第三章 肺がんと胸椎の手術 三の5 肺がんのステージ
肺がんのステージ
がんの進行度について、ステージという言葉をよく耳にする。手術が終わった頃から、Kの肺がんは、医者からステージⅢaだと告げられた。がんが広がっているが、離れた他の臓器に転移していないので、このように判断された。
気になるのは、ステージとセットで語られる5年(相対)生存率である。そのがんのステージにある人は、何十%の確率で5年以上生きることができる、ということである。医者からはKの場合は30%だと教えられた。Kと同じステージのがん患者が100人いるとしたら、5年後に生き残っているのは34人だというのである。しかし、かれにはこの確率はあまりにもおおざっぱだと思えた。患者の年齢、性差、体力、持病の有無等々、病気になった人の状況はそれぞれ違うはずだ。自分の状況に合致した5年生存率の数値はないのかと、医者に聞いてみたが、答えはなかった。
かれは心の底で、自分と同じ状況ならば、もっと5年生存率の数値は高くなるのではないかと思っていたのだ。かれは生存率の高い数値に希望を見出したかったのだ。だが、それが単なる確率でしかないこともわかっていた。いくらその数値が高いとしても、決して飛躍的に高い数値ではないだろう。そんなことに神経を使っても、自分の病気が改善されるわけではないことも理解していた。5年生存率が高くなったからと言って、自分が生き残る側に入ることを保証しはしない。確率は希望になるかもしれないが、自分が生き残ること、それだけが自分にとって意味があることである。5年後に生きているかは、自分にとっては0か100%でしかないのだ。自分の30%が生き残っているなんてことはありえないのだ。
とりあえず、5年後に生きているように、頑張って治療をして生きていこうと思った。




