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脇役最強主人公を攻略したいと思います。

作者: さくらぶし

「攻略キャラたちを説教したいと思います。」の幸村視点です。そちらから先に読まないとわかりません。続きではないので、期待してた方はすみません。

―――――俺は女が嫌いだ。

キャーキャー喚く声がうるさいし、色んな女が俺に寄ってくるから香水が混ざりあって気持ち悪くなる。しかも俺のことなんか何も知らないくせに、『ずっと好きだった』やら『本当のあなたを理解したい』やら告白をしてくる。


一般的に見て、俺の容姿は整っているのだろう。

こういうとナルシストに思われてしまうから嫌なのだが、周りの反応を見ていればそんなのは自然と分かる。しかも家は金持ち。幼稚園から大学までの色んな学校を経営してる。俺は次男だか、そんなことはあまり関係ないらしい。とにかく俺に見初められたい女が後を絶たない。


それだけならまだ苦手だけで済んでただろうが、それが嫌悪に変わったのは昔馴染みがいたからだ。

昔馴染みは母親同士が仲が良く、小さい頃からお互いの家を行き来し、よく二人で遊んでいた。

小学生の時はまだ恋やらなんやらはなかったが、中学生にもなるとませた女たちが俺の周りを囲むようになる。そうなると、 昔馴染みが女たちにとっては邪魔な存在になる。昔から変わらず俺と接する昔馴染みを見て、案の定女たちは嫌がらせを開始した。

昔馴染みからそれを相談されたが、俺が庇っても悪化するだけじゃないのかと、あまり真剣に取り合わなかった。というか、これを機に離れていってくれないかと思っていたのだ。

昔馴染みといえども、寄ってくる女には辟易していたから。

しかしあの女は何をどうやったのか、嫌がらせをした相手を手玉に取り、逆に俺の周りの女たちを排除しようとしていた。

その光景を目の当たりにした俺は吐き気しかしなかった。

俺自体は何もしていない。むしろ冷たい対応しかとっていない。なのに女たちは勝手に潰しあう。

俺に猫なで声を出す一方で汚く罵りあう。

特に昔馴染みは酷かった。

自分が一番だとか勘違いしてるからなのか、かわいらしい顔を歪ませて(昔馴染みは他の奴から告白を受けるぐらいには可愛い)、1対多数で罵声を浴びせる。こんな姿を昔馴染みの母親や俺の母親が見たら絶句するだろうなと思うぐらいその姿は醜かった。

……まぁ、それを横目で見つつ助けない俺も大概最低な奴だとは思うが。


そんなこんなで、幼稚舎から通ってたこの学校を辞め、高校からは海外に留学しようと考えていた。

しかし、そんな俺を見かねた父親が自分の経営していない学校を薦めてきた。

その学校も幼稚舎から大学まであるところで、条件的には今までの学校とそう大差はなかった。(ちなみに今までの学校も金持ちの子どもが通う学校だ。こういう学校に女子校はあっても男子校はない。社交の場で人との付き合い方を学ぶためだ。)

しかし俺はその学校に惹かれた。なぜかと言えば、良い目眩ましがいたからだ。

中等部から話題の生徒会役員。その2人は俺と同い年で、1人は1つ下、もう1人は2つ下だとか。

いずれも負けず劣らずの顔良し、頭良し、家柄良しと全校生徒の憧れの的らしい。

その噂を聞いてすぐ学校見学に行ったが、噂通り。しかも、高校の生徒会の顧問も優しげなイケメンと来たものだ。これは俺が入学してもそうそう目立つことはないだろうと思い、すぐに転入届を出した。

