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プロローグ
作りかけの高層ビルの群れとぽっかり開いた空き地に囲まれたその場所はどんよりとした空と湿った風を迎えて、猶、独特のすがすがしさを持っていた。
行きかう人もまばらなそこは、まだ作られてあまり年月のたっていない事を示す清潔感を備えている。大きなガラスをたくさんはめ込んだ建物の横曇り空の薄暗さに、ぼんやりと街燈はその灯を燈し目の前に広がる公園との道をうっすらと照らしていた。
昼間というにはちょっとためらいたくなるような薄暗い昼下がり、一人の男がぼんやりと港湾の続く風景を眺めている。ちょっと遠くからビル風のうなる声が聞こえ、すぐ傍らの植え込みからは草の虫の声が聞こえてくる。そんな様々な声の語る物語に男は聞き入っているのだった。




