第七章 肝臓がんの治療 七の15 背中からワイヤーが?
背中からワイヤーが?
「背中、と言っても首の下あたりなんだけど、胸椎の手術したあたりから細い突起が伸びてきて、背中の皮を突き破りそうなんだよね。見てみる?」
「うん。針のようなものが突き出ているね。毎日成長しているの」
「毎日伸びているように思うんだ。第2・第3胸椎を撤去する工事の際に、補助的に用いたワイヤーだと思うんだよね」
「えっ、そうなの。ワイヤーだったら取ってもらわなくっちゃいけないんじゃないの。痛いの?」
「痛い。このままじゃ首が曲げられなくなってしまいそう」
「とりあえず医者だね」
とっくの昔の出来事のように思っていた胸椎の手術跡から、予想外の問題が発生した。手術で使ったワイヤーが皮膚を突き破りそうだというのだ。
そこでかれは、Y大学病院の形成外科の医者に相談し、過去のCTやレントゲン,MRIの画像を見せてもらったが、飛び出しているものは、かれが予想したとおり金属でできたワイヤーのように見えた。そしてそれは胸椎を補強する役目を果たしていない余計なものに見えるのである。とにかく、次回専門の整形外科の医者に相談することになった。




