表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

小さな討論会2

トイレとキッチンに向かった二人が戻り、小さな討論会は再スタートした…



鉄:

今…、トイレでふと思ったんだけど…。

なんか、結論聞いちゃった気がするんだよね…。直の話じゃ、全部人間の作り話って事で、以上終了じゃねぇか?

咲:

私もそう感じたけど、でも…だから霊を否定する根拠にはならないんじゃない?

徹:

ん…。神も霊も人間が作った。伝承は否定されず、人の本能が今もそれを受け入れている。こんな感じか…

話の筋は正しいと思えるけど、『だから霊は居ません』じゃ、確かに弱いよな。

鉄:

でも全部、人間の所為にしちまえば、それ以上はないぜ…

咲:

それって、直の言う神様と同じだね。

直:

あ〜そういう見方もあるな。

でも、そんだけ人間の脳は傲慢だって事だろ。

咲:

じゃぁ…あのぉ、霊が居るとしたら、何が問題なの?

直:

問題?

咲:

あはは。実はね、直の話は良く理解できてる積りなんだけど、神様とか本能とか、遠回りというか話が大き過ぎて、なんかピンと来ないのよ。だからもう少し身近と言うか、スケールの小さい話にしてもらえないかなぁ〜なんて思って。あはは。

鉄:

私は馬鹿だから分かり易い話にしてって事?

咲:

馬鹿は余分!そういう鉄だって難しい話は苦手でしょ?

直:

いやぁ…、極めて易しい話をしてた積りなんだけど…

徹:

直、分かるけど、ちょっと意味が違うみたい。

直:

意味?

徹:

だって、テレビの話位しか、霊とか幽霊って言葉すら殆ど使って無いじゃん?

直:

あぁそう言えば…

徹:

だから、もう少し具体的に霊の話をしませんか?って事だよ。

直:

なるほどね…

鉄:

そう言えばそうだな。咲、茶化してゴメン。

咲:

え?べ、別に良いよ。気持ち悪いから謝らないでよ。

徹:

じゃぁ、そういう訳で直、霊の話を中心に続けようや。

直:

いいけど…、じゃ何の話から行く?



…無言の数十秒…



直:

またかよ…

無いならまた、俺が回りくどい事言い始めるぞ?



…無言の数十秒…



直:

だめだな。

じゃぁ、今度は質問ではなくクイズです。

鉄:

クイズ?

直:

そうです。

それでは問題です。

三大オカルト、幽霊・UFO・超能力。

俺は基本的に全て否定ですが、「もしも」存在するとしたら、可能性が最も高いと、「俺」が思っているのはどれでしょう?

徹:

UFO

咲:

UFO

UFO

直:

なんでやねん…。

鉄:

だってお前、昔から宇宙人は絶対に居るって豪語してたろ。

直:

そうだけど、あんまり偏るから…

徹:

で、正解は?

直:

超能力です。

咲:

え〜〜〜?一番無さそう…

直:

では二番目は何でしょうか?

徹:

UFO

咲:

UFO

鉄:

UFO

直:

またか…

でも残念ながら正解です。

徹:

はぁ。直にとっちゃ、霊は超能力以下ってか…。で、何でだ?

直:

あぁ、超能力・UFO・幽霊。全部無いと思ってるし、全部人間が作ったもんだと思ってる。

で、これらが世に広まり、市民権を得るにも全部人間が係わってる。

この「全部人間」がポイントなんだけど、まぁ広めたのはマスコミとしても、当事者として係わってるのはそれぞれ、超能力は超能力者・UFOは目撃者・幽霊は霊能者、だろ?

徹:

まぁ…そうだな。

直:

この中で、『自分がそのものだ』と主張してるのは超能力者だけだ。UFOの目撃者は宇宙人じゃないし、霊能者も幽霊じゃない。

徹:

うん…、だから?

直:

超能力だけは、再現性がある筈だし、科学的調査も、本人の協力があれば何時でも出来る筈だ。でも他は『本人』じゃないから無理だ。だから『もしも』本物が居るとしたら、最も証明し易いのは超能力だと思う。違うか?

鉄:

そう…だな。

徹:

確かにそうだ。でも、直が何を言いたいのかが分からねぇ…

直:

俺もだ。

徹:

はぁ?

