十二話 ヒトリボッチとデート?
「……」
「……」
お分かりいただけただろうか。
これはある兄妹の会話文の一例である。
察しの良い皆様方が分かる通り、上が兄、下が妹のものである。
そして、上記の会話文により、これまた察しの良い皆様方が説明されるまでもなく理解されている通り、二人は家電量販店へとやってきている。
なぜ二人が家電量販店に来ているのか。
さすがにそれは説明が必要であろう。
それは――
「……おっ? これなんかいいんじゃないかな。大きくて見やすいし」
兄が手にしたものは――“かるがるふぉん”というものであった。
「……それお年寄りとか子供用のやつよ! バカ兄貴!」
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「頼む! 僕と一緒に“すまーとふぉん”とやらを選んでくれないか!」
そう兄である保智 一人に懇願され、仕方なくついてきた妹――保智 数多。
普段の彼女ならば、一人のことなど歯牙にも掛けないだろう。
だがしかし、今回は違う。
どう言うわけか知らないが、今回の一人は諦めが悪く、数多に対してしつこく懇願し続けたのだ。
最初は家に一緒に住んでいるにもかかわらず、電話で懇願され、一人が言い終わると同時に通話終了ボタンを押したのだが、今回は珍しく、それで挫ける一人ではなかった。
廊下で会うたびに懇願。
朝食の度に懇願。
また廊下ですれ違いざまに懇願。
昼食の度に懇願。
その他の度に懇願と、流石にこうまで懇願されては無視できるものではなかった。
――そのうち土下座でもしてきそうな雰囲気まで感じ取れたのも理由の一つとしてある。
「あぁもう! 分かった! 分かったわよ! 付き合えばいいんでしょ!」
軽く吐き捨てるように、観念した数多。
「ほんと!? ありがとう! お礼になんでもするよ!」
すると一人はバッと勢いよく数多の方へ顔を向け、キラキラした光線を瞳から放つ。
「はぁ……あんたってほんと……」
「――? どうしたの?」
「……なんでもない! ほら! とっとと行くわよ!」
「――あっ! ちょ、ちょっと待ってよ!」
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そんなこんなで家電量販店にまで一緒にやって来た保智兄妹。
数多はさっさと終わらせるつもりで来たのだが、この男――一人の世間知らずさにうんざりしていた。
彼がこれいいかもと手にしたのはスマホではあるが、一部機能が制限されていたり、やたら文字が大きく見えたりする――とてもではないがこれから大学に通う者が手にする代物ではなかったからだ。
「えっ? "かるがるふぉん”だめなの?」
「そのスマホや使う人に対して悪く言うつもりはないけれど……あんた若いんだからもっと普通の選びなさいよ」
「すごく使いやすそうなのに……」
一人は渋々と“かるがるふぉん”を棚に置き直す。
どこの世界に子供やお年寄りの持つスマホを引っ提げて登校する大学生が居るのだろうか。
それくらいの常識も弁えていない兄の姿を見て、妹は「はぁ」とため息を吐く。
「じゃあ数多のお勧めを教えてくれないか?」
世間知らずの兄は今時のJKである妹に助けを求める。
「そうね……だったらjPhoneでいいんじゃないかしら」
「jPhone?」
「アッポウが出してるやつよ。ほら、あのプレゼンが独特な人が居た会社の」
数多は天井に吊り下げられた、反転した林檎のマークのロゴを掲げた看板の下にあるスマホコーナーを指差す。
「あぁ〜! あれね!」
ポンと手を叩いて了解の意を示す一人。
「でもスマホって、これ他にもたくさんあるけど、他のとどう違うのかな?」
