「村人A、出会う。」
「勇者様御一行が来たぞぉーー!!!」
低音の渋いおっさんの声は村中に響き渡った。
「ついにこの村に勇者様が来たらしいわよ!」
「勇者様をお出迎えしないと!」
この村に勇者様が来るのは実に三十年振りだそうだ。
なんでこんな村に再び足を踏み入れたのかは分からない。
でも、勇者様が来たのは間違いないらしい。
まあ、いいか、寝よう。
「ちょっと!勇者様が来たのよ!早く起きて支度しなさいな!」
朝から声が大きいのは母親だ。
支度をしろ?
俺は7時間睡眠して長生きする男だ。
そのためには後30分寝る必要がある。
勇者様が来たくらいで何を騒いでるんだか…
面倒だし、適当にあしらうか…
「ほーん、行ってら」
「何馬鹿な事言ってるのさ!あんたには村で勇者様と一番最初に会話する第一村人の役割があるのよ!さっさとお行き!!」
そう、俺の家は代々伝わる第一村人の家系なのだ。
五年前に死んだ俺の父は三十年前、そう俺と同じ16歳の時に第一村人で勇者様御一行を案内したそうだ。
「ちっ…面倒だなぁ、俺じゃなくてもいいだろうが」
ボソボソと呟くが、結局俺は第一村人の役割を果たすこととなった。
適当にそこら辺の服へ着替え、外へ出て村の入り口へと足を運ぶ。
村の門で構えていたのは四人組の勇者様御一行だ。
大きな弓を背に構え、腰には剣をぶら下げており、漆黒の鎧を装備した白髪のダンディな老人。いかにも強そうで、大柄で、パーティーのまとめ役と言ったところだろうか。職業は狩人とかそんなところだろう。
身長程の長さの杖を地面に突き刺し、いかにも魔法使いといったような、青を基調としたローブを身に纏った金髪のイケメン。その表情はどこか気だるげでやる気の無さを感じる。職業は間違い無く魔法使いだろう。
大きな本を両手で抱きしめ、小柄な体を白いローブで身に纏っている緑髪の少女。下を向きがちで、な何故か護ってあげたくなる少女だ。職業は僧侶とといったところだろう。
そして、最後は勇者様…えっ!?
長い赤髪をなびかせて大きく凛とした目、背中には逞しい大剣を背負い仁王立ちする気が強そうな美少女、この世のものとは思えない程の美少女。白い鎧を装備し、白いマントがよく似合っている。
あれが勇者様なのか!?
脚は勝手に走り出していた。
俺はそこら辺の村人とは一味違う。
あの勇者様が忘れないような村人になってやる!
「勇者様ぁ!!!俺がこの村の村人Aです!!!」
つづく