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言いたいこと

言いたいことがあるようです。

作者: 柊水仙

 どうもこんにちは。ただの高校生です。

 最近、身のまわりの物から、なんというか、思念のようなものを感じます。

 特に筆箱の中のものから物凄く感じるのです。これは、もっと勉強しろ、という持ち物の叫びなのでしょうか。


『ちげーよ!』


 ……今何か聞こえたような……。

 いやまあ、確かに勉強不足ですけどね、物にまで勉強しろと言われるのはかなり嫌ですね。親だけで十分です。


『ちがーう!』


 ……まただ……。

 勉強はするべきだと思いますけどね。読書やゲームが楽しくて、つい疎かにしてしまうのです。だって読書もゲームもワクワクするじゃないですか。特に冒険もの。ええ、大好きですよ。

 まあ、文房具からすれば、勉強せずに自分の好きなことをやっている持ち主などけしからん存在でしょう。でも、学校の授業にはきちんと出てるしテストの前には頑張って勉強してます。それに受験もまだ先の話です。今は少しくらい好きなことに割く時間が多くたっていいではありませんか。


『違うってばー!』


 ……まさかどこかに幽霊が……?


『幽霊じゃねーよ!』

『君のすぐ近くだよ!』

『気づいてー!』


 ひええ、かなりはっきり声が聞こえるようになったー! すぐ近くとか言ってるうううぅぅ! ホラーは駄目ー!


『だからちげーよ!』

『しょうがない。こうなったら……』

『筆箱さーん、ちょっと協力してー』


ガチャガチャ


 ひえええええええええ! 筆箱が動いてる! 中の物がガチャガチャ音たててるうううううううう! うわああああ! 筆箱が勝手に開いたあああああああ!

「よっと」

「おっとっと」

「とう!」

 ぎゃああああああ! 筆箱から、鉛筆が、シャーペンが、七色鉛筆が出てきたああああ!

「ぎゃあぎゃあうるさいなお前は」

「そんなにビックリした?」

「いつもの冷静なキミはどうしたの?」

 喋ってる! 口が無いのに…! うう、ホラーだ……。

「お前なあ……」

「ホラーじゃないよ」

「むしろキミの好きなファンタジーだと思うよ?」

 ファンタジー? あー、言われてみればそうかも。

「よし、落ち着いたな」

「ん、じゃあ本題に入ろうか」

「まあ、ちょっと聞いてよ」

 うん、わかった。

「俺たちはな、別にお前があまり勉強しないこととか成績に文句があるわけじゃない」

「私たちはね、君のことは結構良く評価してるんだ」

「ボクたちはね、キミの成績はなかなかだと思ってるよ」

 へえ、で、何に文句が?

「よく聞いてくれた!」

「それはね、私たちの扱いについてだよ」

「ずっと前から言いたいことがあるんだ」

 扱い? んー……もしかして鉛筆はこの間芯を折っちゃったことを怒ってる?

「いや違う。そんなことはどうでもいい。まあ、確かに折れたらかなり痛いから折らないようにしてくれると嬉しいけどな。俺が言いたいのは、もっと俺を使え、ということだ」

 ……シャーペンに仕事取られて悔しいの?

「そうだよ、悔しいよ。俺は使われないことが不満なんだよ! お前、俺に初めて会ったのいつか覚えてるか?」

 中二くらい?

「ちげーよ! お前は小六だったよ! お前がシャープペンシルを使い始めなけりゃ、俺はとっくにいなくなってるんだよ!」

 長生きでいいと思うよ。

「人間と同じに考えるな!」

 あー、わかったからそんなに怒らないでよ。

 で、シャーペンは? やっぱり先っちょを割っちゃったこと?

「そうだよ、何だよわかってるじゃないか。あれとっても痛かったんだから! あの時、君は私がヤバい状況だってわかってたよね? それなのに君は使い続けて、私が割れた後も使った! ちょっとくらい休ませてくれても良かったのに!」

 ああ、ごめん。後で接着剤で割れた破片をくっ付けるから許して。

 で、七色は? 鉛筆と同じことかな? かなり前からいるよね。

「うん、ボクはキミが小三の時からいるよ。それなのにまだこんなに長いのはかなり不満だね。そんなことよりも、キミの文房具を代表して言うよ」

 ほう、代表とな?

「八つ当たりはやめて」

 どういうこと?

「キミはイラッとした時とか悔しい時とか、不愉快な時は手に持ってるものを強く握ってるっていう自覚ある?」

 例えばいつ?

「この間、授業中眠かったでしょう? キミは寝たいの堪えてたのに隣の生徒はすやすや寝てたよね。その時キミはボクを凄い力で握ったんだよ! すっごく苦しかったんだから!」

 えー、そんなに?

「そうだよ! ボクを握る前には鉛筆の一番長いのを強く握ってたけど、あの子がどんなに悲鳴をあげてたか知ってる?」

 ううう、ごめんなさい……。

「これで俺たちの言いたいことがわかっただろう?」

「今日は私たち三本が出てきたけど、また何か出てきて君に言いたいこと言うかもね。文房具以外の持ち物もね」

「ボクたちの喋ってること、普段はキミに聞こえないけど、いろいろ言ってるんだよ。そのこと忘れないで」

 ……うん。

「じゃ、俺たちは文房具らしく筆箱に戻るよ。俺、先輩と後輩と一緒に使ってくれるの待ってるからな」

「一週間後のテスト頑張れ。私、バリバリ働くから」

「ボクたち文房具はキミのこと、大好きだってことも覚えといて」


ゴソゴソ


 三本とも筆箱に戻っちゃった……。



ぱちっ


 ん~、あ、いつの間にか寝てたみたいです。変な夢を見ました。文房具が喋って、言いたいこと言って去っていく夢でした。

 これだけはっきりと覚えている夢というのも珍しいと思います。あの三本の声、話し方、自分の発言まで全部思い出せます。

 ただの夢ではないのでしょう。

 とりあえず、テストも近いし、勉強しますか。

 おっと、その前にシャーペンを修復せねば。シャーペンの欠片はちゃんと保存してあるのです!


 ふっふっふ。文房具たち、もうすぐこれでもかっていうくらい使ってやるから覚悟しとくように。あ、夢で言われたようになるべく優しく使うつもりだから、安心していいと思うよ!

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