周りに数々置いてあるスマホを訝しげに睥睨しつつ、数多に質問する一人。
「違いはたくさんあって一概には言えないけど、jPhoneは操作性に優れてて、比較的使いやすいから初心者でも慣れやすいわ。他のはまたOSが違う物で、個々に売りがあるのが特徴ね」
数多はスッと手を伸ばし、一つのスマートフォンを手に取る。
「例えばこれなんかはカメラに精を出してて、超綺麗な画像や映像が撮れるわ。後こっちなんかはグラフィックに精を出してて、テレビと遜色ない画像や動画が見れるわ」
「ほぉ〜そうなのかぁ」
一人は数多が手に持つスマートフォンを見つめ、顎に手をあててうなずく。
「……ま、jPhone以外のスマホはあんたには早いわ。そっちにしときなさい」
「分かったよ! ありがとう! さすが数多は詳しいなぁ」
一人はスマホに向けていた視線を数多に向け、笑顔で感謝を伝える。
「……いいからさっさと契約してきなさいよ。あたしはこの辺りうろついてるから」
「分かったよ。けど……迷子になっちゃだめだよ?」
「んなっ……! なるわけないでしょ! いいからとっとと行きなさい!」
数多はシッシと手を振り、催促する。
一人が契約しに受付へ向かう際、「はぁ」と今度は大きめのため息を吐く数多。
パソコンやスマホに詳しいモダンな彼女はそれらを語る際、つい饒舌になってしまいがちであるが――相手はあの一人である。
それ故に、数多の精神疲労度はマックスである。
それもこれも全部、一人という存在が兄であるせいである。
「……ほんとにあいつは――」
数多が遠い目をしながら悪態をつこうとしたとき――
「数多! 助けて! “ぎが”ってなに!? "でんわしほーだい”ってなに!?」
一人が大慌てで数多の元に向かいながら助けを要求してくる。
「……」
数多はもう一度大きなため息を吐きつつ、一緒に受付へと向かうことになってしまうのであった。
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スマホを契約し終えた帰り道、保智兄妹は端から見ると、二人が兄妹には見えないくらい離れた距離を保っていた。
一人は先頭を歩き、その二メートル程後ろを数多が俯いたままついてきている。
(まずいな……電気屋で色々あったけど、かなり怒らせちゃってるぞ……)
一人の無知を補うため、機種について色々と聞いたことは勿論、契約時にも一悶着あった。
契約内容について数多にサポートしてもらっただけでなく、一人がそこでもまた色々と根堀り葉堀り数多に聞いてしまったことが、彼女の逆鱗に触れてしまったのだろう。
――それ以降、数多のテンションは、この通りダダ下がりである。
(……このままじゃ、まずいよな)
一人は先日誓ったことを思い出す。
数多が迷子になり、一人を頼って電話をしていたのが発覚した時のことだ。
困ったときに頼ってくれるくらいにはまだ思われているのが分かった瞬間である。
なので一人もスマホに関して心底困っていたので、本日頼ってみたのだが――
(逆効果だったかなぁ……僕も数多のことを頼りにしているってことをアピールしたかったんだけど……ただ無知を披露しまくっただけに終わった気がする……)
「はぁ」とため息を吐き、しばらく物思いにふける。
(かといって、このままだとよくない気がする……)
一人は小さく「よしっ」と声に出し、数多の方へと踵を返し、歩き出す。
数多は一人が一歩手前に現れるまで気付くことなく、容易に近づくことには成功した。
だが、近づいた瞬間――
「……なに? まだなんか用でもあんの?」
数多から、人間関係に乏しいボッチでも分かるくらいの嫌悪感が伝わってきた。
