小さな討論会4
直:
黙っててもしょうがないな。
具体的にって話だったし、宗教と輪廻の話も出たから、その線で話進めて良いか?
徹:
あぁ。頼む。
直:
分かった。じゃあ、進めよう。
いきなりだけど、人類って多数決が好きだよな?
咲:
あぁ、なんか凄い遠回りの予感…
直:
大丈夫だよ。そんなに遠回りしないって。
咲:
期待してる…。
直:
一番信者の数が多いのはキリスト教だ。で、さっきも言ったけど、キリスト教は輪廻転生を認めてはいない。ここまでいいか?
徹:
あぁ。
直:
話は変わるけど最近またテレビ見てると、前世だオーラだが流行ってるよな?
鉄:
確かに。
咲:
江○さんがブレイクしてから、なんかブームって感じだね。
直:
うん。みんな、あの手の番組見てどう感じるの?
鉄:
どうって言われてもなぁ。あの人は本物っぽいと思ってたけど。
咲:
悪い人には見えないしね。
徹:
大御所も付いてるし、結構信用できそうかな…と。
直:
いや、江○さんの話じゃないんだけどね…。確かにテレビ用でなく普段もあのままなら良い人だろうね。
で、俺が聞いてるのは「あの」番組でなくて『あの手』の番組です。どう思いますか?
鉄:
どうって…。ホントっぽいとかウソっぽいとか色々だけど…
咲:
・・・・・・
徹:
まぁ、そういうこともあるんだなぁとか思うけど?
直:
ふ〜ん。
やっぱり信じてる人って、ボーっと見ちゃうんだな。
鉄は理由が違う気もするけど。
鉄:
オ、オイ!
徹:
じゃぁ、お前はどう見てるんだよ。
直:
俺は時々、笑える時がある。
咲:
笑うの?
直:
あぁ、笑える。時々呆れて、時々腹が立つ。でも止められなかったりもするけど…
咲:
何で?
直:
だってよ〜、よく「前世はナニナニでした」って言ってるけど、日本人かヨーロッパ人の確率が異常に高いと思わない?
徹:
まぁ、確かにそんな気もするかな…特に江○さんは。
直:
あの方の場合はね。テレビじゃ芸能人相手だから、個性的だったり才能のある人も多いって事で、ヨーロッパ人が多いのかもしれないけど、にしてもヨーロッパ人の頻度が高いよな。それに当たり前の様に日本人も。
でも、これって普通に考えておかしいよ。
鉄:
…と、言うと?
直:
ヨーロッパは昔から主にキリスト教だよ?輪廻転生は無い筈の人々が日本人に生まれ変わってるなんて、バチカンが聞いたら怒るだろ?
徹:
それはそうだけど、輪廻があるなら仕方ないだろ。
直:
まぁそうだな。じゃ次だ。
今現在の地球の人口は何人か知ってる?
徹:
65億くらいか。
直:
そう。
じゃ日本の人口は?
徹:
1億2000万人位だろ。
直:
正解。1億2000万〜1億3000万人位だ。
昔から世界の人口割合が大きく変化していないとしたら、日本人は常に地球の全人口の50〜60分の1しか居なかった筈、じゃない?
徹:
まぁ、多少変化するだろうけど、国土面積から考えても…
あ…
直:
気付いた?
徹:
あぁ、確率的には前世が日本人である可能性も50〜60分の1になる筈、か。
直:
ご名答。
つまり、せいぜい2%って事だ。
咲:
そうなるの?
徹:
確率で言えばそうなるよ。
鉄:
でも…血縁関係とか同一民族とか、輪廻の傾向に偏りがあるんじゃねーの?
直:
だよな、そう思うだろ?でも、だ。
じゃあ何でヨーロッパ人が多いんだ?