もちろん昔馴染みなどには黙って。

その学校は今の家からは遠いため、俺は一人暮らしを始めることになる。そうなればあの女とも接点がなくなり顔を会わすこともなくなるだろう。

本当に助かった。



そんな経緯を経てこの学校、藤乃宮学園に転入したわけだが、いくら目眩ましがいても油断は禁物だ。ということで、逆高校デビューをしてみた。

簡単な話が素顔を隠せるようにダサ男になったのだ。

素性自体は、うちの系列学校じゃないからバレないだろうし、顔さえ見せなきゃ女は寄ってこないだろうという俺の作戦は大成功と言えるだろう。

誰1人、俺のことを気にはしなかった。俺も馴れ合う気はなかったのでちょうど良かったが、『あの』生徒会の2人は俺のことを気にしたらしい。

生徒会入りを薦めてきたのだ。

家柄は、……まぁ調べればすぐにわかったんだろうし、成績も学年トップということで、是非入ってほしいと頼まれた。

最初は断ったんだが、どうにもこうにもしつこかったため、下っ端ならとOKを出した。

多分同情したんだと思う。俺が。

高校に入ってやることは格段に増えたはずなのに、それを処理するのは実質会長と副会長と顧問の3人だ。あとの3人の役員は役立たず。目まぐるしく動きながら勧誘してくる姿に同情を禁じえなかった。

それに、俺の正体を知っても何も詮索しなかったことや、似た境遇で仲間意識を感じていたんだろう。手伝うぐらいならいっかと承諾した。


この時の俺をものすごく褒めてやりたい。

生徒会に入らなければ、彼女と出逢うこともなかったのだから。



高校2年になり、中等部にいたころの役員が1人入ったことにより、少しずつ余裕が持てたころ。


――――――――彼女に出逢った。


彼女は顧問の受け持ちの生徒らしく、クラスの雑務などを引き受けていたらしい。そのため、顧問に会いに度々生徒会室を訪れるようになった。


最初は特筆すべきことがない、良くも悪くも普通の子だと思った。

一度も染めたことのなさそうなツヤツヤのセミロングの髪、タレ目気味な目が優しげな雰囲気を醸し出し、口角がいつも上がっている、美人というよりは可愛らしいが似合う普通の女の子。

皆に対して笑顔でいるが、本当の意味で笑っているとわかる。(俺の人を見る目は絶対の信用を持っている)たまに、顔は笑っているが目が笑ってない奴がいるが、あれとは全然ちがう。彼女は心から笑っているのだ。

だかそれだけ。あとは他と埋没しそうなぐらい印象に残らなそうな子だと、その時は本気で思ってた。

しかしその考えはすぐさま覆される。


元々気にはなっていたんだろう。

この学校に来てからというもの、周りに女がいなくなったばかりではなく、邪険に扱われていた。まぁ他の役員と比べればぱっとしない風貌だからな。

でも彼女は他と分け隔てなく俺に接してきた。『他の役員たち』と全く変わらずに。

俺とは普通に話せても、他の役員たちとは話せないという女しか見たことがなかったから、これは面白いと思ってた。

だからあの日彼女の声を聞き逃せなかったのだ。


あの日、俺は1人資料室で書類を片付けていた。

静かな部屋にふと女の甲高い嫌な声が聞こえてきた。いつもなら無視するのだが、その時は出来なかった。


彼女の声が聞こえたから。


声は窓の下から聞こえる。

そこは人目が付かないことから、いい話ではないと簡単に予想がつく。

……割って入ろうか考えていると、彼女の声が届いてきた。


「それで、お話とはなんでしょうか?」


凛と響くいい声だ。見た目に反したしっかりした話し方をする。彼女と直接話したことがあまりなかったので、思わず聞き惚れてしまった。


「わかんないの?あんた調子に乗らないで。クラスの雑用係りだからって生徒会室に入り浸りすぎなのよ。あんたみたいな平々凡々な女、あの方たちに相手にされるはずがないでしょう!?身の程をわきまえなさいって言ってんのよ!」

「そーよ。あの方たちはお優しいから何も言わないでしょうけどね、内心迷惑してるのよ!あの方たちに会うのはやめて。」

「不愉快だわ!」


よくもまぁ色々勝手に言えるもんだ。ならお前たちは相手にされてるのかっつー話だ。

やっぱり割り込もうと口を開いた瞬間、


「不愉快ですか?それは大変申し訳ありませんでした。まさか私の言動で先輩方をここまで不愉快にさせてしまっているなんて気づきませんで…本当にすみません。」


と彼女が謝ったのだ。ただの因縁で。


「わ、わかればいいのよ。じゃぁもうあの方たちには近付かないって誓いなさい。」

「それは出来ません。」

「はっ!?」

「なんでよっ!たった今私たちに謝ったじゃない!不愉快にさせたって!なのに…」

「それは先輩方の気分を害したことに謝罪したのであって、生徒会の方たちに接触しないのとは訳が違います。」


えっ違うのか?

