ようじょ・はーと・おんらいん≪短編版≫
「何だそのタイトル、ふざけてんの?」
「いやいや、マジでこういうタイトルなんだっつーの!」
ようじょ・はーと・おんらいん。
会社の同期であり友人の月本健二に前々から一緒にVRMMOをやろうと誘われていたが、そのゲームタイトルがそんなふざけた名前だとは思ってもいなかった。
VRMMOとは、仮想現実大規模オンラインゲームのことであり、まるで現実のような仮想空間の中で、例えばモンスターと戦ってみたり、例えば鍛治なんかをして生産プレイをしてみたりというのが一般的なのだが、月本が持ってきたそれは少々、どころかかなり趣が違ったゲームだった。
一応言っておくが、俺、小日向悠介はロリコンだとかそういった性癖はない。ないったらない。
月本が、スマホの画面を見せてくる。件のゲームの公式サイトのようだ。
「えーっと、何々?『自分自身が幼女となって、懐かしのおもちゃや遊具で遊びまわる。子どもの頃の心を取り戻そう!』?完全に危ない人の趣向じゃん。さすがにこれはねーよ」
「いや、俺もさすがにね?無いとは思うんだけど、けれどだ。俺とお前の名前で、βテスターに当たっちまったんだよ。しかもGギアまで貰えるおまけ付き」
「うえ、マジかよ。Gギア貰えるとか奮発しすぎじゃねーの」
Gギアというのは、このVRMMOというジャンルのゲームをするために必要な機械だ。ゲーム機本体といっても差し支えはないだろう。頭にかぶって使い、この機械を通じて、様々な仮想体験を行いことができる。ちなみに1台15万もする超高額なゲーム機だ。
だがしかし……
「自分が幼女になるっていうのはなぁ」
自分で言うのもなんだが、俺は身長180cm、体重は75kgある。一般的な男性から見ても、かなり巨漢だ。太っているわけではなく、鍛えているから、筋肉が付いているのだ。
そんな俺が、幼女になるゲームをするっていうのが、すでにもう、おかしいだろう。
「Gギア貰うためだと思って我慢しろって。1ヶ月のβテストだけやれば、後は好きにしていいんだからさ」
「だってあれだろ?VRってたしか、性別とか偽れなかったんじゃなかったっけ?仮想空間技術の進歩は凄まじいものがあるけど、あんまりにも現実と違う姿だと、精神に異常をきたすって」
「その辺のことは俺も詳しくはわからんが、こうして世に出ている以上大丈夫だろう。」
果たして何が大丈夫なのかと、気楽に言う同僚を小一時間ほど問い詰めたかったが、生憎そんな時間もなく。
俺はしばし悩んで、けれど、Gギアは欲しかった。
「わかった。付き合ってやろうじゃないか、そのゲームに」
「そうこなくちゃな!物はうちに届いているから終わったら取りに来てくれ。その後ログインしようぜ。俺は昨日ちょっとやってみてるから、いろいろ教えてやるよ」
「了解」
っと話しているうちに休憩時間が終わりそうだ。
俺は急いで、手にしたパンを口に詰めて、残りの業務に手をつけた。
すべての業務が終わり、その帰り道。
月本の家に寄って、ゲームセット一式を受け取り、コンビニで飯を買ってから帰宅する。
一人暮らしの家には誰もおらず、薄暗い部屋だけが俺を待っていた。
さっさと飯を食べ、せっかくもらったそのゲーム、『ようじょ・はーと・おんらいん』のセットアップをする。
Gギアにインストールが出来たので、早速それを被り、ゲームを起動する。
なんだかんだ言っても、ちょっと楽しみだったのだ。仮想現実というものが一体どんなものなのか。一度は体験してみたいと思っていた。決して幼女になることを楽しみにしていたわけではない。決して。
「ようじょ・はーと・おんらいんへようこそ!さっそくきゃらくたぁめいきんぐからおこないます!ぷれいやぁでぇたをすきゃんしているのでしょうしょうおまちください!」
若干甲高い声で、舌ったらずに喋るゲームガイダンスの音声に、俺の精神はさっそく疲れ果てている。まだ開始数秒にもかかわらず、だ。