直:

冗談だよ。こんなクイズ出す必要はなかったんだけど、みんな無言だったから遊んでみた。でも折角だからまとめると…

超能力は本人が主張している場合が殆どだ。だからそいつを調べればいい訳で、逃げ隠れする様なら偽者と判断すりゃ良いから、真否の議論に意味は無い。

UFOは雨が降るのを待つのと同じ。俺は宇宙人は絶対居ると思ってるけど、そいつらが乗り物で地球に来てるとは思わない。もしも来ていたり、これから来る事があるのなら、UFOには実体があるんだから、そのうち見つかる筈。だから議論しても仕方ないし、するならオカルト扱いでなく、科学として恒星間飛行が可能かどうかを論じるべきだ。

で最後が幽霊だけど、コイツに実は困ってる…

徹:

それだけ一気に行って、幽霊でストップか。

で何に困ってるって?

直:

それを言い出す為に、これだけ遠回りしちまった。

困ってるのは実体が分からねぇ事だ。

徹:

実体?実態じゃなくて?

直:

実体の方。勿論実態も分からねぇけど、先ずは実体の方。

さっきも言ったけど、今現在、霊の存在を主張している中心は霊能者だ。ところが、悪い事に霊能者にも流行り廃りがある。おまけに霊能者毎に言ってる事が微妙に違う。いや良く聞くと結構違う。だから、結局どの話が本筋なのかも分からない。という訳で霊の実体が掴めないんだよね…俺には。

鉄:

確かにバラバラな事言ってる気もするなぁ…

直:

更に年々、言う内容まで変わってきてる。

鉄:

そうか?

直:

ホントだよ。例えばだ、昔は確かに『背後霊』って言葉があったろ?

鉄:

あった…。ってか今でもあるだろ?

直:

でも大半の霊能者の口からは出て来ないよ。

徹:

確かに聞かない気がするな。

直:

だろ。

昔見たんだけど、俺の従兄弟が持ってた古い本には、確かにこう書いてあった。

『人には守護霊と背後霊がついている。守護霊は一人に一人だが、背後霊は多い人の場合は10人以上にもなる。守護霊はその人の人生を導く為にあり、背後霊は言わば応援団の様なものである。背後霊の中に野球選手が居たら、その人は野球が上手になったりする。つまり、守護霊は人生を導き、背後霊は才能や個性に影響する』って、まぁこんな感じで。ガキだった俺は、へ〜、なんて思ったのを覚えてるけど、今じゃ『背後霊』なんて言葉は絶滅危惧種入りしてる。

咲:

そう言えば聞かないね。聞いてもお笑いのネタだったり…。

鉄:

てか、背後霊がそういう存在だったって始めて聞いたよ。

直:

ガキの頃、既に古い本だったから、30年かそれ以上前かも知れないけど、その程度の年月で霊の在り方なんて変わるのか?

徹:

それじゃ、困るよな…

直:

だろ?

だから霊がどんな物かって、その実体は把握出来ないと思うよ、俺は。

徹:

じゃぁ…

直:

俺としては、霊の話をするなら、霊の在り方を定義して欲しい訳。と言うより、定義しないと議論が成立しないじゃん。

徹:

そういう事か…。でも…どうしよ。

直:

さっき言った通り、霊能者の弁はコロコロ変わるから、どいつの言う事聞いたら良いのか、本当はどう考えるべきかも分からない。これじゃ指針が無くてやっぱり議論なんか無理だ。

だから、『今ここだけ』で良いから、霊とは何かを定義して欲しい訳よ。

徹:

なるほど。ローカルルールって事か。

直:

そ。

いやぁホントに遠回りしちまった、ははは。

徹:

それなら、俺達三人は一応肯定派な訳だから、霊の在り方についてお前の質問に答えるよ。それを一応の実体として決めるって事でどうだ?

直:

それをこの討論会に於ける霊の実体で且つ、実態とするって事で良いんだな?

徹:

そういう事にしよう。確かに基準になる物は必要だし。

直:

でも徹、お前の仏教知識は要らないからね。ここでは宗教的な思想は必要ないから、一般論としての霊の『像』を頼む。

徹:

分かった。みんなもそれで良いな?

鉄:

おぅ。でも俺、よく分かんねぇぞ?

咲:

私も…。

徹:

良いんだよ。結局誰かから聞いた知識しかないんだから、その中で自分で正しいと思うことを言えばいい。意見が割れたらその時は相談って事で。

咲:

うん…。

直:

OK、じゃぁ聞くぞ。

先ずは人と魂の関係を教えてくれ。

徹:

魂は人に宿っている…の他に言い方無いな。

直:

一人に一つか?

