表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/101

第四章 胸椎再手術 四の6 再び抗がん剤治療

再び抗がん剤治療

 6月中旬になって、まだ体内に残っているかもしれないがん細胞と、がんの再発を防止するために、再び抗がん剤治療を2クール行うことになった。今回は、放射線治療は行わない。第一回目で味わった、臭いや味覚に過敏になり、何も食べられなくなって、やせてしまうのではないかという不安が湧いてきた。

 実は、今回、抗がん剤治療ができるのは、かれにとっては喜ばしいことであった。それは、手術が成功していなかったら今回の抗がん剤治療は試みられなかったし、手術が成功していても予後が悪ければ、二回目はなかったのだ。食べられなくなる不安はあったとしても、ここで抗がん剤治療ができることは、体の中に残っているがん細胞を駆逐するためには、必要なことであった。

 抗がん剤を投与するとすぐに副作用が出てきたが、食べるために、今回は前回の治療期間に学習したことを実践していった。食パンにクリームチーズとはちみつ、シナモンをのせて、病棟に備え付けのオーブントースターで焼いて、美味しく食べた。なかなか栄養価のある豪勢な食事である。これにサラダでもあれば、ビジネスホテルの朝食以上だ。かれは食べることが好きなので、いろいろな工夫を凝らして、この料理に到達したのだという。こうしたものが食べられれば、なんでも食べられるように思うが、そういうわけにはいかなかったようだ。鼻や舌は微妙なものである。

 毎日見舞いに来るおくさんに、食べたくなったものを買って料理して持ってきてくれるように頼んだ。その中には、牛の腸、つまりホルモンがあった。ホルモンを食べたことも調理したこともないおくさんは、かれの指定した店に行ってホルモンを手に入れ、それを焼いて、塩で味をつけた。かれはしばらく食べていなかったホルモンを、病室で食べることができ、とても満足だった。外で食べるよりもずっと美味しく栄養があるように思えた。

 必死に食べることで、体重が減少して体力がなくなることだけは防ごう、と夫婦一緒に精一杯の努力をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