こうして身体データのスキャンを行っている最中にも、「あとちょっとまっててね☆」といった感じに、数分おきに喋るのはやめてほしい。
「すきゃんがおわったよ!あなたのあばたーはこちらです!かみのいろやかみがたはへんこうかのうです!へんこうしますか?」
俺の目の前に、黒髪ぱっつんの、目がクリッとした幼女、いや、美幼女の画像が映し出される。強面の俺の顔とは似ても似つかない、が、どことなく、パーツが俺に似ている気もする。娘とかができたら、ああいった感じになるのだろうか。
あれが俺のアバターになるのか。というかメイキングって割に自動生成しか出来ないのか。まぁ、あまりにも元の身体と違うと危ないというのは聞くから、それの対策なんだろうな。
髪型が変更できるというので、せっかくだから、ちょこんと2つ、結ってみた。全体は下ろしているが、一部分だけを結っている。
姪っ子がこんな髪型をしてて可愛かったのを覚えている。
髪型を変更して、メイキング完了のボタンを押す。
「さいごに、なまえをきめてね!」
名前、所謂ハンドルネームとかそういうものか。
今までのゲームだと、厨二っぽい男らしい名前にしていたから、ちょっと悩む。
悩んだ末に、小日向からとって、「ひな」にした。これなら幼女っぽいだろう。
「では!ようじょ・はーと・おんらいんのせかいへ!いってらっしゃい!」
ーーーーーー
「んっ……これが、げーむの……っ!?」
自分の声に違和感を覚える。舌ったらずな喋りもそうだが、何よりも声が高い。
自慢じゃないが俺の地声はかなり低い。なんせバリトンボイスだ。そんな俺が、あどけない幼女の声で喋っている。なんと滑稽だろうか。
ということは、姿ももうさっきみたあの幼女の姿なのだろうな。さっきも見たのだけど、もう一度鏡か何かで見てみたい。キョロキョロと周りを見渡すと、ぎょっとした。
幼女。
幼女。
幼女。
どこもかしこも幼女だらけだ。
砂場で遊ぶ幼女。滑り台で遊ぶ幼女。室内で積み木やぬいぐるみで遊ぶ幼女。
今更だけど、ここは……幼稚園や保育所のような場所なのか?
なんだか自分がここにいるのが場違いなように感じる。いや、自分も周りから見れば幼女なんだけど。
そういえば、月本はどこにいるんだろうか。
ちょっと歩いてみよう。そうすれば、鏡とかも見つかるかもしれない。
立ち上がってみると、随分視界が低く感じる。それもそうか、元の俺が180cmなのだから、子どもの身長だと、100cmない子だっているだろう。この身体の身長がいくつなのかはわからないが。
一歩足を踏み出すと、太もものあたりにヒラっとした感覚。
ふと下を見れば、
「す、す、す、すかーとっ!?」
そう、膝上の短いスカートをはいていた。
よく見れば周りの幼女たちもみんなスカートをはいている。そりゃそうだよな、幼女だもの。幼稚園児らしく、スカートに、スモックを着ている。当然俺も同じ格好だ。初期装備というやつなのだろう。
だけれど、俺がスカートをはくのはおかしいだろう!?
そう思って身体をわなわなさせていると、後ろから声をかけられた。
「こんにちは!おなまえおしえて!」
「え?えっと……」
うおっ!幼女に話しかけられた!通報される!
って今は俺もその幼女だし、本物じゃなくてアバターの幼女だろ。きっと中身はおっさんだ。
金髪でウェーブのかかった長い髪、パッチリとした目に、ぷにぷにしてそうなほっぺた。
まさしくこちらも美幼女だ。そんな美幼女はこっちをみるなり、笑いをこらえながらこう言った。
「ふふっ、どうようしすぎ。わたしだよ、わたし」
「?わたしっていわれても、んん?」
目の前の幼女は胸元についた名札を見せてきた。
赤いチューリップの形をした名札には、平仮名で「るな」と書かれている。
そんな名前の知り合いはいないが……るな……ルナ……月……え……嘘、だろ?
