


少年は嬉しそうに片手で頭を押さえ大きく男が見えなくなるまで笑顔で大きく手を振っていた。



「よし!入れて貰えたけど...どうしようかな...」


少年は初めて見る風景に驚きながら周囲を見渡した。

周囲は森の中に作られた街の様で、周りには木製の小屋の様な物が立っており、道の先には多くの木製の家が並び、多くの人が行き交い、活気があった。

その奥には大きな建物があり、もっと奥には大きな大きな木が立っているのが見える。


「おっきな木だなぁ...あんなに大きな木があるなんて外は凄いなぁ!...」


少年は目をキラキラさせながら人々の行き交う方へと歩いて行った。



「うわぁ...あれは何だろう?...あれも...あれも...」


少年は初めて見る商店街の様な光景に目を輝かせながらキョロキョロと見回していた。

明らかに浮いていた少年だったが周囲の大人は初めてのお使いでもしてるのかな?っと微笑ましく見ていた。


「おい嬢ちゃん!このプアの実食ってみろ!うめぇぞぉ!」


屋台の前を通りがかった時、元気なおじさんの声が少年を呼び止めた。


「嬢ちゃん?...僕ですか?」

「そうでぇ!こんな所で一人でお使いけぇ?まぁ一つ食ってみろ!」


大人の拳大の赤い木の実を掴みおじさんは腕を伸ばし、少年が腕を伸ばした所、値札の様な物を見つけふと少年の手が止まった。


「ありがとうございま...あっ!...」

「なんでぇ?」

「僕...お金持ってないです...」


ニコニコと笑顔だった少年の顔が少しだけ曇る。


「何でぇ?お使いじゃなかったんか?まぁいい!可愛い嬢ちゃんに一つプレゼントだ!」


おじさんは少年の手を掴み小さな手に木の実を掴ませた。

少年は少し驚きながら、楽しそうなおじさんに返すのも良く無いと思いそのまま受け取り、笑顔で答えた。


「ありがとうございます!」

「おう!うちのプアの実はうめぇぞ!食ってみぃ!」


おしさんが齧るようなフリをしてニコニコと笑顔を向けて来るので少年は恐る恐る小さく齧り付いた。


「お...美味しい!とっても美味しいよおじさん!!」

「そうだろそうだろぅ!」


キラキラと笑顔で目を輝かせる少年を見ておじさんはうんうんと腕を組んで頷いている、周りの子供が少年の反応を見てお母さん買ってぇ!とおねだりし、おじさんの前には小さな行列が出来た。


暫く道から外れて木の実を食べていた少年は最後の一口を食べ、小さく手を合わせてごちそうさまでした、と呟くと忙しそうにしているおじさんに手を振り声を張り上げた。


「おじさん!ありがとうございました!!」

「いいってことよ!またよってってくれやぁ!」


店からおしさんは声を張り上げ手を振り返してくれたので、少年は笑顔で手を振りまた歩き始めた。



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