鉄:
あ…そうか。
直:
今の人口分布が、過去に遡っても大きく変わらないと仮定した場合、前世として登場する三人に一人はインド人か中国人になる筈だ。ジャンケンみたいなもんか。でも、滅多に聞かないぞ〜「あなたの前世はインド人です」って。
徹:
確かになぁ…。
しっかしお前、良く見てるなぁテレビ。
直:
その言い方は引っかかるけど、とり合えず無視して進めるけど、逆に俺から見たらよく何の違和感も感じないもんだと思うけどね?
鉄:
すんません…
直:
ヨーロッパ人は妙に「中世」の人が多くて、日本人の場合は「江戸時代」の人が多い気もするしね。結構バリエーションが無いと思う。
で、これもおかしいの。
徹:
もう聞くしかないね。
そいつは一体何故ですか?
直:
とり合えずヨーロッパ人を忘れて日本人に絞る。その上で、鉄の言った理由が的を射てると仮定して、日本人から日本人への輪廻が高確率で起こるとすると…。
鉄:
すると?
直:
数が足りん。
徹:
はぁ?
直:
日本の人口は今、1億2000万〜1億3000万人位。でも、明治維新前にはたった4000万人位しかいなかったんだ。だから、この150年位の間に日本人は三倍に増えた。
輪廻転生までの時間を数百年としたけど、江戸時代がいくら長かったとしても、江戸の人全員が今を生きていても足りないかも知れないぜ、守護霊も背後霊も幽霊も必要なんだから、これは苦しいぞ。
咲:
だけど、もっと昔を生きていた人達も居るんだよ?
鉄:
江戸時代の人が前世で出てくるんだから良いんじゃねーか?
徹:
なるほど、良くないのかぁ…
直:
そう、良くないの。
分かり易く、と思って日本人に絞っんだけど、逆効果だったみたいね。
という訳で世界人口で考えよう。
今の世界人口は約65億人だ。でも最初から人類は65億人居たわけじゃない。30億だった時もあれば、10億だった時もある。時代を遡れば徐々に減って、要するに例えば世界人口が1万人だった時もあった訳だ。
咲:
う…ん。
直:
1万人からだと、今は6万5000倍に増えた事になる。
咲:
考えたくない…
直:
でもこれなら分かるだろ?魂が足りなくなるって事。
だけどね、実はね、本当は真逆なんだよ。
咲:
更にややこしいのぉ…
直:
そうでもないけど…少しね。
咲:
はぁ。私は置いてって…
直:
そうする。
今、地球人は65億人。守護霊が一人に一人と決めたから守護霊分で65億人。幽霊は無視しても、今現在の人間が生きている為に130億人分の魂が地上にあることになる。
輪廻に至るまでの時間を例えば300年とすると、平均寿命を70年と仮定しても、65億の4倍は魂があの世で待機している必要がある。とすると人口65億の都合6倍、つまり全部で390億人分の魂がどこかに存在している事になる。
但し、これは甘い見積もりの上、これ以上人口が増えない事を前提にしている。ガ○ダムの世界のように宇宙にまで人類が進出するとなれば、人類はスペースと食料さえあればいくらでも増えるから、こんな数じゃなくなるはずだよ。
とにかく、こんな莫大な数の魂を、人口一万人の時代から確保していたと考えるのが、果たして自然ですか?
徹:
さすが技術屋。理に適ってる考え方だな。確かにおかしいよな。
咲:
そうなの?それだけ居たって事じゃダメなの?
直:
それでも構わないんだけど、少なくとも自然ではないよね。
それと、良くは知らないけど、多分世界人口も日本のように、産業革命以降辺りから急激に増えたんじゃないかと思うのよ。となるとね、江戸時代を生きた人になんか、まだ輪廻の番が回ってきてないよ、多分。
とにかく、人口1万人時代に、相応の数の魂しかなかったとしたら、玉不足で現在が成立しない。逆に人口1万人時代から圧倒的な数の魂があったと言われるとそれはやたらに不自然だ。どう解釈するのも自由だけど、俺はこの不自然さを認められない。そんだけ。
鉄:
はは〜。恐れ入りました。
徹:
参ったな…
またまた沈黙が訪れた・・・




