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小さな討論会10

徹:

なぁ直…

直:

ほんとに幽霊は居ないのかなぁ…魂なんかも無いのかなぁ…。

直:

無いな。

徹:

お前はホントにハッキリしてるよな。

何でそんなに断言出来るんだ。その自信は何処から来る?

直:

別に自信なんか無いさ。

最初に言ったっけ?俺は見たことも聞いた事も無いんだよ。だから理屈無しで信じることは出来ない。俺が信じる為には、その話が理にかなってる必要があるんだ。逆に言えば理に適ってさえいれば信じる事が出来るんだけどね…

徹:

理に適ってりゃ信じるのか?

直:

信じるさ。

徹:

例えば?

直:

俺は地球が自転してるなんて感じたことない。でもあらゆる観測事実が地球の自転を示しているし、宇宙の膨張も、相対性理論でもそうだ。データが捏造されてたらそれまでかもしれないけど、少なくとも『言ってるだけ』の霊能者の弁よりは確実に信用できるから。

徹:

なるほどね…

それに比べたら、幽霊話は酷いもんだよなぁ。

直:

あぁ。科学で説明できないとしながら正体は何らかのエネルギー体だと言う。エネルギーは科学用語だし、何らかのエネルギーなら観測できる筈だろ?てか、観測できないエネルギーって、その辺のセンスが素晴らしいと思うよ。

天国だって何処にあるのかなんて示されてなかった筈。でも科学の進んだ現代では、どうやら宇宙にあるらしい。逆に地下にありそうだった地獄についちゃ、最近存在感さえ希薄になってる。何処にあるのか示し難いからだろ。

霊は壁でも人でも何もかもすり抜ける。それなのに物を動かしたりラップ音立てたりと、バッチリ物質に干渉出来る。器用なもんだ。

写真にもビデオにも写りこめて、天国にも行かずに彷徨ってるくせに、呼んだ時には出て来ない。

見える人にだけ姿を見せて、死んだ事情まで話すくせに名前は名乗らない。

守護霊は守護してくれないし、犯罪を止めてもくれない。被害者になっても復讐は果たさず通りがかりの人間に八つ当たりしてるらしい。

悪人は地獄行きじゃないの?善人の魂中心で転生を繰り返してるなら、世界は平和になるだろ、そろそろ。

ぜ〜んぶ、無茶苦茶だと思わない?

徹:

まぁ確かにお前の言う通りだ。それは分かったよ。

次だ次。ちょっと視点を変えるけど、お前は人類が本能で作った幽霊という偶像を放棄していないだけだと言った。神や妖怪は放棄されつつあるのにな。じゃぁ幽霊はいつ放棄される?

直:

未来像か…

徹:

そうなるな。

お前の理屈が正しければ、幽霊もいつか否定されるだろ?

直:

そう思うけど、まだしばらく無理だろうな。

例えばあの江○さんだよ。さっきはあえて言わなかったけど、彼はツインソールとか言う説明で、魂が割れると言ってる。つまり同じ魂起源で、同じ前世を持つ人間がいるって訳だ。その他にも色々と説明してるみたいだけど詳しくは知らん。

ただその『ツインソール』って話は、さっき俺が展開した人口増加の矛盾、65000倍の話については辻褄合わせにゃ十分使える理屈だ。でも吟味すりゃまた矛盾が出てくる。結局前から言ってる様に『あぁ言えばこう言う』だよ。それを延々と続けてるのが心霊話の実体だし、恐らくこれからもずっとそうだろう。

俺に言わせりゃ「一々真に受けてたらきりがない」んだけど、でも当分続くだろうね。

徹:

それも分かってるつもりよ。問題はその先、当分続いた後は?

何がどうなったら放棄されるんだ?

直:

その先ね…

多分だけど、人類が生命を作りだしたら終わるんじゃねーの?

咲:

生命って、生命?生き物を作るって事?

