第七章 肝臓がんの治療 七の6 肝臓がんの陽子線治療
肝臓がんの陽子線治療
8月9日から、T大学病院の近くに借りたウィークリーマンションから、毎日病院に歩いて陽子線を浴びに行くのである。毎日温泉に入りにいくわけではないが、気分はそれに近い。がんの治療という深刻さは微塵もないのだ。体重は落ち、歩くのは傍から見ると危なっかしいのであるが、自分ではそれなりに歩けていると思っている。
ウィークリーマンションから病院の入り口までおよそ700mある。陽子線の照射が毎日9時半から始まるので、それに間に合うように部屋を8時45分に出る。午前中とはいえ真夏なので日差しは強く、病院に着くころには全身汗びっしょりになっていた。病院では病衣に着替え、自分の服をハンガーにかけておく。すると治療が終わるころにはほとんど乾いているが、病衣はびっしょりになってしまう。やはり着替えが必要なので、ズボン、Tシャツ、パンツの替えをザックに入れて持ち歩くようになった。しばらくすると病院までの道に街路樹が植わっている別の道があることを発見して、日陰を歩けるようになった。日影を歩くことがこんなに爽快だということを久々に感じることができた。