「もしかして、つきも……」
「あーあー!ほんみょうは、だめ!」
おっといけない。
ネット上のマナーとして、なるべく本名は出さないようにと、月本に教えられていた。
けれど、はっきりした。
目の前の幼女は、俺をゲームに誘った張本人、月本健二だ。
それにしたって……
「るな、はない。ないわー」
「う、うるさい。あなただってにたようなものじゃない。なによ、ひなって」
「みょうじからとったの!」
「みょうじ?あ、ああ、そういうこと」
月本、いや、るなは合点がいったようになるほどなるほどと頷いている。
けれど俺には疑問がいくつもあった。
「つき、じゃない。るな、しゃべりかたいつもとちがうよ?わたしもだけど……っ!?」
俺は、「喋り方がいつもと違うぞ?俺もだけどな」と言おうとしたはずなのに、口から出た言葉は、舌ったらずな女の子のような口調だった。
るなはちょっとまってて、というと、カタカタとキーボードを叩く動きをした。
直後、メールが届く。Gギアはスマホと連動して、メールのような機能はすぐに見れるようになっている。
俺はシステムメニューを開く。メニューには、一般的なゲームの装備のことだろうか、お着替えと書かれた項目、ゲーム内のメッセージ機能、スマホ連動機能、クエストのことだろうか、お手伝い一覧と書かれた項目、ログアウト、といった具合に項目が並んでいる。他のゲームのようにパラメーターとかが無い分、項目が少なく感じる。
俺はスマホ連動機能を使い、メールを見る。メールは月本からだった。
『喋りにくいからこれはメールで説明するが、このゲームの中だと、言語モジュールなんかに干渉がかかって、動きや喋りがかなり制限される。世界観を壊さないためだな。だから、幼女のような喋り方がしか出来ないし、動きも同様だ』
といった内容の文章が、俺の目の前に表示される。
俺は「はぁ!?」と叫びたかったが、それすらも変換され、
「ふぇぇ!?」
と、かわいらしい叫び声になってしまう。叫んだ途端に、凄く、恥ずかしくなってくる。
「とにかく、そういうことだから、さっそくあそぼう!」
るなが、俺の手を引っ張って駆け出す。ふにふにと柔らかい、幼女の手だった。
駆ける2人の姿は、元気な遊ぶのが楽しみで仕方がないといった様子の幼女と、初めてきた場所に、恥ずかしがってしまっている幼女だった。片方は俺で、もう片方は同僚なのだが。
そんな同僚、もとい元気系幼女に引っ張られてきた場所は、滑り台だった。
象の身体をモチーフにした、保育園とかにありそうな滑り台だ。幅が広くできていて、2人同時に滑っても大丈夫そうだ。
「さ!あそぼう!」
「えっ!?」
いやいやいや、ちょっとまってくれ、まってまって。
見た目だけなら滑り台で遊ぶ幼女、何もおかしいところはない。
だがしかし中身は27歳会社員男性 (独身)だ。滑り台で遊ぶのは、きつい。精神的に、きつい。
そんな俺の内心を知ってか知らずか、るなは俺を引っ張って滑り台の階段を上っていく。
階段の段数でいえば、20段もないぐらいの、俺の元々の身長と同じぐらいの滑り台のはずなのだけれど、やけに高く感じる。なんというか、嘘だと思うかもしれないけど、ちょっと怖いぞ。
「ほら、いくよっ!」
「ちょっ、ちょっとまっ、きゃぁぁぁぁ!」
るなが俺の手を引いて滑り台を滑る。ぶわぁっと風が顔に当たる。お尻がすすーっと滑っていく。
時間にして、10秒も滑ってないだろう。あっという間に、滑り終わった。
俺の心の中に、不思議な感覚が残る。
だって、ただ滑り台を滑っただけなんだぞ?ただそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない。それなのに。
「ねぇ、るな。……もういっかい……」
「うんっ。いいよっ」
