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第33話 拠点を堅牢にしよう

 オペレーションエリアから雑貨屋『ローラの店』の二階にある執務室へと転移した伊織とアルマは、そのままグレイスとローラのいる一階へと下りていく。

 一階へ下りると二人で店の掃除をしているところだった。


「二人に話がある」


 伊織はグレイスとローラをカウンターの内側へと呼んだ。

 二人と入れ違いにアルマが店のフロアへとでる。


「アルマは店舗の内部と倉庫、住居部分に『捕縛チェーン』を増設して、新たに監視カメラの設置を頼む」


「分っかりましたー」


 そう言うとアルマは店の外へと出て行った。

 アルマの後ろ姿を見送った伊織がグレイスとローラに言う。


「ここのところ、盗賊が来たりガラの悪い客が来たりと二人には迷惑をかけたな」


「迷惑だなんてとんでもありません。魔道具のお陰で安心してお店に立つことが出来ます」


 グレイスは感謝していると熱の籠もった口調で言った。


「そこで、さらなる防犯の魔道具を持ってきた」


 伊織はカウンターの上に指輪とアンクレット、ネックレスを二つずつ置いた。

 サイズはグレースとローラに合わせてある。


「とても高価そうなアクセサリーですが……?」


「見た目はアクセサリーに見えるが、中身は防犯の魔道具だ。以前渡した防犯用のブレスレットと同じように寝るときも肌身離さず身に着けていて欲しい」


 防犯用のブレスレットとは、使用者に危険が及ぶと自動的に重力シールドを展開するアイテムで、この世界に配属されているダンジョンマスターたちも愛用しているベストセラー商品である。

 この世界の攻撃魔法程度なら容易に防げた。


 勿論、薬物への対応も万全である。

 身体や精神に害を及ぼすような薬物を探知し、必要に応じて解毒をする魔道具を奥歯に仕込んでいた。


「前回のものは攻撃魔法や剣などの攻撃から身を守る魔道具でしたが、今回のアイテムはどのようなものなのでしょうか?」


「グレイスは魅了というスキルを知っているか?」


「神話などに登場する悪魔が所持しているスキルで、人間や動物を思うがままに操ることの出来るスキルです」


「とても珍しいスキルだが、人間が持っていることもある」


「そちらのスキルを所持された方がいらっしゃったのですね」


 察しの良いグレイスの視線が伊織を射貫く。


「話が早くて助かる」


 伊織はそう言うと、グレイスが察したとおりであることを伝えて、さらに話を続ける。


「俺の知り合いというか、同じ学校に通っていた悪友がその魅了を手に入れた」


 その男がここ最近頻繁に出没する、店に忍び込もうとする盗賊であったり、ガラの悪い顧客の親玉であることを告げた。


「モガミ様のご友人が裏の組織のボスだったのですね」


「もう二度と手下をよこさないようにクギを刺してきたが、どこまで約束を守ってくれるか分からない。念のため対策用のアイテムを身に着けていて欲しい」


「畏まりました。私やローラがご友人に捕まったり言いなりになったりしたら、モガミ様にご迷惑がかかりますものね」


 納得したグレイスがローラに「肌身離さず常に身に着けているのよ」と言って指輪とアンクレット、ネックレスを身に着けさせた。

 続いて自分も身に着ける。


「協力してくれて助かる」


「私たち親子を心配してくださっていることは十分に承知しております」


「そう言って貰えると嬉しいよ。他になにか不都合や不足しているものはあるか?」


「特にこれと言ってございません」


「ローラはなにか欲しいものはあるかな?」


「大丈夫です」


 母親にしつけられているのだろう、即座に返事をした。


「遠慮するな。そうだ、お菓子なんてどうだ?」


 伊織は日本で売られているチョコレートやキャンディ、クッキーなどの馴染みのある甘味をバスケット一杯に入れてローラに差し出す。

 バスケットを受け取ったローラが、受け取ってもいいものかと母親を見た。


 グレイスが受け取ってい良いと言うとローラが顔を輝かせた。


「モガミ様、ありがとうございます」


「ありがとうございます」


 笑顔でローラに応えた伊織がグレイスに真顔で言う。


「しばらくは夜に少し顔を出すくらいしか出来そうにない。申し訳ないがその間、店のことを任せっきりになると思う」


 店の切り盛りだけでなく、盗賊やガラの悪い顧客の対応も任せっきりになるだろうと言った。

 不安がるかと思ったが頼もしい言葉が返ってくる。


「お店のことはお任せください。衛兵の方もここへの立ち寄りを増やしてくれると言っていました。どうしてもと言うときはエメルト様を頼るようにいたします」


「そうしてくれ」


 あの後、エルメルト商会から奴隷を購入することはなかった。

 しかし、雑貨屋の商品を購入してくれたりと、現在進行形で伊織とのパイプを強化しようとしている。


 伊織としても奴隷はやがて必要になると考えていたのでパイプを維持することにやぶさかではなかった。

 その辺りの伊織の考えもグレイスは承知している。


「設置完了です」


 アルマがどこからともなく現れた。

 しかし、グレイスもローラもそのことについては触れない。


「ご苦労さん、それじゃあ行こうか」


 伊織とアルマは二人揃って店の外へと歩き出した。

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