直:

勿論そう。原始的な生命で十分だから、自己保存と自己複製を行う生命体をね。

鉄:

なるほど、実験室で生命体が合成できりゃ、神様も魂もいらなくなるって事な。

直:

その通り。俺思うんだけど、実は不思議なのは幽霊でも魂でもなく、生命そのものだよ。

人類の科学は進化や退化の仕組みだって100%把握できてないし、無機物から有機物を合成するところまでは出来ても、その先はダメ。どんな単純な生命体も作り出せてない。

それも踏まえて生命の不思議なら100%認めるよ。

咲:

バイオテクノロジーでも無理なの?

直:

そいつは遺伝子組み換えが中心だよ。要するに改造であって、オリジナルの生命を作る訳じゃないし。

徹:

それさえ出来りゃ、人は神の仕事が出来る事になる…か。

直:

そう言って良いかは分からんけどね。でも人工的に生物が作り出せるなら、神様は要らんだろ?それに人工的な生命に宿る魂って、イメージし難くない?

咲:

ねぇ、生命作るってそんなに難しいの?

直:

難しいさ。だから奇跡なんだよ生命は。

徹:

お〜直らしくない発言、『奇跡』とは。

あ、さっきのお返しな。

直:

はいはい。

咲:

生命の定義って自己…なんだっけ?

直:

『自己保存』と『自己複製』だろ?

保存とは自分が生きる為に努力する事、つまり餌を食うのも危険から逃げるのもそう。

複製は子孫を残す事、単細胞生命なら分裂がそうだ。

咲:

それを作り出せないんだね…科学って。

直:

う〜ん。咲、かなり分かってないよね?

咲:

あははは。

だってバイオテクノロジーとかクローンとか、ニュースでしか見てないけど、新しい生物作っちゃうんだと思ってたから…さっきまで。

徹:

簡単どころか恐ろしく難しいんだよ。だって直が『奇跡』って言う程だから。

直:

徹、そんなに気に入った?

でも『奇跡』なんだよ、生命は。

鉄:

でもよぉ、成分とか全部分析できてんだろ?なんで作れないの?

直:

『奇跡』だから。

鉄:

ホント、らしくねーな。分かるように言えよ。

直:

説明が難しいってか、俺だって詳しくも正しくも知らないから。

ただ、鉄お得意の化学反応な。

鉄:

お得意じゃねーし。

直:

最も身近な化学反応は「燃える」って事だろ?

鉄:

だから?

直:

燃えるモンの中心は有機物。石油でも石炭でも天然ガスでも、生命由来って事は知ってるよな?

鉄:

あぁ。

直:

で地球温暖化の原因といわれるのは二酸化炭素。これは有機物の燃えカスだろ?

鉄:

そうだよ。

直:

人類の科学は、それさえ元に戻せないんだぜ?

鉄:

そうなのか?

直:

そうだろ、出来てりゃ地球温暖化が問題になるかよ。

鉄:

あぁ…

徹:

二酸化炭素は植物以外に減らす手立て無しか。

直:

いや、技術的には出来るだろうけど、でも例えば1個の二酸化炭素を処理するのに何倍もの二酸化炭素が出るようなエネルギーが必要なんだろ、多分。

徹:

ありえるな。それじゃ意味無いし。

直:

その位、有機物を人工合成するのは難しいって事だろ。

考えりゃ分かるだろうけど、燃えるゴミに分類されるものって、生物由来か石油製品だろ?100%人工合成ってまず無い。

そのレベルで、遺伝子ほど複雑な化合物は無理なんじゃない?正しくは知らないけど。

鉄:

なるほどね、無理なのは分かったよ。

そんじゃ、幽霊話はまだまだ当分楽しめるんだな。

直:

そうなるだろうな。江○さんみたいな本物っぽい人も次々出てくるだろうし。俺は今でもそうだけど、エンターテイメントとして見りゃ、良いんじゃない?

