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第5章 長期入院生活 五の5 退院直前に肝臓がんの発見

退院直前に肝臓がんの発見

 11月中旬に退院することになったのだが、退院直前のCTによる検査で、新たに肝臓に直径17㎜のがんらしきものが発見された。退院後の検査の結果、肺がんからの転移ではなく、新たに誕生したがんだということがわかった。

 Kは新たな肝臓がんが発見されたことにがっかりしたが、それでも肺がんからの転移ではないということで、なぜかほっと胸を撫で下ろした。いずれにしても、次にこの肝臓がんに立ち向かわなければならなくなった。医者は「体力を付け、感染症が治まってから次の治療に入ることにしましょう」とやさしく提案してくれた。Kもその指示に素直に従わざるを得ないほど、体力がなくなっていることを自覚していた。

かれは肝臓がんができた原因を、抗がん剤やモルヒネによる食欲不振によって体重が激減し、免疫力が低下したことによるものだと考えた。それゆえ退院してたくさん食べて、体力を増強することが、先決だと思った。体力を増せば、じきに感染症も治ってくるだろうと考えた。

 感染症は、手術した時に感染症になったんだろう、と当初Kは考えた。感染症を示す数値は、当時から2年近く経ったいまでも正常値よりも高い。かれはこれが自分の正常値かもしれないと考えを改めるようになってきた。どこまでもポジティブなのだ。科学的に言うならば、肺がん手術前の数値があり、それが現在のものと同じならば、かれの考えは当たっているかもしれない。でも、それが当たっていようといまいと、かれの病状が変わるわけではないのも確かだ。

 ここで記憶力の良い読者のみなさまは、肺がんで入院した時に見つかった直径5㎝の腹部大動脈瘤はどうなったのか、と思われることだろう。あるインターネットの情報によると、腹部大動脈瘤は一般的に直径5㎝までは手術はしないと書いてある。正常な腹部大動脈の直径が2~3cmというのだから、2倍に膨らんだ直径5㎝くらいはたいしたことはないのかもしれない。それでも腹部大動脈瘤が発見された時には、肺がんの手術を先にするか、それとも腹部大動脈瘤の手術を先にするかと医者から言われたほどだから、かなりの緊急性があったはずだ。

 あれから10か月も経っている。5㎝の大動脈瘤はもっと大きくなっているかもしれない。素人考えであっても、いつ爆発するかもしれないと思ってしまう。この頃のKは腹部大動脈瘤のことは忘れていたようである。医者からは「腹部大動脈瘤の手術も感染症が治ってからですね」と言われ、それに納得していた。とにかく深刻さはなかったのである。

 体力を付けて、再びY大学病院に入院して肝臓がんの手術をするぞ。それがKの強い意志だった。


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