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第四章 胸椎再手術 四の3 退院せずに転棟へ

退院せずに転棟へ

 Kが歩くことができないことを理由に退院することを拒むと、医者は手術する前から筋力が弱かったから歩けないのだと説明した。これは遠巻きに手術のせいではない、ということを主張していたのだろうか。Kは別に手術にミスがあったと言っていないし、そう思ってもいなかった。担当医は、リハビリができる病院を斡旋する、と提案した。どうしてもかれを退院させる気なのだ。ワンダーフォーゲル部の女子学生の時と同じパターンである。かれは病院を移ったら、歩行のリハビリどころではなく、Y大学病院からがんのアフターケアーもしてもらえなくなるのではないか、と強い不安を抱いた。ここはなんとしても、居座るしかない。最後の手段として、かれは胸椎の置換手術をしてくれたH医師に、直訴するメールを書いて送った。


「H先生、Kです。

このたびは、大変な手術を成功していただきましてありがとうございます。

ところで、先週のあたまくらいから、(いま入院している)診療科から手術は成功して傷も治ったので、退院いただきたい(とのことで)、・・・・・・(転院先を)現在交渉中ですので、目処が立ち次第連絡します、という感じです。

確かにこの科としては、やるべきことはやって結果も出た、ということなんだと思いますが。確かに,リハビリに係わる部分は,胸椎部分の手術に関連する部分が多いのかと思いますが。

と言うことで、自宅に戻って普通の生活ができるまで、できればY大学附属病院でリハビリを受けたいと考えていますが、先生には、以後面倒を見ていただきたく、よろしくお願いいたします。」


 するとすぐにH先生からメールが返ってきた。

 「ご連絡ありがとうございます。

ご指摘どおり、現在リハビリが必要である領域は整形外科的な部分と存じます。胸部外科の先生と相談して、早期に整形外科病棟への転棟を進めたいと思います。

ご心配をお掛けしまして大変申し訳ありません。」


 こうしてH先生の尽力により、無事にY大学病院に残れることになり、6月1日に病室が変わった。かれは自分が行動を起こすことによって、なんとか難局を乗り切った。医者にメールを送ることは、Kが大学教授だから比較的簡単なことのように思われるかもしれないが、わたしにはそうは思えない。かなり躊躇してしまうのだ。わたしがかれの立場に立たされたとしても、かれのように果敢な行動をとることができず、時間だけが経ち、成り行きに任せていたと思う。かれの行動力は称賛に値するのである。この行動力は、これからもいかんなく発揮されることになる。


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