――じろりとこちらを見つめる光のない目、お世辞でも笑っているとは言えない表情、低い声音、それらで対応されると、さすがに「あっ、怒っていらっしゃるのね」というのはわかる。
一人はつい「すみませんでした!」と口に出しそうになったのを堪える。
一人は謝りたいと思ったから数多に近づいたわけではない。
じゃあ、何を伝えたいのかと言うと――
「――ありがとう」
「……は?」
数多は予想外の言葉に対し、呆けた返事を返す。
「今日は物凄く助かったよ。色々教えてくれたり、店員さんに対応してくれたり、ありがとうね。数多」
「……」
「あと、久しぶりに数多と出かけられて、楽しかったよ」
一人は笑顔でその言葉を告げる。
――感謝。
一人は数多に対して感謝したかったのだ。
今日一日、一人に付き合ってくれたこと。
知らないことを教えてくれたこと。
これらを――本当は嫌だろうに――一人と一緒にやってくれた数多に対して感謝がしたかったからだ。
今までの一人ならば先ほども言った通り、「すみませんでした!」と誤り、フライング土下座を披露したことだろう。
――これも一重に『友達の作り方』(バイブル)のおかげである。
人は「ごめんなさい」という謝罪の言葉を言われるよりも、「ありがとう」という感謝の言葉を言われた方が気分が良くなる。
前者はマイナスにとらわれてしまい、後者はプラスにとらわれるからだ。
素直に感謝の気持ちを述べることは、これ以上にないくらい、相手にとってプラスの印象を与えられるのだ。
「……別に」
数多はそれだけを述べる。
しかし、一人は「効果があったかも」と考える。
今まで「ごめん」と謝っても、大抵は「ふんっ!」と鼻を鳴らしてズンズンと足音を立てながら自分の前から去られる事が殆どであったからだ。
――少なくとも、話を聞いてくれる気にはなったのだろう。
「それと……誤って許してもらえることじゃないと思うけど、今までごめん」
そこでようやく、一人は今まで数多に対して抱いていた罪悪感を解放するべく、頭を垂れて謝る。
「……急に何よ? そんなことで今までやってきたことが許されるわけないでしょ」
数多は一瞬だけ一人のことを視界に入れた後、ふいっと首を横に向けて背ける。
――だがしかし、これは嘘だ。
一人は数多に対して許しを請うことは無いのだ。
数多はもうとっくに一人のことを許している。
あのような軽いセクハラで何年も一人のことを毛嫌いする程、数多の堪忍袋は小さくはない。
ではなぜ今だに一人のことを忌避し続けているのかと言うと、一人が数多に対して罪悪感を感じていることと共に、数多は一人に対して“ある感情”を抱いているのだ。
だから今まで素っ気ない対応を心がけていたのだが――
「あはは……そうだね。でも、許してもらえるように、頑張るよ」
「……あぁそう、今日はやけに絡んでくるじゃない。今まではそうでもなかったのに」
「確かに……今までは何もしてこなかったし、できなかったけど、僕はまた“昔みたいに”数多と仲良くなりたいしさ」
昔みたいに。
数多はついその言葉にピクリと反応してしまう。
「……それ、本気で言ってるの?」
それ故に、さっきとは打って変わった雰囲気を放ちつつ、少々前のめりになりつつ一人に対して問いかける。
「う、うん……? 本気、だけど……?」
一人は数多の代わり様に少々戸惑いつつも答える。
「……そう」
数多はそう告げると口を閉じる。
しばらく二人の間を沈黙の時間が支配する。
近くの電信柱にてこちらの様子をうかがっているかのようなカラスが、カァカァと三鳴き程してから、やがて夕焼けを背景に飛び立つ。
その間、一人は「また失敗したかもしれない……」と心の内で嘆き、次にどう切り出そうかと思考の海に落ちる。
「……あんたさ、あたしが家から飛び出して行ったとき、真中にあの場所を教えたのよね」
