とある彼らのバレンタイン
愚智者=パラドクス(矛盾内包者)様 × にゃん椿3号様による
萌え企画「バレンタイン☆プロジェクト」参加作品
「なあ、なんで何にもなしなんだ」
不満げに彼がいうのでオレは苦笑する。
「だってオレはゲイだもん」
「なんだよ?それなんか関係あるのか?」
(まあ、もともとノンケだったこいつにはわからないか……)
「今日は女の子ががんばって告白する日なんだよ。オレは女の子じゃないから何もしないの」
「けどさぁ……それは日本だけだろう?基本的には愛する人にって日じゃんかよ」
「だったら、お前はオレに何かくれるわけ?」
彼はまずったという顔だ。滅多に見せないこういう顔がみれるだけで、オレは結構うれしいんだけど。それは内緒だ。
まあ、オレは何かしてもいいかなとは思ってたけど、さすがにチョコを買うのは気恥ずかしい。
「ごめん……俺。何にも用意してなかった」
しょげてる姿も可愛くてってのも内緒。
「いいよ。別に……まあ、4月14日に二人で食事でもしてくれればいいかなぁ」
「4月14日?なんで?」
「不思議なことにさ、その日は同性愛者のバレンタインってことになってるんだよ。いつのまにかね」
「へぇ……それさぁ、前倒しでっていうのなしか?」
「何言ってんの?さっき夕飯食ったじゃんか」
いや、まあそうだけどさと彼はつぶやく。最近、お互い忙しくてようやく二人の休日が重なったから、それだけでいいとオレは思ってたけど、彼はそれだけじゃなかったらしい。彼にとっては、やっぱりバレンタインは特別なんだなとオレは思った。
「オレ、先に風呂入ってくるけど……お前どうする?」
彼はびっくりしたような顔をした。
(そりゃそうだよね。オレ、再三ことわりまくってたもんな。いっしょにお風呂とか……まあ、今日はいいかなぁって思ったけど……)
「俺も入る!」
(そういう満面の笑みで言うかなぁ……)
普段の営業スマイルとは違う顔。
「今日だけだからな」
一応釘をさす。
調子に乗られたら……恥ずかしくて死ぬ。だから、今日だけ特別。
【終わり】