「つぎもいっしょにすべろ」
「もー、ひなちゃんはこわがりだなぁ」
俺は、るなとずっと手を繋いでもらって、何10回と滑り台を滑った。きゃーきゃーと叫びながら滑った。ただそれだけなのに、楽しかった。童心に返ったような、不思議な気分だった。
ーーーーーー
「よぉ」
「おっす」
会社の昼休憩。
俺は月本と顔を合わせた。
これが、あの元気系幼女の中身だと思うと、なんだかなぁと思う。
「……これがあの恥ずかしがり屋の女の子の中身だと思うとなぁ」
「やめろ。同じことを思ったのは俺もだけど、やめろ」
俺たちは黙々と飯を食った。
普段ならもうちょっと雑談をするのだが、昨日のことがちょっぴり恥ずかしく、お互い事故になりかねなかったので、何も言えなかった。
飯を食い終わると、月本が話しかけてきた。
「今日もインするだろ?」
「……あぁ。悔しいけど、ちょっと面白かった。」
そう。面白かった。あのちっこい身体で、滑り台を滑って、友達と手を繋いで遊んで、というのが、大人になった今の気持ちとはかけ離れた行為が新鮮で、確かに面白かったのだ。
だから、今日もインしようとは思う。
「じゃあ、また10時くらいか?」
「家帰って飯食ってからだから、それぐらいだな」
「おっし、じゃあ今日はクエストやろうぜ」
「クエスト?」
あのゲームに似合わない単語が出てきて、俺はぎょっとした。
「まぁ、後で説明してやるから。とりあえず、まずは仕事しようぜ」
頭をぼりぼりと掻きながら、月本は仕事に戻っていった。
俺も、ほんのちょっと夜のことを楽しみにしつつ、仕事に戻った。
ーーーーーー
「それで、どこにいくの?」
相変わらずたどたどしい、舌ったらずな話し方で、俺の手を引く幼女、るなに話しかける。
「あそこ!」
そう言ってるなが指差す先には、保育園の施設があった。
保育園の中にるなに手を引かれて入っていく。どうやら保育園の中では靴を脱がないといけないらしい。無駄に凝ったゲームだった。
俺は普段と同じように、腰だけ曲げて靴を取ろうとした。
「ちょっ!ひなちゃん!ぱんつ、ぱんつ!」
俺はハッとして、その場にしゃがみ込んだ。周りには幼女しかいないはずなのに、パンツを見られたかと思うと恥ずかしくてたまらなかった。ちょっと涙目にもなった。
「もー、ちゃんとちゅういしなきゃだめでしょー」
「だってぇ……」
そりゃあ普段はスカートなんて間違っても履いたことはない。
だからこの失敗は仕方がないはずなのだ。
それでもなぜか泣きそうになるのを抑えられない。よくできた感情モジュールだ。まるで、俺自身が幼女になってしまったような錯覚に陥ってしまいそうだ。
そんな俺を、るなが優しく引っ張っていってくれる。なんか、ちょっとお姉さんって感じだ。まったくの同期のはずなのになんでだろうな。
連れてこられたのは、給食室とでも言えばいいだろうか、おばさんのNPCがなにか料理を作っている場所だった。
「おばさん!なにかおてつだいありますか!」
るなが元気よくNPCのおばさんに話しかけた。
おばさんはにっこりと優しく微笑むと、
「そうだねぇ、あそこのお皿をこの布巾で拭いてもらおうかねぇ」
と言って、テーブルの上を指差した。
それと同時に、目の前に、『おてつだいをしますか?』というシステムウインドウが表示された。
突然だったので、俺は小さく「わっ」と両手で口元を抑えるようにしてい驚いた。どうにも、仕草まで幼女のそれになっているようだ。
「『はい』をえらんだらおてつだいはじまるよ。はやくやろっ」
「う、うんっ」
俺は恐る恐るシステムウインドウにタッチして『はい』を選ぶ。
すると、左上に『おてつだいちゅう』という表示が出てきた。
るなに手を引かれてテーブルの前に立つ。テーブルは俺たちよりも高くできていたが、足元に台座があるので問題なく届いた。
