人殺し達5
署長室に入ると中には署長は当然の事、先ほどの食堂の男と見慣れぬ男が立っていた。しかも、きっちりとブラインドがかかっている窓に顔を向けてだ。
「神津君、まずはじめにこれからある依頼を受けるか?という問いに答えてもらいたい。それが重要だそうだ・・・」
苦い顔で署長が告げる。俺に権限はないのだと表情から滲み出ている。神津は署長が小間使いにされて我慢できるような人間ではないと知っているだけに考えさせられる物があった。
「それについては、ここに来た時点でやらざるを得ないのでしょう?どうもそういうような話し振りでしたから」
どぶさらいの様に何でもやる俺を選んで呼び出すあたり、すでに目をつけていたのだろうということは解ったような物だ。
「・・・だから、やりますよ。ええ、なんだかしらんが・・・」
男の後姿が笑ったように見えた。それも、冷たい笑いだ。男はかさつくような空気の中、空気が抜けるような声で喋りだす。
「この事件は、まだ終わって無くてね・・・ああ、この事件というのはもうご存知だろう?朝の騒ぎの奴さ――それの後始末・・・正に後始末なんだがね、正直なところ、我々の仕事なんだがどうもうまく行かない事がいくつかあってメンバーが一人かけてしまったのだよ」
「君には――君にはそのメンバーの代わりに我々のチームの一員になってもらいたい。もちろん仮のだがね・・・なに、表向きの仕事を主に頼むつもりさ、人が足りない分そういう仕事が出来ないのだよ、今回はまあ、ちょっと仕上げの時には手伝ってもらわにゃあならんだろうがね」
いろいろと都合があるのだよ・・・と後から付け加えて黙る。