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殺意なき殺人

作者: 美里 和佐

    殺意なき殺人

    

    

   1

 日は傾き、道行く人もまばらになった。

 私は仕事を終え家路についていた。

 私の後ろを小学生低学年くらいに見える少年が歩いていた。

 ちょうど私が交差点に差し掛かった時に、歩行者用信号が点滅を始めたので、そこで私は止まった。

 私の後ろを歩いていた少年も横に並んだ。

 交差点の反対側から、一人の男性が、信号無視をしてこちら側に渡ってきた。

 それを見た少年はさも自然に交差点を渡り始めて、車にはねられた。

 信号無視をしてこちら側に渡ってきた男性は、それを見て私を睨んだ。

 その目は「私は悪くない、みんなする事だ。なぜ止めてくれなかった。」と如実に叫んでいた、

 人に限らず子供は大人の真似をして育つ。彼はそんな事もも学ばなかったのだろうか。

 殺意がないなら、子供の前で信号無視などしてはいけない。


   2

 日は傾き、電車に中の人もまばらになった。

 私は仕事を終え家路についていた。

 空いていたのでドア横のシルバーシートに座った。シルバーシートには、初老の男性が一人瞼を閉じて座っていた は目を開き、座る私を一瞥すると、再びまぶたを閉じた。

 次の駅で、数人の若い女性が乗ってきた。空いていたシルバーシートに座るなり、携帯電話を開いて、メールでも打っているのか、しきりに指を動かしている。

 電車が動き始めてたその時、瞼を閉じていた初老の男性が胸を抑えて倒れこんだ。

 苦悶に満ちた表情で開いた目は若い女性を、彼女の持つ携帯電話を見て、指差して何か言おうとしている。

 彼女は慌てて携帯電話の電源を切って、私を含めて周りを見た。その瞳は「私は悪くない、みんな車内で携帯電話の電源を切っているの?」と如実に叫んでいた。窓には「シルバーシートでは携帯電話の電源はオフ」と明記されているのに。彼女は文字も読めなかったのだろうか。

 殺意がないなら、シルバーシートでは携帯電話の電源は切らないといけない。


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