と俺は恐らく因縁をつけた女たちと同じことを思っていた。


「私には頼まれた用事があって生徒会室に出入りをしているだけで、私用など1つもありません。大体、私用であんな面倒なところまで足を運びませんよ。」

「だったら他の人に任せれば…」

「他の方に任せてもいいですが、そうしたらその方が今度は先輩方のお気に障られるのではないですか?私は先輩方の『誤解』を解きたいとお話できますが、それが出来ない子ももちろんいます。だったら最初から私が受け持つ方が早いと思い引き受けているのです。」

「あんたやっぱりあの方たちのこと狙ってるんでしょ!」


その言葉に彼女は綺麗に笑った。まるで母親のように優しい笑みで。


「恋する女の子というものは本当に可愛らしいですね。私は恋をしたことはありませんが、そんな可愛らしい表情をされると羨ましくなります。……ですが、少し方向を間違っているようですね。その想いを向けるのは私や生徒会役員の周りにいる女の子ではなくて、好いた本人に向けるものではないでしょうか。今先輩方がしていることは決して褒められたものではありませんし、ましてや役員の方たちには先輩の想いが伝わりませんよ?」


その声は柔らかいのに冷たく感じた。

そして俺はそこで初めて彼女が怒っているのだと気付いた。


「……わかってんのよそんなこと。でも仕方ないじゃない!こうするしかないのよ!あんたに何がわかんのよっ!」


逆ギレした女は彼女に手を振り上げた。

危ないっと思ったその時、


パシッ


彼女が振り上げた手を止めた。

手と手を合わせて。


「先輩の気持ちはわかりません。先程も言った通り、私は恋をしたことがありませんので。ですが、私を叩いて先輩の気は済みますか?済むならいくらでも叩いて下さい。でも私は先輩の手の方が心配です。こんなに綺麗な手なんですから、腫らしてしまったらかわいそうですよ?大事になさって下さい。」

「あっ、私はこのあと用事があるのでお話の途中で申し訳ないのですが、失礼させていただきますね。今度はこんな場所ではなくお茶でも飲みながらゆっくりお話しましょう。」


そういって彼女はきれいな礼をして去っていった。

残された女たちは、なんなのあれ…といって呆然としていたが、俺としては笑いを堪えるので必死だった。

思えば、あの一連の出来事で俺は"オトサレタ"んだろう。

その後彼女、藤堂あかねのことを調べまわった。

すると出てくる出てくる『普通』とは言い難い事実。彼女の父親は小さな会社の社長だが、母方の祖父は日本屈指の有名会社の会長。その母親は一人娘で、母親もその娘である藤堂あかねもそうとう溺愛されたようだ。その証拠に、藤堂あかねには身を守れるようにと武道をやらせているにも関わらず、彼女には内緒で護衛を何人かつけているみたいだ。……親父さんはよく結婚を許してもらえたな。

そして実は一番気になっていた婚約者はいなかった。時代錯誤だと言われるだろうが、この世界にはまだまだ生まれた時からの婚約者や親同士が決めた許嫁などは珍しくない。しかも彼女と生徒会の顧問は幼馴染みだ。もしかしたら…とも思っていたが、とりあえずは一安心だ。


そんな風に藤堂あかねのことばかり気にしていたせいか、3年に上がった少し後から様子がおかしくなった生徒会役員たちのことに気がつかなかった。


最初は生徒会の仕事を疎かにするなんて珍しいとしか思ってなかったが、その頻度は徐々に増え、果ては顧問までそのことを容認するようになってしまった。しかも全く知らない女を生徒会補佐にし、仕事をするばかりかその女の機嫌ばかりを取る役員たち。俺は呆れと同時にこの状態は長く保たないだろうと確信した。

確かに生徒会は多大な権力を持ってはいる。だが、絶対かと言われれば否だ。ここはあくまで学校だ。王制の国ではない。誰かがリコールを口にすればあっという間に俺たちは役員から外される。それまでの辛抱だと、この時も傍観者に徹することにした。


