【ホラー風】短編小説12「自殺サイト」
「はー、バカらし。呪いなんてあるわけないのにな」
俺は自分の部屋で、パソコンの画面に向かってそんな独り言を言った。
画面には赤一色の画面に黒い門司で「これを見ると死ぬ!」とでっかく書かれた文字が映っていて、その下には仰々しい文句が羅列されていた。
「これが噂の呪われたサイトってやつか」
今巷で話題になっている「呪いのサイト」は、これを見たものは数日後には自殺するというものだった。
「小学生のいたずらでもこんな陳腐なもん作らないよ」
それはそれはとてもサイトとしては陳腐という言葉がふさわしいぐらいのひどい出来ということを素人の俺ですら感じるぐらい。
「お化けでも出てきて殺されるのか?それはそれで面白い。来てみろってもんだ」
俺はお化けなどは怖がるどころか興味を持っていた。
会ってみたいとも思ったことさえある。周りからはちょっと変わり者だとか言われることもしばしばあったり。
「さて、仕事に.....」
立ち上がるとふと女性の写真が目に入る。この女性は俺の愛妻、N美だった。写真の中のN美はこちらに笑顔手を振っている。
「N美.....」
俺はその名をつぶやいた。もう会えないその人の名を。
N美は二年前、交通事故で病院に運ばれたが、間も無く死亡が確認された。
しばらく悲しみに打ちひしがれた。
今はそれを乗り越え、生活をしている。
「言ってくるからな」
写真に語りかけ、俺は家を出た。外では太陽がいつも以上に眩しかった。
「先輩知ってます??あのサイトの噂」
「あー、死ぬって奴な」
後輩があのサイトの話を始め、つまらなそうな返答で答える。
「本当かどうかはわかりませんがアレを見ると、自殺しちゃうらしいですね」
「ああ、俺もみたが今の所大丈夫だ」
「見たんですか!?アレ!?」
まさかの一言に後輩は驚いた様子でこちらを見る。
俺は特に表情を変えることなく、手に持っていたおにぎりを口に放り込んだ。
「大丈夫なんですか?いくら噂とはいえそれすごい危険なんじゃ.....?」
「だーいじょうぶ。俺が自殺するように見えるか?」
「それは.....」
深刻そうな顔をする後輩に何回も大丈夫と声をかけ、口をモグモグさせる。
自分でも少しずつ心配になって来たが、大丈夫だろうと高を括っていた。
次の日、俺は1人で昼食を取っていた。
「はあー!結局何も起こっていない。ガセネタだったのかなやっぱり」
その時だった。目の前にいつの間にか女性が現れた。それは懐かしさをひめたー。
「お、おまえなのか!?」
突然の出現に動揺したそう言うとその人物はニッコリと微笑む。
「なんで.....」
とっくに乗り越えたと思っていた。だが、悲しみというのは消えることのなく重くのしかかってくる。そしてまるでタトゥーのように心の中に永遠に刻まれて行く。
「そうか、また一緒にいたいか.....あの時のようにまた.......分かった。俺もそっちに行くから待っててな」
フーッとスライドして行くように後ろに下がったその女性を俺は追いかけた。そこに道がなくてもどこまでも....。
「先輩!何やってるんですか!?」
落ちようとする俺にたまたま屋上に訪れた、後輩が声をかける。が、その声は届かず、ビルから飛び降りた。後輩はその場に崩れ、しばらく空を見上げる。しばらくするとマンションの下からは悲鳴が聞こえて来た。
「あなたが来た時には、もう飛び降りる寸前だったんですね?」
後輩は警察に現場の状況を聞かれ、静かに、「はい」と答えた。警察はふーむ、と難しそうな顔になった。
思い出したように後輩はこんなことを喋りだした。
「呼んだんですが全く反応しなくて......飛び降りる前、とある人の名前を呼んでいたんです。二年前交通事故で死んだ先輩の妻、N美の名前を.....」




