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第42話 雑貨屋の事務室にて

「疲れた……」


「同じく、ですー」


 ハインズ市にある雑貨や「ローラの店」の事務室で椅子に身体を投げ出す伊織とアルマ。

 そんな二人にローラが


「どうぞ、粗茶ですが」


 とお茶を差し出した。

 二人がお礼を言うとローラは嬉しそうに微笑む。


「あれから店に変なのは来てないか?」


「大丈夫です。本当にありがとうございました」


 伊織が話を付けに行ったことを知っていたアルマが頭を下げた。

 彼女に確認するまでもなく、店と住居の両方に取り付けてある防犯装置と各種センサーに不審なログが残っていないのは確認している。


 わざわざ本人に確認したのは、これまでの不審者が原因で普通のお客に恐怖や不安を感じていないか確認するためだ。

 そして、ローラの反応は伊織に安堵を与えるのに十分だった。


「ちょっとグレイスに話しておきたいことがあるんだ。呼んできて貰えないかな」


「はい!」


 お盆を抱えて元気よく飛び出した。

 ローラが飛び出すと直ぐにアルマが口を開く。


「潜伏する候補地になんでハインズ市を入れたんですか?」


 生徒たちにどこに潜伏をしたいか聞いたときに、四つの候補地を挙げた。

 三つはノースレイル王国に隣接する国のなかでも比較的栄えている都市で、ハインズ市もそのなかに含まれている。


 四つ目が彼らのを召喚したノースレイル王国の辺境にある町だった。


「高萩がいたからな」


 伊織は生徒たちに高萩が自力でハインズ市まで逃げてきたこと。

 召喚された直後、皆が隷属紋を刻まれるなか、魅了の魔法を使って一人隷属紋を刻まれることを免れているであろうこと。

 

 その魅了のスキルを使って裏社会のボスの座を手に入れていること。

 そして、迂闊に近付くと魅了スキルで高萩の奴隷にされることを告げた上で、対魅了の魔法が付与された指輪を全員に配った。


 迂闊に近付く生徒がいないとも限らなかったし、生徒たちから近付かなくても同じ町でくらしていたら高萩に捕捉されるのは間違いないだろうと考えたからである。

 高萩に捕捉されて魅了されたら自分たちの活動の妨げになりかねない。


 対魅了の指輪はそれを防ぐための保険であった。


「高萩というのは後継者様とあたしに魅了の魔法を使ってきた不埒者ですね」


 その上で候補地となる三つの都市と一つの町を挙げて、どこに潜伏したいかの決を採った。

 結果は伊織の思惑通りとなった。


「皆も、一人で脱出した高萩には良い感情を持っていなかったし、魅了の魔法への対抗手段もできたから血の気の多い連中と程なくぶつかるだろうな」


「なるほど! 後継者様は召喚された勇者を使ってあの不埒者を排除する考えなんですね」


「俺やアルマに魅了を使ってきたんだ。見逃すつもりはないよ」


 排除に至るかは運しだいだが、かなり高い確率で排除できると踏んでいた。


 もちろん、生徒たちによる排除が失敗する可能性もある。

 生徒たちが捕縛されて対魅了の指輪を奪われた上で魅了を使われたらなすすべなく高萩の手先となってしまう。


 しかし、そうなれば大義名分ができる。

 クラスメートを助けるために伊織自身が高萩の排除に動いても非難する者は誰もいないだろう。

 

 アルマはここまでの話の流れと伊織が発する雰囲気からそれを読み取る。


「そのときは言ってください。あたしもお手伝いいたします」


「そうだな、ゴブリンやオーガの捕獲も大分上手くなったからな」


「その話は止めてくださいー」


 伊織がからかうとアルマが赤面した。

 そのとき、扉をノックする音に続いてグレイスの声が届く。


「お呼びとのことですが、入ってもよろしいでしょうか?」


 伊織が入るように言うと仕事着姿のグレイスが入室をした。


 伊織はグレイスに陽介たちクラスメートをハインズ市に匿っていること。

 なかには好ましくない対応をするかも知れない生徒たちがいることなどをグレイスに伝えた。


「モガミ様のご学友二十三人がこのハインズ市にいるのですね」


 伊織の説明を聞いたグレイスが確認するように言った。


「その上でグレイスに頼みがある」


「はい」


「俺に用事がある場合はこの店に伝言を紙に書いて残すように言ってある。よけいな手間をかけるが伝言の受け取りをお願いしたい。併せて、俺が学友に伝言を残すこともある。もちろん紙で伝言をるすのでそれを相手に渡して欲しいんだ」


「承知いたしました」


 グレイスが力強くうなずいた。


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