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第一章 がんの発見 一の9 腹部大動脈瘤の発見

腹部大動脈瘤の発見

 退院を翌日に控えた2月13日、かれの腹の中に直径5㎝の大動脈瘤の存在が告げられた。この腹部大動脈瘤は尿管を圧迫して左の腎臓が水腎症になっている、との説明を受けた。がんだけで十分なのに、大動脈瘤と水腎症という病名が新たに加わった。かれは何のことかすぐには飲み込めなかった。腹部大動脈瘤は読んで字のごとくで、腹の中の大動脈がふくらんで瘤のようになっていることだ。水腎症は、医者の説明によると、腎臓の血流が障害されることによって、腎臓が悪くなることらしい。

 担当医は続けて、腹部大動脈瘤の治療について説明し始めた。それによると、開腹手術によって大動脈瘤を取り除いて人工血管に取り替えるか、それとも大動脈瘤の中に裏打ちするようにステントという管を入れるか、どちらかの手術が必要だと言われた。しかも、がんの手術の前か後かを近いうちに決めないといけないという。医者の口ぶりから察すると、腹部大動脈瘤はがんと同じくらい差し迫ったもののようだ。

医者に言われて腹部に手を当てると、大動脈瘤の存在が自分でもわかり、それはどっくどっくと拍動をしていた。でも、自分で考えてもしかたがないので、がんと大動脈瘤のどちらを先に手術するかは医者に任せるしかないと思った。

23日間の検査入院で、がんと大動脈瘤が発見された。


「退院おめでとうございます、と言いたいところですが、大動脈瘤が大変ですね。一つずつ解決していくことですね。月曜日に会いましょう。」

 

 かれは2月14日土曜日に退院し、翌週の「月曜日には大学に出てくる」とメールしてきた。まだ、検査が終わっただけだ。がんの治療には着手していない。治療はいったいいつから始まるのだろう。こうしている間にも、がんはどんどん大きくなっているのではないか、とわたしは心配になった。


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