1 神官は、困っていた
転生者が急に増えた世界で。
神官は、困っていた。
転生者が急に増えたのだ。
この国は他の世界からの転生者(というより転移者が正しいのかもしれない、前世の姿そのままにやってくるから)の力を借りて、成り立っている。
その強大な魔法の力が、他の国や魔獣との争いに決定力となるのだ。また、新しい知識技術・文化の導入、その他諸々を、転生者に頼っている。
われら神官の仕事は、定期的に転生者を召喚すること。そして転生者の生活を保護すること。
しかし最近、予定以上の人数が召喚されたり、召喚しないのに|転生の間に現れる《転生魔法陣をくぐってくる》転生者が後を絶たない。
転生者の保護は、われらの神との契約である。
転生者に幸せに暮らしていただくのを条件に、神が転生者を遣わされる。
しかし予定以上、予想外の人数を保護するには、人も、金も、資源も、何もかもが足りなくなった。
転生者の前世も変わった。
今までは成人になるかならないかの年齢の、いわば【即戦力】の転生者がやってきていた。「だんぷかあ」という神獣が、彼ら転生者を連れてくるそうだ。
神獣に体を噛み砕かれた彼らは、この世界を渡る際に傷ひとつない姿に戻される。これも神との契約だ。
しかし最近は、年端も行かない幼児が毎日のようにやってくる。乳児も来る。
泣く。
泣く。
泣く。
あやし、食べさせ、オムツを替え、育て、面倒を見るために、神官も侍女も総動員されている。
泣きたいのはこっちだよ。
でも神との契約は絶対だ。
そして今朝は、猫がやってきた。転生してきた。
神官は戸惑っていた。
神の御心がわからない。
ネコと和解せよ。