悪魔ノ名ヲ冠スル存在ノ物語 ~ 悪魔×人=? ~
珍しく短編です。
当初は『日常記』の作中で出す予定でした。
昔々、とある村で邪悪な悪魔が誕生まれました。
その悪魔には、三つだけ出来ない事が有りました。
一つは死ぬ事。悪魔は不死身でした。
二つ目は、人間の一度目の『願い』を無視する事。二度目の願いは、叶える必要は無いのでした。
そして三つ目は、人間の『願い』を捻じ曲げる事。悪魔は当初、人間の操り人形でした。
…………そして悪魔は、人間に絶望しました。
悪魔は、囁く様に問い掛けました。
Q・オマエハ、ナニヲノゾム……?
大きな屋敷を持つ、とある強欲な商人が願いました。
「私は、この屋敷を埋め尽くす程の富を願う」
悪魔は指先を一振り、屋敷を埋め尽くす程の黄金を虚空から召喚しました。
黄金に押し潰されて、商人は死にました。
恋に悶え苦しむ、とある美青年が願いました。
「私は、美しく清らかな乙女の愛が欲しい」
悪魔は指先を一振り、美青年に魔性の魅力を与えました。
数多の乙女の愛を手に入れた美青年は、数多の乙女に嫉妬で殺されました。
とある大帝国と戦争中の、とある共和国の将軍は願いました。
「私は、憎き帝国を蹂躙出来る程の力が欲しい」
悪魔は懐から核融合爆弾の設計図面を取り出し、将軍に渡しました。
将軍は部下に核融合爆弾を造らせ、試しに敵陣の真ん中に発射してみました。
出現した巨大な火球は敵陣を完全に呑み込み、将軍達の陣も呑み込みました。
将軍は跡形も残らずに消えました。
とある敬遠で賢い神父は、眼前に悪魔が現れた事に驚きましたが、こう願いました。
「お前は邪悪な存在だ。死ね!」
悪魔は驚きましたが、次の瞬間には手にした大鎌で、自らの首を刎ねました。
大鎌は悪魔の手をすっぽ抜け、神父の胸に突き刺さりました。
神父は死に、死ぬ事を許されていない悪魔は生き返りました。
悪魔は死ななかった事に安堵しましたが、やがて死ねない事に絶望するようになりました。
人間にも、自らにも絶望した悪魔は……壊れ始めました。
そんな時、一人の人間が悪魔の前に現われて願いました。悪魔は絶望の中で、その願いを聞きました。
「私はお前と入れ替わる事を望む。肉体はそのままに、魂だけ……」
……悪魔は、その願いを叶えました。
悪魔の魂は人間の肉体へ、人間の魂は悪魔の肉体へ。
悪魔だったソイツは、ただの人間となりました。
そして、新しい悪魔が誕生まれました。
悪魔は、穏やかに問い掛けました。
アナタハ、ナニヲノゾム……?
人間は疲れたような声で答えました。
「……死を。未来永劫の絶対的な死を……」
悪魔は指先を一振り、その願いを叶えてあげました。
悪魔として、人間に死を与え続けたその魂は、自ら望んで悪魔に殺されました。
新しい悪魔が人間を殺したのは、その時一回だけでした。
新しい悪魔は、狂い壊れる事無く、惑い堕ちる事も無く、ただ在るだけの存在となりました。
その悪魔が今何処にいるのか、それを知る人間は一人もいません。
しかし、悪魔は確かに…………在り続けているのです。
……………………何時か、貴方も出会うかも………………
テトネ達が幼い頃に聞いていた童話、というコンセプトで書きました。
『善ノ悪魔ノ日常記』、宜しく!
毎度の事ながら、誤字脱字有りましたら御免なさい。
文才の無さに関しては許してください。