しかしあの女に夢中になれる理由がわからない。確かに容姿は整っているといえるが、役員たちに向ける顔と他の者に向ける顔が違いすぎる。そんな安っぽい言葉で騙されるようならあいつらの将来は心配だな、などと考えていたら、案の定生徒たちの間で『生徒会リコール』の話が密やかに流れ始めた。しかも、それを実行するのがあの藤堂あかねだと言う。

俺の心は踊った。

予想、というか期待はしていたのだが、意外と面倒くさがりな彼女のことだから俺たちが卒業するのを待ってるとか言い出しそうなのに、積極的に動いているらしい。

律儀な彼女のことだ、真面目に(自分のことしかしてないが)仕事をしていた俺を巻き込まないようにするだろうし、リコールの話もしてくるに違いないと、最近は生徒会室に現れなくなった藤堂あかねとの逢瀬を楽しみにしていた。

……まさかあんな形で来るとは思わなかったが。


結果的に彼女は俺の目論み通り生徒会室に来た。

役員たちを説教するという名目で。


藤堂あかねの本気の説教はされている側からすれば恐ろしいだろうが、高校生にもなって床に正座をさせられて説教を受けているのを見る側から見れば爆笑ものだった。俺は笑いを噛み殺すのに必死で気付かなかったが、彼女が帰った後も正座をしつつ何かを考え込んでる奴らも思うところがあったらしい。次の日には反省の意を示し、なんとかリコールされないように彼女を説得したようだった。


それから奴らはうってかわったかのように今まで以上に仕事をし出した。が、藤堂あかねにも接触をはかり始めた。

報告と称しては朝と放課後に会いに行き、見張りと称しては放課後生徒会室に連れ込む。あの女に夢中になってた時も似たようなことをしていたが、明らかに違うのは、皆必死に仕事をしているのだ。藤堂あかねはリコールされたくないが為と思っているようだが、多分軽蔑されたくないのだろう。説教してる間の藤堂あかねの眼差しは侮蔑と哀れみが混ざったかなり厳しい視線だったから。


だが俺にとっては面白くない。

だからあいつらの報告を逆手に取って答えあわせと称して"二人っきり"で逢うことにした。


この時間だけは藤堂あかねを一人占めしてるようで甘美な時間だ。


もっとあかねのことが知りたい。色んな顔を見せてほしい。

……他の奴らをその瞳に写してほしくない。その可愛らしい唇で俺以外の名前を呼んでほしくない。俺以外のことを考えてほしくない。


欲望は尽きることがない。

まさか自分が藤堂あかねにこんなに夢中になるとは思わなかった。今ならあいつらがあの女に夢中になった気持ちも少しはわかる。


俺が距離を近付ける度にあかねが戸惑うのがわかる。頬に触れる度に眉をひそめ、でも顔が赤くなる。いつこの手を払うか見計らっても無駄だ。もう俺はあかねを逃がす気はないし、誰かに横取りさせるつもりも毛頭ない。


強くて優しい俺のあかね。

今はみんなのものかもしれないが、すぐに俺だけのあかねになってもらうよ?

囲いこむ準備は出来ている。

あかねはその身1つで俺に飛び込んでくればいい。


あぁ、でも1つだけ。

俺に捕らわれる前にやってほしいことがある。

因縁つけてきた女たちや役員たちにやって俺にやっていないこと。




早く俺に説教をして?

またまた詰め込みすぎました。そして裏設定?あります。言い訳も。活動報告を見ていただければ……先に言っときますが、幸村は変態だけど、Mじゃありません!

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― 新着の感想 ―
[一言] 本編同様幸村君視点もとても面白かったです。 最後の一言に噴出しました。
[一言] 途中まではすごく面白かったのですが、最後の幸村くんの独白で興醒めしてしまいました。 あかねさんが真っ当な人間なので、幸村くんを変態にしてほしくなかったです。 強引さや計算高さは良いのですが、…
[一言] あかねちゃんは面倒な人に捕まりましたね(笑) ここからどう転がっていくのか気になりますね(笑)
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