表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

小さな討論会9

鉄:

やっぱって、徹もホントは幽霊なんか信じてないって事?

咲:

・・・

直:

ありえるけど…

徹:

あ、いや忘れてくれ。「やっぱ」は口癖みたいなモンだから。ま、確かに自信喪失気味だけど。

それより『霊なんか無い』それが事実なら、霊能者は全部偽物で詐欺まがいって事になるよな。じゃ世界中にやたらと詐欺師が居るって事?『直』流に言えばそれも十分に不自然だろ?

宗教はある意味学問だから同列で扱いたくないけど…

直:

でも、残念ながらそうなんだろうな。

悪意があるかどうかは知らんけど、適当な事言ってるのは確かだろ。半分お笑いの討論番組以外、霊能者が霊能者を批判してるのは見た事が無いし、たまにあっても、批判されてるのは素人が見ても偽物と分かるような輩だろ?って事は、各霊能者の思考はこうだと思う。

「自分は霊を信じている。だがホントは自分に霊感なんか無い。しかし、本物の霊能者はいる筈で、でも自分には見分けられない。自分が偽物とばれるのは避けたい。攻撃されるとまずいから、自分も他人は攻撃しない。」ってな。中には霊なんか居る訳無いと思ってる奴も居るだろうけど、どっちにしても有名霊能者同士の批判合戦とか見た事が無い。

鉄:

あぁ、確かに見ないね。

テレビで見るのは大体お笑いに近いし、直の言う通りだと思う。

徹:

それは分かるけど、でも…じゃぁ、霊能者はみんな悪意の塊の詐欺師なのか?

直:

そうは言ってないよ。宗教と同じで必要悪って事もあるだろ?その霊能力とやらで法外な金品でも要求してりゃ詐欺だろうけど、善意でやってる人が居ないことも無いだろう。それに、俺に言わせりゃ病気だけど、ホントに見えたり聞こえたりする人が居るんだろうしね。

徹:

どういう意味で?

直:

精神疾患とまで言いたくないけど、本人の認識としては見えちゃう人、かな。つまり本人は至って本気だけど勘違いしてる様な場合、とか。言い方微妙になるよ…要するに悪意が無ければそれは詐欺じゃないって事。見える人には見えるって話だから。

徹:

あぁ、そういう意味か。たとえ少し痛い人でも善意ならOKって事な。

直:

OKってか、残念ながら信じてる人が居て、それを説く人が居るなら需要と供給の関係だろ。詐欺師が相手じゃメチャクチャにされるから、だったら善意の人に相手して欲しいじゃん。俺には気持ちが分からないけど、宗教にすがる人と同じで何かにすがりたい人って多いし。

徹:

なるほどな。正しい指導者の言なら嘘も方便ってやつか。

直:

まぁ、そんな感じだな。

お前にゃ悪いけど、宗教家にも責任があるぞ。

徹:

なんか言いたい事分かるよ…

咲:

え、何?

徹:

ただの葬儀屋だって言いたいんだろ?

直:

そーゆー事。

特に今の仏教は生き方と言うか、日常生活の指導が無さ過ぎる。説法の機会も減ってるんだろうけど、信者に対する日頃のケアが無いんだよ。だから怪しい新興宗教に惹かれちゃう人が多いんだと思う。勿論全部じゃないけどね。

徹:

だよな。今じゃ葬式と法事の時くらいしかお坊さんに会わないもんな。滅多に会わないお坊さんより、新興宗教の勧誘とか怪しい霊能者の方が魅力的って事か…

直:

うん…。日本人てポリシー無いじゃん?仏壇も神棚も何でも有りで。なんかこう、神秘的なモンとか何でも受け入れちゃう国民性があるよな。だから霊能者とかも受け入れ易いんだろうね。

徹:

そうだよな。キリスト教に輪廻の教義が無いなんて知りもしないで、前世が欧米人だって受け入れちゃうしな。要するに教育の問題というか、子供の頃から馴染みが無さ過ぎるんだな。

直:

逆にメディアは一方的に発信してくる。しかも中心は霊能者の方で、宗教関係は無し。

まぁ、テレビで放送しても国会中継より視聴率取れないだろうな、説法じゃ。

徹:

はぁ…。


☆★☆★☆★☆★



直:

話、霊能者に戻すけど良いか?

鉄:

あぁ。本物と偽物の話な。

直:

そう、さっき霊能者同士の批判合戦を見た事が無いって言ったけど、その続き。

鉄:

あいよ〜。

直:

脱力すんな…まぁいいや。

もしもだけど、自分が本物の霊能力者で、他人が偽物と確信できて、且つそいつが間違った説でも展開してたら、鉄は黙ってられる?