徹:

エンターテイメントか…



☆★☆★☆★☆★



鉄:

なぁ、さっき直の言った『ツインソール』だけど…。人口増加に矛盾しないってヤツ。

直:

うん、なに?

鉄:

その説が正しけりゃ、かなり良いんじゃねーのか?

直:

まぁ…

徹:

でもそれじゃ、魂の意味が無いって言いたいんだろ?

直:

分かってるねぇ…

鉄:

分かんねぇ…

直:

何て言ったら良いかなぁ…。魂が割れるって事は、増えるって事だろ?

鉄:

勿論そうだよ。

直:

うん。地球生命もそうだったと言われてるよね?今、この地球上にいる生命の全ての祖先は、たった一つのDNAに帰依するって。どのレベル、どのステージにいる生命から魂が宿るのかは知らんけど、仮に全ての生命に魂が宿るとしたら、それって生命と同じ歴史になるよな?

鉄:

つまり最初に生れた生命と一緒に魂も生れたって事?

直:

そう…、それじゃ何で輪廻するんだ?と思わない?

鉄:

え?良く分かんねぇな…

直:

だって、生物と魂が一緒に生れるんだよ?

ならどんどん生れりゃ良いじゃん。輪廻する必要が無いだろ。

鉄:

いや、意味が違うだろ?

最初の生命と一緒に生まれたとして、それは魂としても最初のレベルじゃん。そいつが輪廻して生命も進化するとか考えられねーのか?

徹:

生物の進化も魂の進化と共にあるって?

鉄:

そうだよ、そんで同種の生物が増える時、魂も分裂して増えるとか。ダメか?

直:

良いなぁ、それ。

お前、霊能者に向いてんじゃねぇか?

鉄:

茶化すなって。

で、どうなんだよ。

直:

だから良いって、その説。かなりの矛盾が解消できるよ。

鉄:

でもお前、全くそう思ってねーだろ。

直:

まぁな…

鉄:

何処がおかしい?

直:

う〜ん、それが俺の言う新説誕生そのものだと思うからね。辻褄合わせも正にこうやって進んできたんだろ。鉄がちょっと名のある霊能者で、これがテレビで放送されてたら、来週から定説のように方々の霊能者が言いだすよ、きっと。

鉄:

そーゆー事か…

直:

昔ながらの説じゃ、魂が輪廻転生を繰り返すのは、修行だなんて言われてるだろ。それが割れるんだぞ?別人に生まれて全く違う境遇を生きるんだ。勿論死ぬタイミングも違うだろうし、あの世でまた合体するって話なら面白過ぎる。

そりゃ良いけど、修行は何処行った?

前世の一つがクレオパトラでしたって人が30人位いるの?

ま、それも違う理屈で取り繕えるだろうけどね。まったくきりが無いよ。

鉄:

そうだなぁ…そう言われると無理があるかぁ。

理に適ってようが何だろうが、結局証拠が無けりゃ意味無しか。

直:

そうは言ってないけど、理に適うのと辻褄合わせるのは一緒じゃないからね。

咲:

江○さんて前世でも親子、前世でも夫婦とかって話良くするよね?それに先祖の霊が沢山後ろに居るとか、一緒に居るとか。

徹:

そうだな。

咲:

それなのに、前世がヨーロッパ人って話も多い。

直じゃないけど、よくよく考えると確かに違和感あるよね…

あの人も偽物で詐欺師?

直:

それは行き過ぎだろ。ま、もしあの人に鑑定なり霊視なりを頼んで、一回50万円とかなら詐欺師扱いでOKだけど。でも良識の範囲内なら、あの人は詐欺師でも悪人でもないよ。テレビ見てても感じるけど、彼の発言は道徳的に正しいし、立派なもんだと思うからね。あのままで教祖になるなら、俺は絶対入信しないけど正しいお導きが期待できるんじゃないの?

徹:

教祖…か。










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