しかし、突然数多の方が切り出してきた。
前に数多が絶叫しながら家を出て行った時のことだろう。
なぜ今その話になるのか疑問に思った一人であったが、話題を提供されたので、少々ホッとしつつ答える。
「う、うん……昔数多があの辺りで迷子になったのを思い出したからさ」
「……っ! ふ、ふーん! そうなのね!」
すると数多の様子がまた変わる。
人と接する事のなかった一人には分かりにくいだろうが、おそらく――ほんの少しではあるが、喜んでいるのだろうということが分かる。
「――ってことは……まさか、“あのこと”も思い出してたり……してる……?」
数多は最近の一人が見たこともない表情で答える。
何故だかは分からないが、その表情は――昔のように戻っていた。
大きなクリクリとした目を半分ほど閉じ、下からこちらの表情をのぞき込むような仕草。
(――あぁ、懐かしいなぁ)
これは小さな頃、数多が一人に甘える時の仕草だった。
しかし、昔の記憶に思いをふけるのも束の間。
(で、でも……“あのこと”ってなんだ……? わからん! だけど――)
「――あ、あぁ〜! “あのこと”ね! そう! そうなんだよ!」
一人は身振り手振りを駆使してあたかも知っていたかのように振る舞う。
これは一種の賭けだ。
数多はどういうわけか、一人に対して昔のように対応しつつある。
おそらく、仲直りをするには今が最大のチャンスなのだ。
なので、このまま時間を稼いで、仲直りのきっかけとなる様な素材――昔の記憶を呼び覚ますことに裏で全力で挑む一人。
「――! そ、そそそうなんだ! あ、あはは! いやぁあたしもバカよね〜! あんな血迷ったこと“約束”するなんてね!」
すると今度は数多がしどろもどろになりつつ返答する。
一方、一人は「"約束”!? やばい! なんだ!? 全然覚えてないんだけど!」と冷や汗をかきつつ心の内で絶叫する。
「あ、あんなの、“間違ってる”わよね! あたしたち、兄妹なんだし! あは、あはははは!」
数多が抱いていた感情。
それは――苦悩。
数多はずっとこの"約束”に対して悩み、苦しんできたのだ。
――だが、ここにも苦しんでいるものがもう一人。
(“間違ってる”こと!? なんだ!? もうわけがわからないよ!)
一人は苦しみながらも、心の中の声が外に漏れ出さない様にすることに全力をだす。
故に、数多に対して、どう切り出していいのか全くわからない状況となってしまった。
しかし、当の数多は何故か一人に対して何かしらの返答を求めている様だった。
こちらの様子をなぜか気恥ずかしそうにチラチラと伺いつつ、何か言葉を待っている様であった。
一人は考える。
考える。
考え尽くす。
そして――
「――ま」
「……ま?」
「――っ! ま、間違ってなんか、ないと思うよ! 僕は!」
「……へ?」
(ええい! ままよ! このまま突っ走るしかない! なんとかなれ!)
最後に諦めた。
このまま勢いに任せてなんとかしてもらおうと、普段祈っても祈っても自身の願望を叶えてくれる事のない神に託すのであった。
「数多が間違ってるはずないよ! 僕はそう思うね!」
間違っていない。
一人はそうはっきりと宣言する。
この言葉が数多との仲を良好にしてくれることを祈って。
しかし、当の数多は、鳩が豆鉄砲をくらったかのように、どこか呆けてしまっている。
また両者ともしばらく無言の状態が続き、一人の首筋に冷たい液体が落ちる感触が伝わってくる。
(……や、やばい……何も思い出していないの……ばれたかな?)
一人が「ごくり」と唾を呑んだ瞬間――
「で、でも……あんたはあたしの……お兄ちゃんなんだよ……?」
(ここで「お兄ちゃん」呼び!? もうなにこれ!? 誰か説明して!!)
