第四章 胸椎再手術 四の4 歩行の復活
歩行の復活
もしかして本当に赤ちゃんからのやり直しが必要なのかと思っていた歩行は、手術後7日目から病院内の施設で専門家の指導によってリハビリを開始し、その後3週目で歩行器(体を取り囲む補助具ではなく、杖のようなもの)を使って歩けるようになり、5週目で、数メートルではあるが自立した二足歩行ができた。その直後、不幸にも後述する転倒騒ぎが起こった。
すったもんだがあり、9月に入ると、まっすぐに歩くことができるようになり、これで本人は普通に歩けるようになったと思っていた。それでも、人混みの中などでのとっさの動作に対応できず、前後左右にステップを切ったり、飛んだりはできないことを自覚していた。だが、傍から見ると、まだよちよち歩きで、危なっかしいものだった。とても普通に歩けると言える状態ではなかった。それでも完全に歩き方を忘れ、それを取り戻すことができるかどうか不安だったKは、なんとか自力で歩けるようになったことが、奇跡のように思えた。
歴史上、人類がアフリカの大地で初めて二足歩行した500万年前、現代の文明を構築する我々につながる大きな可能性を持った。Kはそんな喜びに浸っているようだった。二つの足で立って歩けるとは、人類全体でなくとも、個人的にも非常に大切なことなのだ。