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第三章 肺がんと胸椎の手術 三の4 手術の成功

手術の成功

 翌日目が覚めた。体はたくさんのチューブにつながれ、首はコルセットで固定されていた。大手術から生還することができたのだ。まもなく、医者がやって来た。医者から当初予定していた通り、最後まで手術ができたことを聞いた。万歳を叫びたかった。がんの手術が成功したのだ。

 いくら手術室で開胸しても、もしリンパ節や大動脈にがんが浸潤していたならば、すぐに閉じられることになっていた。医者からそう聞かされていた。目が覚めても、自分の手術がどうなったのか、自分でわかりようはなかった。手術は最後までいったのだ。ということは、全身への転移もないということだ。

 がんを宣告されてから初めて、心の底から「よかった」と思えた。もし今回手術ができなければ、死はかなり身近なものになっていただろう。それはいくら能天気なかれでも頭の中にこびりついていたのだ。今回の手術で、体の中のがん細胞が一掃できたとは思っていない。それががん治療の基本だとも聞かされているし、自分でも小さながん細胞がからだのどこかにいるのではないかと思う。でも、はっきりとがんに侵された臓器はなくなったのだ。

 これから大手術の後遺症が出て、それに立ち向かっていかなければならないだろう。いまもたくさんのチューブやコードにつながって、体が自由なわけではない。とにかく、ひとまず休もうと思った。それほど憔悴しきっていたが、がんに勝利した心地よさが全身を包んでいた。至福の時とはこうした時をいうのだろう、とKは思った。


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