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恋勉。  作者: 恋文 あお
4/4

・変化・


「はああ…」

満月(るな)は花の香る湯に浸かり、大きなため息を吐いた。

「(流石に、言い過ぎだよ…私!)」

今日、放課後。私は先生とお話しました。


「先生は、どうして教師になろうと?」

「俺は中学生時代の担任に憧れて、気が付いたらここまで来てた。今思うとほんとにあっという間。…どうしてそんな事聞くの?」

「そうなんですか。私、佐蔵(さくら)先生を見てて、毎日思ってたんです。この人、教師になれて嬉しいのかなって。」

「…どういう事?」

「宿題は確認するべきだし、遅刻しないのは当たり前だと思うんです。山田先生みたいになれとは思いませんが、もう少し教師らしさが必要だと感じます。」

「はあ、教師らしさ…。宮野さんはしっかりしてるんだね、こんな子が生徒の中にいるとは思わなかったよ。確かに、俺は最近浮かれていたかもしれない。」

「…私、言い過ぎてしまったかも知れません、ごめんなさい。」

「いやいや、寧ろ宮野さんに感謝だよ。」

「…これだけなので。さよなら。」

「うん、さようなら。」


思い返すと本当に恥ずかしい。自分の発言一つ一つが馬鹿馬鹿しく思えてくる。あと何時間で再び顔を合わせなければならないのか…。胸が痛む。私は湯の中に溶けこんだ。



「おはようみんな。今日は主要5科目の授業が全部かな?頑張れよー。」

「「(あれ、先生なんかハキハキしてる。)」」

私はひたすらピカピカのどうってことない自分の机を、冷や汗を垂らしながらじっと見つめている。佐蔵先生が変わった喜びと、あまりにも変わりすぎた分の焦り、それら両方が自分が元であるという恐ろしさと、ひたむきに戦っているのである。先生には目もくれず。

「学習委員、1時間目までに俺の教卓にみんなの宿題積んどいてね。」

「え!宿題見んの、佐蔵先生?」

「うん、それで当たり前だしね。」

頭がグルグルして痛い。でも、同時に何処かで達成感も感じていた。私は今までのために溜まった、こなした宿題の数々を学習委員にどっさり提出した後、再び自分の世界へと潜り込む。

「宮野さん、具合でも悪いの?」

「!!…いえ!ハハ…」

驚いた。先生は意外にも平然と話しかけてきた。驚きすぎて返事があやふやになってしまった。不安になり、そっと顔を上げる。

「…ああ。顔色、そんなに悪くないね。」

「え、あ…はい…。」

きっと今、私の頬は真っ赤だと思われる。顔が熱い。真夏の太陽を見上げているような気分になった。

「あ、ヤバい1時間目始まる。宮野さん無理しすぎないでねー。」

「…。」


私はこの後、授業内容が一つも頭に入ってきませんでした

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