目の前に皿が10枚ほど積み重ねられている。るなは早速横にあった布巾で皿の水気を取っていく。
俺も、真似して皿を拭いた。
ふきふき。
ふきふき。
元々の自分の身体であればそんなに大きくない、中皿ぐらいの大きさでも、この身体だととても大きなお皿に見える。
そんなお皿を、るなと2人でふきふきしていく。
ふと横を見れば、「たのしいね!」と言わんばかりに、るなが笑顔を見せてきた。俺も、にっこりと笑い返す。
全部のお皿をふき終えると、おばさんが近づいてきた。
「まーまー!偉いわねぇ。お手伝いができるなんて、本当偉いわぁ」
と言って、その大きな手で、俺とるなの頭を撫でた。幼女の身体には少し強い力だったけれど、やったことを褒められるなんていつ以来だっただろうか。
ここ最近は、仕事もうまくいかないことが多く、上司に怒鳴られてばかりだったと思う。
ただ皿を拭いただけなのに、オーバーに褒められた。
でも、それがすごく嬉しかった。
撫でられた頭を抑えて、えへへと笑っていると、左上のシステムウインドウが、『おてつだいせいこう!』に変わっていた。
るなに、メニューのお手伝いの項目を確認するように言われたので、早速確認してみる。
・おてつだい おさらあらい くりあー!
15Gがおくられました!
という表記があった。
「おてつだいするとね、おかねがもらえて、そのおかねでふくとかりぼんとかがかえるんだよ!」
とるなが説明してくれた。
俺もるなも今は初期装備のスモックとスカートだ。
こうやってお金を増やして、いろいろ個性を出していくのか。
そう思うと、もっとお手伝いをしたいと思った。
「ほかのおてつだいもあるの?」
「もちろんあるよ!こんどはこっち!」
るなに引っ張られてとてとてと駆けていく。
その日はお手伝い三昧だった
ーーーーーー
そんなこんなで2週間がすぎた。
あれだけ馬鹿にしていたゲームだったが、すっかりハマってしまい、今では毎日ログインしている。
今日も休憩中に月本にあったので、今日もインするか聞いてみた。
「おう時間はいつも通りな。今日は誰か別の人とも遊んでみるか?」
「お、いいな。……と言いたいが、あの身体になるとどうにも人見知りになるんだよなぁ」
「へぇ、ひなちゃんはかわいいですねぇ」
「てめ、ここでそういうこと言ってんじゃねえよ!」
さすがにこの身体でひなちゃん呼びされるのは駄目だろう。普通に気持ち悪い。
「ところで、最近調子いいってうちの部署の女の子が話してたけどどうなのよ」
「あー、昨日珍しく部長に褒められた。最近表情が柔らかくなったなって」
「斉藤部長が言うなんてめずらしいな。……ひなちゃんになって遊んでるからかねぇ。俺も最近後輩を引っ張っていて、成長したなって言われたし」
「あー、るなの時に俺のこと引っ張って行ってるからかもな」
「かもな」
あのゲームを始めてからというもの、「最近優しくなりましたね!」とか、「最近の先輩話しかけやすくなったッス!」とかよく言われるようになった。
確かに俺は身長も高く、強面で、話しかけづらい雰囲気があったのは自覚しているが、そんなに変わっただろうか。
一緒にゲームをしている月本ですら、丸くなったと言ってくる始末だ。
ただ、それを悪いことだとは思わない。むしろ、変えてくれるきっかけを作ったあのゲームに感謝したい。
「お、滑り台の熟練度がもう少しで上がるから、新遊具が解放されるかもだってよ。今日はそっちに行ってみるか?」
「でもそういうのは混み合ってそうだな。まぁ、インしてから考えようぜ」
「それもそうだな。じゃあ残り時間も頑張りますか」
うーんと背伸びをして、月本は仕事へと戻っていった。
俺も仕事を片付けて、はやく遊びたいな。そう思った。
「ようじょ・はーと・おんらいんへようこそ!」