第六章 腹部大動脈瘤の治療 六の13 肺のキラリン
肺のキラリン
腹部大動脈瘤の手術後の検査のために7月19日にT医科大学病院に行った。O教授はKとの再会をとても喜んでくれた。手術が成功しても、うつ状態になり再び病院に来なくなる患者もいるそうだ。普通の患者にとっては、体内の時限爆弾が止まってからも不安は続くのだ。精神はもろいのだ。
Kの腹部大動脈瘤は完治していたが、O教授はCT検査で肺にキラリン(Kの表現である)と光る部位を見つけた。直径5.4㎜の怪しい光である。O教授は、大動脈瘤のスペシャリストである前に、医者としてジェネラリストであるべきであり、それを実践したまでだと言った。せっかく腹部大動脈瘤が治ったのに、肺がんの再発かと思われたが、O教授はがんだとは断じなかった。「経過観察しましょう」ということになった。
「あのキラキラっとしていた肺の光はどうなったの」
「キラキラっじゃないよ。キラリンだよ」
「キラキラっとキラリンの一体どこがどう違うの」
「キラキラだったら、2か所じゃない。キラリンだから一か所なの」
(さすがのKさんも、かなりナーバスになっているな)
その後、Y大学病院で9月21日に撮ったCTでは、大きさが4㎜となり小さくなっていた。さらに、11月7日のT医科大学病院での検査では、2.0㎜に縮小していた。順調に小さくなっていった。
キラリンはキラキラになることはなかった。