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オークが女性を襲う理由(ワケ)

作者: 頭武野 藤四郎

 ぼくはオークだ。オークというのはぼくたちの種族名で、ぼく自身にはいわゆる個人名というものがない。


 ぼくたちの種族の成り立ちは正直分からない。ぼくたちの種族はそんなことを言い伝えているわけではないからだ。簡単なコミュニケーションを取るための、簡素な言葉はあるにはある。ごく短い単語を発するだけの言葉が。

 だけど長文で情報をやり取りするだけの知恵がまだないんだ。そんなだから知識を蓄えることも出来ない。自分たちの先祖の事なんて考えることもしないんだ。自分たちをオークと呼ぶけど、なぜなのか誰も知らない。ただ父や父の父、さらにその父が呼んでいたことをまねしているだけなのだ。


 ならなぜ、ぼくはこんなことを考えられるかというと、ぼくはオークのぼくであると同時に角元 ようという中学生だからだ。いや中学生だった。

 ぼくは日本で一度死に、ここで生まれ変わった。どうしてなのかは分からない。意識が途絶えたと思ったら、いつの間にかここにいた。どうして日本で命を落としたかは、語りたくもないし思い出したくもない。



 ぼくらは普段住み処にしている森で、動物を狩ったり木の実や植物を採って暮らしている。寝床は主に洞穴だ。適当な洞穴がないときは地面を掘り地下に空間を作って潜り込む。

季節の変化はあるけど、身についた脂肪と日本ほど冷え込むことがないから、そんな場所でも過ごすことができる。暑い日はまあそれなりに。


 ぼくがオークになってから季節は六度巡った。ぼくの後に産まれた小さな子を見れば、二・三歳で自我の芽生えるというか記憶を持ち始める人間と違って、季節の一巡りもしないうちに自我のようなものが芽生えているように思える。

 するとぼくは七歳ぐらいなのだろう。このぐらいになると、オークとしては大人といっていい。体は十分に育っているのだ。


 この間、本当に地獄だった。だってろくに服も着ず、穴蔵暮らし。そんで周りは、ぼくの感覚からすればみんな豚だよ? ぼくたちは身体は二足歩行で人間に似た風ではあるけど、顔つきは豚や猪にそっくりにできているんだ。

 だけど、ぼくは姿こそオークに産まれたけど人間なんだ!


 それにさらに地獄が加わった。繁殖期だ。これはオークの本能でぼくにはどうしようもない。だけど周りはみんな豚なんだよ! 繁殖したいと思っても猪なんだ!

 性欲の湧きようがないんだよ! だけど本能が繁殖を迫ってくる。一体ぼくはどうしたらいいんだ!


 そんなある日、ぼくは逃げるように群れから離れ、普段より遠くへと狩りに出かけた。そこで出会ってしまったんだ、初めて見る人間に。

 それは二人組の女性だった。剣を手にしたレザーっぽいヨロイ(?)みたいな上下を着た女性と裾の長い上着を着た小柄な身長と同じくらいの長さの杖を持った女性と。

 その姿を見た途端、本能が叫んだ。繁殖したい!


 本能の赴くままぼくは二人に襲いかかってしまった。

 本能のせいなんだ、しょうがないんだ。


 しょうがないんだよ……。






 ……ゴメンナサイ……。

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