鉄:

無理だね。そうでなくても霊能者って、なんか疑われてるじゃん。俺なら黙ってられないね。

直:

そうだろ。それが自然だと思う。だったら今だって、偽物の廃除に動く奴が一人位は居るだろう普通。

鉄:

確かにそうだ。

みんな自分が偽物ってばれるのが怖いって事か、それとも組合でもあんのかな…

ま、ニセモンになんか偉そうな事言われたかねーな。

直:

だな。

前に霊能者の言ってることが結構バラバラだって言ったけど、他の世界じゃ有り得ない。

徹:

そうだな。科学界で新仮設が乱発される事があっても、議論は尽くされるし、皆証明するために実験や検証が繰り返されるもんな。

直:

そう。『言ってるだけ』なのは霊能者位だよ。宗教が沢山ある現状から、全部偽物と考えた方が合理的だと言ったけど、霊能者も同じだと思う。てか、もし俺が本物の霊能者なら、霊の存在を証明するために科学界に協力する。居ないよな?そんな霊能者。

徹:

居ないなぁ…

でも…例えば霊が居る、それが真実だった場合、勿論霊能者にも本物が居る場合だけど、それで霊の存在を証明する方法があるのかなぁ…?

直:

さぁ。それは否定派の仕事じゃないし。

でも、名のある霊能者だって沢山死んでるんだから、誰か一人くらい公衆の面前に出て来りゃ良いんじゃない?一目瞭然だろ。

徹:

極論はそうだけど…でもそんな事許されないのかも知れないし。

直:

「許されない」って誰にだよ。ちょっと宗教思想に毒されてない?

ま、存在しない事は証明出来ないけど、存在も難しいだろ、証明は。結局は再現性だよ、物理的な観測や測定が出来ない事になってんだから、霊とのコミュニケーションが公の場で何度でも取れない限り、証拠とは誰も認めないだろ。

徹:

・・・

直:

あ、そう言えば…

鉄:

何?

直:

心霊写真って、ある意味証拠みたいに言われてたよな?

咲:

そんな時期もあったね。

直:

デジカメが普及して減ったんじゃないの?

鉄:

無いわけじゃ無いだろうけど、デジカメだと心霊写真らしきものがすぐ作れるだろ?

信じて貰えないから発表されないとか。てか、作りモンが多すぎんじゃねーの。

咲:

それに、すぐ消せちゃうし。

直:

なるほどね。でもおかしな話だな。

デジタルデータは逆に全ての情報が残るんだ。加工したかどうかなんてすぐ分かる。だから本物なら胸張ってデータで出せば良いだけなのに。むしろフィルム時代より証拠っぽくなるんじゃない?

鉄:

そう言えばそうか。

直:

実際、変なの撮れなくなってるんだと思うよ。

咲:

そう言われると、写メでもあんまり聞かなくなったけど…

直:

心霊写真にもブームがあってね。

咲:

ホント?

直:

うん。

これも詳しくは知らないけど、始めは一般にカメラが普及した頃で、次はインスタントカメラが大流行した頃だってよ。

鉄:

何で?単に写真の数が多いって事?

直:

当然それもあるだろうけど、正しくは素人特有のミスが増えたかららしいよ。要するに素人が正しい知識無しにカメラを使う頻度が増えたから、心霊写真も増えたって事みたい。

良くある二重露光とかの失敗写真はプロならすぐ見抜けるらしいけど、素人はそれが心霊写真に見えちゃうし、その上そいつを鑑定して本物だってぬかすニセ霊能者が居たから流行ったんだろうね。そういや使い捨てカメラ持ってる人減ったな…

鉄:

心霊写真は俺もなんか胡散臭いと思ってたけどね。

咲:

でも怖いのあったじゃん、いっぱい。

鉄:

そうだけどさ、オーブなんてホコリとそんなのの反射だろ?二重露光とかだって酷いのあったぜ〜。

直:

その二重露光とかがデジカメじゃ起らないから取れないんだよ。ポラロイドが一番写り易かったのも、構造的な理由があったみたいだしね。

鉄:

分かる気がする。その場で写真にしてるって事は、その場で化学反応バリバリさせてるって事だもんな。

咲:

鉄の口から化学反応…

鉄:

うるさいよ。

ん?徹、静かだな、どした?

徹:

凹んでんだよ。直の『宗教思想に毒されて…』は効いた…

直:

らしくねーな。別に嫌味で言った訳じゃねーぞ?

徹:

そいつは分かってるけど…





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