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第七章 肝臓がんの治療 七の18 えっ、陽子線治療が効いてない?

えっ、陽子線治療が効いてない?

 8月24日にT大学病院で陽子線治療が終わったが、切除手術のように、肝臓がんが完全になくなったわけではない。見た目は変わらず体内にあるのだ。しばらくしたら小さくなっていくでしょう、と退院の際に担当医から説明を受けたので、気長に構えることにした。単純だと思われるかもしれないが、しばらく肝臓がんのことは忘れることにした。考えてどうこうなるものではないからだ。

その後、普段通りに大学に通勤し、これまでのように胸の筋肉や神経の痛みに日々悩まされ続けられた。これがKの日常である。

 陽子線治療の経過観察のために、照射から2か月が過ぎた11月にT大学病院に診察してもらうことになっていた。そこで診察に際し、持っていくための肝臓のCTをあらかじめY大学病院で撮ってもらった。Y大学病院の担当医はその画像を見て、「陽子線治療から2か月経っているのに、がんは全然小さくなっていない」と衝撃的なことを言った。矢継ぎ早に、「陽子線治療は失敗だったので、次の手を考えましょう」と言うのだ。予想していなかった言葉が次々出てきたので、最初のうちは一体何のことを言っているのか整理できなくて、頭がこんがらがってきたが、こちらの当惑は関係なく、畳みかけるように「アルコール責めでがんを殺すか、血管にステントを挿入して血流を止めて兵糧攻めにするか、あとは抗がん剤でやっつけるかの3つの方法があります。再来週の来院までに好きなものを選んでおいてください」とまくしたてた。再来週までと言われても、それぞれの治療の実績を教えてくれなければ、選択しようもないではないか。ファミレスでメニューを見て、即座に注文するのとはわけが違うのに。


 「Oさん、陽子線治療が効いていないから、新しい治療法に切り替えなくっちゃいけないというんだ。再来週までに3つの中から1つを選んでこい、って言うんだ」

 「どうして陽子線治療が効いてないっていうことになったの」

 「2か月経っても、がんが小さくなっていないっていうんだ」

 「Kさん、筑波の医者から陽子線の効果は照射してから2か月以後に現れるって言われたって言ってたじゃない。これからじゃないの。それとも他に効いていない証拠があるの」

 「そう言えば、確かに効果が出るには3~6ヶ月かかるって言われたね。思い出したよ。しばらく肝臓がんのことは忘れていたからね」

 「筑波のことは、食い物のことしか覚えていないんじゃないの」

 「そんなことはないけど。とりあえず、3つのうちの1つを選べというY大学病院の医者の指示は忘れて、来週、T大学に行くから、そこで聞いてみるよ」


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