「うおおお!」と心の中でヘッドバンギングしながら叫び続けるお兄ちゃんこと一人。
もはやわけがわからない状態であった。
なぜいきなりこうも対応が変わったのか。
昔あの場所で何があったのか。
約束とはなんなのか。
その約束の間違いとはなんなのか。
わからない事だらけだ。
「それに……あんたは真中と付き合ってるわけだし……」
「――へ?」
しかし、その恐慌状態は一瞬で冷め切る。
何かまた訳のわからないことを、突拍子もなく発言してきたからだ。
「ご、ごめん数多。もう一回言ってくれないかな? 僕と真中ちゃんが……何って?」
「だ、だから……あんたたち、付き合ってるんでしょ?」
「付き……合う……?」
一人は首を傾げつつ、数多のことを「何言ってんだこいつ」と言いたげな訝しげな目で見つめる。
「……え? 付き合ってないの?」
「う、うん……どこからそういう話に?」
「だ、だってこの前……あんたが真中に覆いかぶさってたし……」
ここでまた、数多が家を飛び出した時の話に戻ってきた。
一人は話があっちこっちに飛びすぎて、もうわからない事だらけであったので、今回はとりあえず真実だけを告げることとする。
「あぁ……あのあと弁解の余地もなかったからね。あれは事故だよ。二人の喧騒が聞こえたから慌てて飛び出したから真中ちゃんとぶつかっちゃって……」
数多は一人の様子をじっくりと観察する。
先ほどまでは心に余裕がなかったため、じっくりと相手の事を観察するという冷静な行動は起こせなかった。
だが、一人が嘘を言っているような素振りはない。
――発言の前に、両眉を右の親指と人差し指でつまみ、何が何だか分からないといったような素振りはしていたが。
(ど、どういうこと……? どうして一人と真中の言ってる事がこうも違うの……?)
「で、でも……そう! 真中よ! 真中だって――」
中洲 真中。
数多にとって、親友“であった”それのことを口に出した瞬間。
数多は「はっ!」となる。
気付いてしまったのだ。
――真中が勘違いして、一人と付き合っている気になってしまっていることを。
(な、なんてこと……! 真中ったら……やってくれるわね……!)
ギリッと歯を軋ませ、悔しげな表情を顕にする数多。
――その表情に人知れず一人が「ひぇっ」と声に出してビビっているのだが、数多は思考に集中力を高めていたため、気づかない。
(となると……あの恋人宣言もただの妄想……なら、一人は今誰とも付き合ってはいないのね……)
「あ、あぁ〜分かったわ。とりあえず、あんたは真中と付き合ってないのね。勘違いしちゃったわ」
「う、うん……こっちこそ、なんだか誤解させちゃって悪かったね」
一人は先ほどの数多の表情に若干ビビりつつ、とりあえずごまかしきれたのだとほっと一息つく。
「……ねぇ、もう一回聞くけど、あんたは間違ってなんかいないって思ってるのよね?」
数多は念押しとばかりに、一人を睥睨しつつ、問いかける。
一人は「また聞いてきた!?」と心の中で一瞬狼狽するが、何とか強く自我を保ち、「当たり前だろ?」とはっきり言い切って見せる。
――未だになんのことかは全く分かってはいないが。
「……そう――そう! ふーん! あんたも馬鹿ね! あたしがあんな約束、未だに信じてるって思ってるのね! そんなことしたら、犯罪者になっちゃうわよ?」
ケラケラと笑いながらまるで冗談を受け流すかの様に振る舞う数多。
こんな数多を見るのは久しぶりだ。
本来ならこんな風に兄妹仲良く会話ができたことに対して喜びを感じてもいいだろう。
しかし、一人は――
(えぇ!? 僕何か犯罪を犯すって宣言しちゃったの!?)
と、冷や汗をだらだらに流しつつ、内心しどろもどろになっていた。
どうやら昔、自分は妹に対して何かやばいことを約束してしまったらしい。
「あんたがそこまで覚悟しちゃってるならしょうがないわねー! なるほど面白いことになって来たわ!」
(えぇ!? 僕何か覚悟しないといけないの!?)
なぜか今日一日で、妹との距離が一気に詰まった気がするのだが、良いことばかりではなさそうだ。
(あぁ……いったい僕はこれからどうなるんだろう……)
一人は隣で楽しそうに笑う数多を横目に、契約したスマホの入った紙袋をかすかに揺らしつつ、トボトボと家へと歩みを進めるのであった。




