エピローグ
「エマエルちゃん……」
「メリルちゃん!」
あれからすぐメリルも救出され、エマエルは付きっきりで看病していた。
グリムも特殊部隊に引き渡され、事件は幕を下ろした。
「メリル、目を覚ました?」
「はい!」
メリルの治療をしている女医のパーシアが様子を見に来た。
「良かったね。お父さんとお母さんを呼んできてくれる?」
「はい!」
エマエルは元気よく返事をすると、超特急で走って行く。
「転ばないようにね!」
「はーい! ……きゃっ!」
遠くで盛大に転ぶ音が聞こえた。
メリルが目を覚ましたという一報はすぐカイムとアンジェラの元にも伝わり、みんな集まった。
「初めまして。私はカイムと申します」
「あ、聞いてます。エマエルちゃんと一緒に悪い人と戦ってくれたって」
「エマエルさんのおかげです。メリルさんを見つけたのも、エマエルさんなんですよ」
聞いたエマエルは、えへへ、と照れた。
「アンジェラも、今回は良くやってくれました」
手足数カ所に包帯を巻いたアンジェラが、痛みでひきつる笑顔で「ありがとうございます」と軽く頭を下げる。
「本当に、本当に申し訳ありません!」
深く頭を下げて謝ったのは、アーシアだった。
「操られていたとはいえ、アンジェラに大けがを負わせたのは私です! カイム様、処罰はいかようにでも……」
両手を出し、深く頭を垂れるアーシアに、カイムはそっと手を取る。
「ご存知と思いますが、洗脳や操作系魔法によって行われた犯罪は免罪されます」
「しかし、実際には立証が難しくほとんどが有罪だと……」
「それは、多くが証人不足だからなんですよ。今回は私たちが証人になれますので、免罪は確実です。あなたも深く反省されているようですし、今回は大丈夫ですよ。自分を責めないでくださいね」
「……ありがとう、ございます……!」
涙を浮かべながら、感謝の言葉を口にする。
「そういえばカイムさん」
空気を変えるため、思い出したように、エマエルが訊く。
「村長たちにいつ指輪を渡したんですか?」
「ああ。ゴーレム事件のすぐあとですよ。あれもグリムがやったものだったんですね、あれは気付きませんでした……。おっと、指輪でしたね。
あのあとすぐ、村長たちとお話しまして、そのさいに……グリムのことは伏せましたが。お守りという名目で渡しておいたものです。グリムはなんらかの精神操作系の魔法を得意としているという情報は入っていましたので、念のためにと。試験段階のものでしたが、上手くいきましたね」
「ありがとうございました。なんとお礼を言っていいやら……」
村長は恭しく頭を下げた。
「そんな、どうか頭を上げてください」
「しかし、繰り返されなくて良かった」
「繰り返す?」
「エマエルは知らんか。昔神隠しがあったんじゃよ」
「村長、それって……」
昔聞いたことがある。と、アンジェラが呟く。
「そう、アンジェラがまだ小さかった頃のことじゃ。
一人の小さな娘がおってな。村の皆からとても可愛がられておった。ところが、ある日突然いなくなってしまった。一週間、血眼になって探したよ。しかし見つからなかった。ついには神隠しとまで言われるようになった。
そして、およそ一ヶ月後のこと。闇森で無惨な姿となって発見されたのじゃ。わしらには身に覚えがなかったが、きっと精霊様の怒りを買ったんだと、村の皆が怯えての。その日の内に供養をし、今日まで過ごしてきた。村の祭りはそのための祭りでもあるんじゃ」
「そうだったんですか……」
『おい、エマエル』
「ふぇ?」
『今の話しは訂正させろ。あれは俺たちじゃない』
「え? 本当に?」
『俺がお前に嘘をついたことがあったか……?』
無い。悪戯はしょっちゅうだけど。