徹:

そりゃそうだ。

直:

二重人格の場合は?

鉄:

そりゃ、話が別だろ。

直:

分かってる、冗談だよ。

で、その人が死んだら魂はどうなる?

咲:

体を抜け出して、天国に行く。

直:

天国って?

徹:

分からない。でも所謂、霊界だな。

直:

霊界って何処にあるの?なんて質問はしないけど、その霊界ってのは、俗に言う『あの世』と同じ意味で良いのか?

徹:

あぁ、それでいい。

直:

あの世に行った魂は、そこで何してんだ?

咲:

ボ〜っと?な訳ないね。

鉄:

修行…生れ変わる為に。

徹:

俺が聞いてるのはこうだ。

魂は霊界に上がると、来世に向けて歩き出す。精神修行したり、まぁ色々と。実はここがいきなりハッキリしないんだけど。で、ある程度ステージの進んだ霊は、現世に生れ出る赤ん坊の守護霊になる。その赤ん坊が死ぬまで付き添い、その子が死ぬと再び霊界に戻る。その後、ここもハッキリしないんだけど、自分自身が生まれ変わってこの世に再び生れてくる。ただ、あの世の時間軸はこの世と進み方が違うから、数百年を過ごしても決して長くはないらしい。

大体こんな感じだ。

直:

ま、俺が聞いてるのもそんな感じだよ。あの世はただ歩いているだけとか、現世と同じ生活してるとか、そんなのも聞いた事あるけどね。

で、二人も徹の説明で文句ないのか?

咲:

ないよ。要するに死んだらあの世へ、で、そのうち生まれ変わって再びこの世へって事でしょ。

鉄:

俺も文句なし。途中がハッキリしないのはみんな同じだろ。

直:

うん。途中はそんなに重要じゃないし。でも今の話で質問を少し。

守護霊ってのは一人に一人で良いのか?掛け持ちとか無し?守護霊の居ない人も無し?

徹:

一人に一人。掛け持ち無し。守護霊の居ない人も無しだ。実は違う話も聞いた事あるけど、俺は今言った通りで良いと思う。

直:

二人も異論はない見たいね。じゃぁ次。

生まれ変わるまでの期間は数百年で良いのか?

咲:

すぐ生まれ変わる事もあるって聞いた。

徹:

俺もだ。さっきの説明は一般論で、例外もある。誰かの守護霊なんかやらずに生まれ変わる事があるんだそうだ。だから、数日から数百年の間に生まれ変わる…かな。自分でも言ってて無理がある気はしてるけど…

直:

うん。それじゃ次に進もう。

それなら、幽霊ってのはどんなもんだ?魂とはどう違う?

鉄:

死んだ後、あの世に行かず、この世に留まった魂が幽霊だろ?

徹:

だな。この世に強い未練を持った魂は、素直にあの世に行こうとしない。その結果、霊界に行けなくなってしまって、この世を彷徨っているのが幽霊だ。

直:

所謂、成仏出来ない霊って事ね。

徹:

成仏は仏教用語だよ。敢えて使わないの、大変なんだぞ。

直:

そりゃ済まん。でも一般的になってる言葉は使って良いって。俺が言ってるのは宗教思想とか、そのまんま経典使われても困るって話だから。

徹:

あぁ、分かってはいるんだけどね。

直:

うん。話戻すけど、未練ってのは強い怨みとかも入る訳ね。

徹:

勿論。それに、あまりに突然死ぬと、自分が死んだ事が理解出来ない事もあるらしいから、そんなのも幽霊が誕生する一因かもしれない。

直:

なるほど。ま、大体俺の聞いている通りだよ。

そういう意味で、認識は意外と一致してるかもね。

もう一点、これって俺的には非常に重要なんだけど、生まれ変わり、つまり輪廻転生は、さっきも話に出てたな。これって、人間から人間だけなのか?前世が犬とか、来世がネコとかあるの?

咲:

ないんじゃない?

鉄:

でも大真面目に『あなたの前世は犬でした』って言ってた霊能者、テレビで見たぞ。

徹:

俺も色々聞いてるけどハッキリしないな。犬とかネコとか、ある気もするけど…。

直:

ほう…。割れたな。


直はそう言って再びタバコに火を点ける。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