4.良いやつ
タイトル変更しました。
お気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、『魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする』から着想を得ています。
予めご了承ください。
エンちゃん可愛いですよね⋯⋯
アシッドサーペントの襲撃以降の道程は平和なもので、俺達はあっという間に森を抜けることが出来た。
「隣国はもうすぐだぜぇ、兄ちゃんよぉ」
「あぁ⋯⋯おっちゃん、呼び方変わったか?」
「⋯⋯んあぁ、兄ちゃん、実は商人なんかじゃねえだろ?⋯⋯なら『旦那』なんて堅苦しいのはやめだ」
「⋯⋯なぜ商人じゃない、と?」
「あの嬢ちゃんの魔法だ。その歳であんなんぶっぱなす様なやべぇのが、一介の商人と一緒にいるはずがねぇ」
「もしかしたらそういう商人もいるかも知れないじゃないか」
「いや、いねえ。いるとしても、そいつは同じくやべぇ奴だ。そんな凄腕なら国に連れてかれてるだろう。それを隠して行動してんだ、一介の商人なはずがねぇ」
「⋯⋯なら、もっと距離を置くべきじゃないのか?それとも『兄ちゃん』なんて呼び方に親しみが込められてるように感じるのは俺だけなのか?」
「いんや⋯⋯兄ちゃんはやべぇやつでも、良いやつだと思った。だから、仲良くなりてえと思ったんだ」
何を根拠に。
「分からねぇ、って顔してんな」
ニヤッ、と笑い、おっちゃんは続ける。
「兄ちゃん、嬢ちゃんがヘビの前に飛び出したとき、守ろうとしただろう」
「⋯⋯⋯⋯」
「自分が戦えないのを分かってて、その上で守ろうとしただろう?」
「⋯⋯身体が勝手に動いただけだ。考えていたわけじゃない」
「それで十分さ。身体が勝手に動くってのは、心の一番底でそうしたいって思ってるからだかんな」
「⋯⋯おっちゃんだってティアを守ろうとしてくれただろ」
「がっはっは、まあ、そうだな。つまり、兄ちゃんは俺並に良いやつだってこった」
「⋯⋯褒められてる気がしないな」
「あっ、てめっ」
「いでででで」
おっちゃんが俺の頭を、両拳でグリグリする。
俺は離れようとするが、おっちゃんの力が強い。
「わ、悪かったって」
「ふふん、分かったならいい」
おっちゃんは俺の頭から手を離す。
あー痛かった。加減ってもんを知らないのかこのおっさんは。
「⋯⋯ふふ、おっちゃん」
「なんでぃ?」
「⋯⋯ありがとうな」
どうしてなのかは分からないけれど、さっきより少し気が晴れた様に感じる。
おっちゃんは、何かを感じて、俺のことを励ましてくれたのだろうか。
おっちゃんなりの気遣いなのかも知れないな。
「⋯⋯そんなにグリグリが気持ち良かったのか?」
全然そんなことは無かったみたいだ。
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